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座敷わらしはあなたかもしれない・・・(アナザー/カタクリ)

 ども、警視庁捜査一課の八番目の男、たいちろ~です(ウソです)。
 いよいよ、ワールドカップが始まりました。サッカーは11人で行うとルールで決まっています。きっとサッカーを自分のチームだけ12人でやればきっと勝ちやすいでしょう。では、明らかに1名多いのがわかっているのに誰が多いのかわからないとしたら・・・
 というころで、今回ご紹介するのはそんなクラスの厄災のお話”アナザー”であります。


Katakuri4
写真は”植物園へようこそ!”のHPより。カタクリです。


【本】アナザー(綾辻 行人 角川書店)
 夜見山北中学に転校してきた榊原恒一は、入院していた病院で見かけた美少女、見崎鳴(ミサキ・メイ)に学校で声をかける。それは3年3組の厄災の引き金でもあった。
 いるのにいないことになっているメイ、なぜか次々に死んでいくクラスメイトとその親族・・・
【花】カタクリ(片栗)
 ユリ科カタクリ属に属する多年草。片栗粉の原料として有名ですが、現在の片栗粉はほとんどジャガイモから作っているそうです。つまり名前だけ残って、実態がなくなってしまっている状態のようです。
 花言葉は”寂しさに耐える”。
 春に紫色の繊細な花が咲く草で、ぜひ実物を見たいと思っている花のひとつです。

 ”いないはずの人がいるのに、それがみんなには誰だかわからない”というシチュエーションでメジャーなのが”座敷わらし(*1)”。子供たちが遊んでいるのを数えると、本来の人数より一人多いのに、それがだれだかわからない。でも、座敷わらしは”いる家は栄え、去った家は衰退する(*2)”といういわば福の神の眷属でもあります。

 怪談モノの小品なんかも多いですが、このバリエーションはSFジャンルでもあって、有名なところでは、”エイトマン(*3)”とか”11人いる!(*4)”とか。イントロの「警視庁捜査一課の八番目の男」というのはエイトマンのネーミングの元になっています。
 ”11人いる!”では、宇宙大学の入試最終テストで、10人で行われるはずの試験会場になぜか11人目がいるという設定。正体不明の11人目を含んで合格に向けてチームワークを反目を繰り返して行くストーリーは秀逸です。

 これらの作品の多くは座敷わらし自体は”自分が座敷わらしである”ことを自覚していますが、今回の”アナザー”では自分自身も含めて誰が座敷わらしか判らない、つまりひょっとしたら自分が厄災の元凶たる”座敷わらしかもしれない”という恐怖。犯人探しをすることが自分に跳ね返ってくるかもしれない不安。ミステリーとしても、ホラーとしてもなかなか面白い設定です。

 もうひとつ面白かったのが、人が死んでいくのが理屈ではなく”現象”であること

  これは誰かの作為じゃなくて、そういう「現象」なんだ
  だから、これはいわゆる「呪い」とは違うものなんだって・・・。

 そこのはいわゆるミステリーで言う”フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット”も何にもなく、経験則としてただ回避する方法だけ。呪いであれば動機が明確である分、対処の方法とか恨まれる動機に納得するってのもありますが、”現象”だからといって理不尽にどんどん人が死んでいくとなると”なんでやねん!”と言うしかありません。これって、別の意味でかなり怖いです。

 ネタバレになりますが、その回避方法っていうのが”だれか一人をいなかったことにして人数を合わせる”というもの。それが”みんなを守るために寂しさに耐える”ってことであっても、通常だったら耐えられないでしょうね。
 悪意によるいじめとしての”シカト”ってのもつらいでしょうが、恐怖と畏怖の対象として”いないことにされる”ってのもかなりきついと思います。現実にこんな”クラスぐるみのシカト”があったらPTAがだまっちゃいないでしょうが、実際に人死にがで出したら手のひら返すんだろうな~~。それを考えるのも怖いけど。

 ”アナザー”は2010年版の「このミステリーがすごい!」で国内第3位、第10回本格ミステリ大賞の最終候補作にもなったそうですが、”フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット”がないことからも、むしろホラーとして読んだほうがいいんじゃなんかなと思います。どっちにしても面白かったけど。

PS.どうも綾辻 行人は椎名高志(*6)のファンらしいです。

《脚注》
(*1)座敷わらし(座敷童子)
 岩手県を中心に伝えられる民間伝承。読んでませんが、柳田國男の”遠野物語”なんかにも載っているようです。
(*2)いる家は栄え、去った家は衰退する
 座敷わらしのいる宿として有名だった岩手県の緑風荘(りょくふうそう)ですが、座敷わらしを祀る亀麿神社以外が全焼したということで、けっこうなニュースになりました(2009年10月4日。ただし、従業員・宿泊客は全員無事)
 座敷わらしがいなくなってたんでしょうか?
(*3)エイトマン
 原作はSF作家の平井和正、作画は桑田次郎によるマンガ及び、TVアニメ。
 アニメ版の放映が1964年。主題歌に流れるトランペットを吹いていたのがラッツ&スターのトランペッター桑名信義の父親さんというぐらい古い作品。
 ”8番目の刑事”というのはアニメのナレーションで語られているのでこっちの印象がありますが、最近のマンガ版に登場する機体No”8th”のほうがメジャーかも。
(*4)11人いる!
 萩尾望都のSFマンガ。
 試験の内容は”漂流中の宇宙船で、10人のチーム全員が53日間生き延びる”というもの。
  宇宙はつねに変化にみちている。概念が通用しない場合もある。
  事態は急変する。的確です早い判断力が必要だ。
  常に異端の11人目が存在するようなものだ。
 至言です。
 1976年、小学館漫画賞少年少女部門を受賞した名作です。
(*5)フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット
 フーダニット(Whodunit):誰が犯人なのか
 ハウダニット (Howdunit):どのように犯罪を成し遂げたのか
 ホワイダニット(Whydunit):なぜ犯行に至ったのか
(*6)椎名高志
 マンガ家。最近では”絶対可憐チルドレン”がTVアニメ化されていますが、今回の話のネタつながりは別の作品です。

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