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狂気の果ての正気やら、正気の果ての狂気やら(脱走と追跡のサンバ/ブドウ)

 ども、自分は正気だと思い込んでるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、東 浩紀の”クォンタム・ファミリーズ(*1)”を読みました。
 一言でいうと並行世界をあっちこっちに引きずり回されるといったお話ですが、そういえば、あっちこっちの世界を逃げ回るといった話を昔に読んだよな~ということで、今回ご紹介するのSFの古典的名作、筒井康隆の”脱走と追跡のサンバ”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。福島で見かけた夏の”ブドウ”です。


【本】脱走と追跡のサンバ(筒井 康隆 新潮社)
 どんなことがあっても脱走してやる。このいやらしい世界から逃げ出してやる。こんなところに閉じこめられてたまるものか。汚物の墓場の下水管を通り抜けもとの世界からこっちの世界へ入り込んでしまったおれは…。情報による呪縛、時間による束縛、空間による圧迫にあえぐ現代をパロディ化し、境界のゆらぎはじめた現実と虚構の「世界」を疾走する傑作長編。(Amazon.comより)
【花】ブドウ(葡萄)
 ブドウ酒(ワイン)や干しぶどう、生食に利用されるブドウですが、ブドウ酒の起源は古く紀元前6000年頃とのこと(*2)。
 花言葉は”酔いと狂気”。たぶんブドウ酒からの連想。


 ”クォンタム・ファミリーズ”はその根本に”青い鳥症候群(*3)”がありそうですが、”脱走と追跡のサンバ”はそんなのはな~なんもなし。
 情報と時間と空間がぐじょぐじょにねじれ、渦巻き、混じり、逆流し、奔流し、流離し、混乱し、錯乱し(以下延々)・・・ といったお話。
 あらすじといえば、いつのまにか以前いた世界から元の世界に脱走する”おれ”、それを追跡するみどり色の背広の”追跡者”。逃げるおれに尾行する男が追いつ追われつ、立場を入れ替えつつ、先回りしつつ、多重化しつつ、重ねあわせつつ(以下延々2)・・・ それにこの世界に引きずり込んだ”正子”が恋人になり、人質になり、殺される人になり、合体する人になり、精神世界の主になり(以下延々3)・・・
 一昨年以来、200ケ以上のブログネタを書きました、これほどあらすじの書きにくい話はなかったです。
 でも、面白いんですなあ、これが

 なぜ、こんな状況になったのかは一切説明なし。脱走する目的もなければ、手段の正当性もな~んもなし。前出の”クォンタム・ファミリーズ”が並行世界の移動を一所懸命理屈付けして、その目的を明らかにしようとしてかえって中途半端の印象になったのに対し、こちらはそんな賢しさをすっとばして、あるのは正気と狂気の狭間だけ
 でもこっちのほうがSFマインドを感じてしまうのはなぜでしょう???

 酒に酔った”狂気”なんていう生易しいものではなく、脅迫神経症的、パラノイア的、自我崩壊的、神経脱毛症的(以下延々4)・・・
 まあ、ようはワケのわからない”狂気”であります。

 とにかく、読んでみないと判らないという類の本。角川文庫では”リバイバルコレクション エンタテインメントベスト”で出版されていましたが、ジャンル的には不条理SF    (*4)。筒井康隆が狂気の天才であることを改めて認識させられた本であります。

《脚注》
(*1)クォンタム・ファミリーズ(東 浩紀 新潮社)
 量子コンピュータが実用化された高度情報化社会。それは、コンピューターからの情報が信用できない、並行世界と行き来することのできる社会でもあった。
 壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。
(*2)紀元前6000年頃とのこと
 Wikipediaによると、ヨーロッパでは中石器時代とのこと。ということは、人類ってのはその頃から酔っ払っていたんでしょうなぁ。
(*3)青い鳥症候群
 今の自分は本当の自分じゃないので、本当の自分や幸せを求めてあちこちをさまよう人のこと。SFになるとifモノになりますが、あんましハッピーエンドってのがないです。
(*4)不条理SF
 昔は、筒井康隆の一連の作品や、赤塚不二夫のギャグマンガ、吾妻ひでおの”不条理日記(*5)”なんてのがありましたが、最近はあんまりこの手のものは見ないですねぇ。私が知らないだけかもしれませんが。ある意味、1970年代という時代の空気を反映したジャンルだったのかもしれません。
 この分野につっこむと、日常生活も破綻する危険がありそうです。
(*5)不条理日記(吾妻ひでお 早川文庫)
 吾妻ひでおによるSFや漫画をモトネタにしたギャグマンガ。相当なSFマニアでもモトネタが判らないと言うディープな作品でもあります。1979年に星雲賞コミック部門を受賞。”アズマニア2”に収録されているので、現在も入手可能です。
 吾妻ひでおは自殺未遂やアル中のはてに失踪、その経験を書いた”失踪日記”で再ブレークしました。

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もう見ました、面白いですね

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