« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

2010年6月

大人はさ、ずるいぐらいが丁度いいんだ、リメイクで稼ぐぐらいに(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破/スイカ)

 ども、昭和生まれのアニメファン、たいちろ~です。
 先日、”宇宙戦艦ヤマト 復活編”のネタを書いたところ、よくコメントをくれる
YO~YO~氏(50歳、独身)から
 ”実写版ヤマトだとか・実写版のあしたのジョーだとか、俺たちの子供時代・青春時代の思い出を弄繰り回すのはいいかげんにしてほしい!(中略) 平成のクリエイター達にお願いしたい。昭和のネタに頼らないで、オリジナルを作ってほしい。エヴァンゲリオンだって、よく見りゃ昭和の遺産の継ぎはぎだしね。”
 との書き込みがありました。
 まあ、ヤマトは大外ししてましたが・・・
 ということで今回ご紹介するのは、こりもせずリメイク版の第二弾”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破”であります。

5

写真は植物園のhpより。雌花の下にちいさなスイカの実が膨らみ始めています。


【DVD】ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(監督 庵野秀明、スイカ)
 平成初期を代表する「エヴァンゲリオン」シリーズの劇場版4部作の第2弾(*1)
 サブタイトルの”EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.”の”ADVANCE”は”進む、進歩する、上達する、向上する”といった意味。15年の時を越え、はたして、ヱヴァは進歩しているのか?
【花】スイカ(西瓜)
 ウリ科のつる性一年草。ウリ科の植物としては、キュウリ、カボチャなどがあって、みんな黄色い小さな花が咲くので、同じ仲間って感じがします。
 夏の風物詩のような食べ物ですが、スイカは秋の季語。

 リメイク版とはいえ、ストーリーや設定は半分がTV版のとおりで、半分がオリジナルというビミョ~~なバランス。まあ、独特の世界観を持つ作品なので、観てもらわないと判りにくいですが。

 新登場の”真希波・マリ・イラストリアス”を除いて登場人物はほとんど同じ。もっとも、ほとんどゲストキャラ並みの登場回数なのに、美味しいとこを全部持ってった渚カヲル君が最初っから出てるとか、ナニげに学園エヴァの影響を受けている綾波レイとかそれなりに新機軸も。
 敵キャラの使徒もオリジナルがわかる造詣ながら、CGを上手く使って”わけのわかんらん生物”度合がけっこうUPしていますし、ミサトさんの戦法もほぼ前作どおりながら演出も格段に向上しています。

 ところでこの作品、新しさと前作からの懐かしさがないまぜになっていますが、面白いのは挿入歌の使い方。何でだか昭和の歌謡曲を多用しています。

  アスカとの戦い  :今日の日はさようなら(森山良子 昭和41年)
  綾波の救出    :翼をください(赤い鳥 昭和45年)
  真希波の出撃シーン:365歩のマーチ(水前寺清子 昭和43年)
  居酒屋のBGM  :恋の季節(ピンキーとキラーズ 昭和43年)

 綾波の救出シーンで翼を広げるヱヴァ初号機のバックに流れる”翼をください”なんて、”70年代フォークをこんな使い方があるんだ”って関心した次第。総監督の庵野秀明は1960年生まれ、私とひとつ違いと同じジェネーションなので音楽の原体験が良く似ているのでよけいにそう思うのかもしれません。

 さて今回、美味しいとこ持ってってるのが加持さん(*2)。NERV主席監察官という立場にありながら、赤木博士を口説くは、そのくせミサトさんとデートはしているは、シンジくんをかどわかすわ、缶コーヒー一本で草むしりでこき使うわ・・・

 小高い海辺の畑での加持さんとシンジ君のシーン

  シンジ君:加持さんって、もっと真面目な人だと思ってました
  加持さん:大人はさ、ずるいぐらいがちょうどいい
  シンジ君:これ、確かスイカですよね
  加持さん:ああ、かわいいだろ オレの趣味さ
        何かを作る、何かを育てるってのはイイぞ
        いろんなことが見えるし、わかってくる。
        楽しいいことかな

  シンジ君:つらいこともでしょ

 登場人物が多いわりには大人っぽいキャラが少ないエヴァですが(*3)、不良中年にしてガーデニングをする加持さんて、おぢさんとはこうありたいものです。
 私自身も家庭菜園をやっていますが、人に理由を聞かれたらこう答えましょう!

 ”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破”は、アニメファンとそうでない人にもおすすめ。前作を見ていない人にも楽しめますが、できたら前作も見ておいてソンのないできばえです。
 リメイクというよりパラレルワールドものになりそうな予感。
 最後のシーンでカヲル君(*4)が一面識もないシンジ君に対するモノローグで

  カヲル君:さあ約束の時だ、碇シンジ君
        今度こそ君だけは幸せにみせるよ

 と言ってるし。次回作”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q”で美味しいとこ持ってくのはこいつか???

《脚注》
(*1)平成初期を代表する「エヴァンゲリオン」
 エヴァの初回放送は1995年~1996年。さすがに会社員になってましたので、水曜18時半からの本放送は見てませんが、VHS(!)になってから全部借りました。
(*2)加持さん
 CVは山寺宏一。宇宙戦艦ヤマト 復活篇の”古代進艦長”もこの人だったなぁ。
 どっちかというと、熱血漢の古代艦長より、くだけた加持さんのほうが雰囲気が合ってる気がします。
(*3)大人っぽいキャラが少ないエヴァですが
 碇指令はガンコオヤジだし、冬月先生はおじいちゃんだし、ミサトさんはガキっぽいし、NEVAのスタッフは大人というより青年だし。
 まあ、大人っぽいのは加持さんをいなして見せた赤木博士ぐらいでしょうか。
(*4)カヲル君
 こやつは前作でも、自分だけがすべてを理解して謎めいたセリフをはいて、な~んの説明もなくいなくなっちゃった人です。

会いたかったよ、ヤマトの諸君(宇宙戦艦ヤマト 復活編/大和ミュージアム)

 ども、宇宙戦艦ヤマトの第一世代のおぢさん、たいちろ~です。
 ”宇宙戦艦ヤマト 復活編”のDVDが出ましたので、さっそく観ました。
 いや~、オープニングに流れるあのスキャト”無限に広がる大宇宙”のナレーション、何もかも皆懐かしい・・・
 アクエリアス(*1)からの発進シークエンスなんか、思わずうるうるしてしまいました。 ということで、今回ご紹介するのはオールドファン(*2)から見た”宇宙戦艦ヤマト 復活編”であります。


080524

写真はたいちろ~さんの撮影。大和ミュージアムの”1/10大和モデル”です。
1/10スケールとは、実物はかなりの迫力でした。


【DVD】宇宙戦艦ヤマト 復活編(西崎 義展 バンダイビジュアル)
 西暦2220年、地球は移動性ブラックホールに飲み込まれようとしていた。この危機の対し人類はアマールへの移民を決行するが、謎の大艦隊の攻撃に会う。すして、第三次移民船団の護衛艦隊司令として古代進艦長の下”宇宙戦艦ヤマト”は発進した・・・
 中年になった古代君、真田さんをメインに、おぢさん世代もがんばるヤマトではあります。
【旅行】大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)
 広島県呉市にある旧日本海軍の戦艦”大和”(本物の方)をテーマとした科学館。メインは1/10大和のモデル。私が行った時は”宇宙戦艦ヤマト”のコーナーもありました。軍事オタクならずとも楽しめる所です
 すぐ近所にある”潜水艦あきしお(実物)”を展示した”てつのくじら館(海上自衛隊呉資料館)”もお勧め。(ブログでの紹介はこちらから)

 さて、内容については、はっきり言って”ほかに作りようがなかったのか!
 始まってすぐの”原案 石原慎太郎”の時点で、おもいっっきりどん引きしましたね。今さら昭和の小説家をひっぱりだしてどうする!(*3) 都知事のネームバリューで客を引こうとしているなら、ファンをなめています。
 演出その他も、好意的に言っても過去のSF作品へのオマージュ、辛口に言えばパクリのオンパレード。まあ、ブルーノアまでは許すとしても(*4)いったい何を考えて作ってるんだ?

〔敵役がバルカン人〕
 敵のバルスマン総司令官、メッツラー総督ってのが、おかっぱ頭にとんがり耳とまんまスタートレックのバルカン人そのまんま。
 そういえば、この人たちが登場する会議の場面もスターウォーズのそれっっぽいし。

〔ライバル役がバッフ・クラン〕
 古代艦長と対峙するエトス星艦隊司令長官”ゴルイ提督”。声の人がデスラー総統を担当した”伊武雅刀”であることは、まあファンサービスとして良しとしましょう。
 でも、なんで見た目が伝説巨人イデオンに登場するバッフ・クランそのまんななんだ?(*5) そりゃ、キャラクターデザイン、総作画監督 が湖川友謙と同じ人だというのはわかりますが、あっこまで似せなくてもええんでないかい?

〔パネルの文字がエヴァ〕
 パネルに大写ししているメッセージが英語のあとにわざとらしく日本語が。これってエヴァンゲリオンのパネル表示そっくりです。
 名前を見る限り、あいも変わらず日本人しか乗っていないんだからどちらかに統一すればいいものを・・・

〔オペレーターの指の動きが攻殻機動隊〕
 まあ、コンピュータールームがスタートレックにでてきたのとそっくりまでは許容ししょう。でもオペレーターの動きの演出が攻殻機動隊(*6)ってのはなんだかな~

〔トランジッション波動砲がアマテラス〕
 今回ヤマトに装備された6連装の”トランジッション波動砲”。まあ、拳銃のリボルバーからの流用なんでしょうが、これってスターシップ・オペレーターズ(*7)に出てきた宇宙戦艦”アマテラス”にも同じようなアイデアが・・・

〔クラシックのBGMが銀河英雄伝説〕
 まあ、クラシックをBGMに使うのはありですが、選択のテイストがなんだか”銀河英雄伝説(*8)”っぽいな~~
 戦闘機同士のドックファイトがベートーヴェンのピアノソナタ”月光”の第三楽章だったり、なんとなくシンクロナイズドスイミングを髣髴とさせる潜宙艦航法で攻撃される場面では同じく ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番”皇帝”の第一楽章だったり
 こういった、本来合わなさそうな音楽を戦闘シーンに使うってのはけっこう面白い演出ではあるんですが、ここまで、同じような使い方をされるってのはどうでしょうね。


 そもそも最初のヤマトが当時の若者の心をつかんだのは、”子供向け”と思われていたアニメに若者が見るにも耐えうるストーリー、クオリティを持ちこむという先進性にあったはず。それが、今回のような過去の名作の幻影にとらわれているようでは偉大なる”ヤマトの”名が泣きます。
 それに、西崎監督って著作権意識があるんでしょうかねぇ・・・(*9)


 艦長という立場がありながら若いモンを押しのけて自分で波動砲をぶっぱなす古代艦長とか、相変わらずクールな真田さんとか、アナライザーと飲んだくれる佐渡先生とか、オールドファンには美味しいシーンもあるっちゃあるんですが、若い世代の人から見てどうなんでしょうか。
 最後のテロップが”第一部 完”になってますが、まだ続けるんですか、これ。
 おぢさん世代にとっては古女房みたいなものなんでお付き合いすることにはなるんしょうが、平成のオタク世代にとっちゃ、いい皮の面って気がしないでもないんですがねぇ。

《脚注》
(*1)アクエリアス
 ”宇宙戦艦ヤマト 完結編”に登場する水惑星。今回の話はその続きという世界観です。ていうか、完結させたんと違うんかい!
 まあ、ご都合主義的な復活はヤマトのお家芸ではあります。
(*2)オールドファン
 なんせ、初回放送のTVをリアルタイムで観た世代だもんな~。
 劇場版では、始発電車に乗っていって映画館前に並びました。当時は社会現象扱いされましたが・・・
(*3)昭和の小説家をひっっぱりだしてどうする!
 今でこそ都知事の人ですが、元々は”太陽の季節”で芥川賞を受賞した作家です。受賞は1955年ですから、もう半世紀以上昔のこと。
 なんで、今さらこんな人を・・・
(*4)ブルーノアまでは許すとしても
 第1次移民船団護衛艦隊旗艦の名前ですが、オリジナルはヤマトと同じく西崎義展製作の”宇宙空母ブルーノア”から。まあ、製作が同じだから文句はいいませんが、今さら忘れ去られた作品を引っ張り出さなくても・・・
(*5)伝説巨人イデオンに登場するバッフ・クラン
 ”伝説巨人イデオン”は機動戦士ガンダムに続き日本サンライズと富野喜幸が作成したアニメ。バッフ・クランは敵の種族の名前。おかっぱ頭に無骨な顔立ちはそのまんまです。
(*6)攻殻機動隊
 士郎正宗原作、監督押井守。ジャパニメーションを代表するSFアニメの傑作。
(*7)スターシップ・オペレーターズ
 水野良作のSFライトノベルを原作に、”灼眼のシャナ”も担当した渡部高志が監督でアニメ化。
(*8)銀河英雄伝説
 田中芳樹による長編SF小説を、”超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか”で監督を務めた石黒昇がアニメ化。
 映画版第1作中におけるラヴェルの”ボレロ”をBGMに使ったドックファイトはアニメ史に残る名シーンです。
(*9)西崎監督って著作権意識があるんでしょうかね・・・
 なんだか、長いこと裁判でごちゃごちゃやってました。今回の作製で”松本零士”の名前が一つも出てこないのは、そのへんの”大人の事情”ってやつみたいです。
 精神的支柱である”松本零士”が参加していれば、こんな作品にはならなかったような気がするのは私だけでしょうか?

狂気の果ての正気やら、正気の果ての狂気やら(脱走と追跡のサンバ/ブドウ)

 ども、自分は正気だと思い込んでるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、東 浩紀の”クォンタム・ファミリーズ(*1)”を読みました。
 一言でいうと並行世界をあっちこっちに引きずり回されるといったお話ですが、そういえば、あっちこっちの世界を逃げ回るといった話を昔に読んだよな~ということで、今回ご紹介するのSFの古典的名作、筒井康隆の”脱走と追跡のサンバ”であります。


0130
写真はたいちろ~さんの撮影。福島で見かけた夏の”ブドウ”です。


【本】脱走と追跡のサンバ(筒井 康隆 新潮社)
 どんなことがあっても脱走してやる。このいやらしい世界から逃げ出してやる。こんなところに閉じこめられてたまるものか。汚物の墓場の下水管を通り抜けもとの世界からこっちの世界へ入り込んでしまったおれは…。情報による呪縛、時間による束縛、空間による圧迫にあえぐ現代をパロディ化し、境界のゆらぎはじめた現実と虚構の「世界」を疾走する傑作長編。(Amazon.comより)
【花】ブドウ(葡萄)
 ブドウ酒(ワイン)や干しぶどう、生食に利用されるブドウですが、ブドウ酒の起源は古く紀元前6000年頃とのこと(*2)。
 花言葉は”酔いと狂気”。たぶんブドウ酒からの連想。


 ”クォンタム・ファミリーズ”はその根本に”青い鳥症候群(*3)”がありそうですが、”脱走と追跡のサンバ”はそんなのはな~なんもなし。
 情報と時間と空間がぐじょぐじょにねじれ、渦巻き、混じり、逆流し、奔流し、流離し、混乱し、錯乱し(以下延々)・・・ といったお話。
 あらすじといえば、いつのまにか以前いた世界から元の世界に脱走する”おれ”、それを追跡するみどり色の背広の”追跡者”。逃げるおれに尾行する男が追いつ追われつ、立場を入れ替えつつ、先回りしつつ、多重化しつつ、重ねあわせつつ(以下延々2)・・・ それにこの世界に引きずり込んだ”正子”が恋人になり、人質になり、殺される人になり、合体する人になり、精神世界の主になり(以下延々3)・・・
 一昨年以来、200ケ以上のブログネタを書きました、これほどあらすじの書きにくい話はなかったです。
 でも、面白いんですなあ、これが

 なぜ、こんな状況になったのかは一切説明なし。脱走する目的もなければ、手段の正当性もな~んもなし。前出の”クォンタム・ファミリーズ”が並行世界の移動を一所懸命理屈付けして、その目的を明らかにしようとしてかえって中途半端の印象になったのに対し、こちらはそんな賢しさをすっとばして、あるのは正気と狂気の狭間だけ
 でもこっちのほうがSFマインドを感じてしまうのはなぜでしょう???

 酒に酔った”狂気”なんていう生易しいものではなく、脅迫神経症的、パラノイア的、自我崩壊的、神経脱毛症的(以下延々4)・・・
 まあ、ようはワケのわからない”狂気”であります。

 とにかく、読んでみないと判らないという類の本。角川文庫では”リバイバルコレクション エンタテインメントベスト”で出版されていましたが、ジャンル的には不条理SF    (*4)。筒井康隆が狂気の天才であることを改めて認識させられた本であります。

《脚注》
(*1)クォンタム・ファミリーズ(東 浩紀 新潮社)
 量子コンピュータが実用化された高度情報化社会。それは、コンピューターからの情報が信用できない、並行世界と行き来することのできる社会でもあった。
 壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。
(*2)紀元前6000年頃とのこと
 Wikipediaによると、ヨーロッパでは中石器時代とのこと。ということは、人類ってのはその頃から酔っ払っていたんでしょうなぁ。
(*3)青い鳥症候群
 今の自分は本当の自分じゃないので、本当の自分や幸せを求めてあちこちをさまよう人のこと。SFになるとifモノになりますが、あんましハッピーエンドってのがないです。
(*4)不条理SF
 昔は、筒井康隆の一連の作品や、赤塚不二夫のギャグマンガ、吾妻ひでおの”不条理日記(*5)”なんてのがありましたが、最近はあんまりこの手のものは見ないですねぇ。私が知らないだけかもしれませんが。ある意味、1970年代という時代の空気を反映したジャンルだったのかもしれません。
 この分野につっこむと、日常生活も破綻する危険がありそうです。
(*5)不条理日記(吾妻ひでお 早川文庫)
 吾妻ひでおによるSFや漫画をモトネタにしたギャグマンガ。相当なSFマニアでもモトネタが判らないと言うディープな作品でもあります。1979年に星雲賞コミック部門を受賞。”アズマニア2”に収録されているので、現在も入手可能です。
 吾妻ひでおは自殺未遂やアル中のはてに失踪、その経験を書いた”失踪日記”で再ブレークしました。

座敷わらしはあなたかもしれない・・・(アナザー/カタクリ)

 ども、警視庁捜査一課の八番目の男、たいちろ~です(ウソです)。
 いよいよ、ワールドカップが始まりました。サッカーは11人で行うとルールで決まっています。きっとサッカーを自分のチームだけ12人でやればきっと勝ちやすいでしょう。では、明らかに1名多いのがわかっているのに誰が多いのかわからないとしたら・・・
 というころで、今回ご紹介するのはそんなクラスの厄災のお話”アナザー”であります。


Katakuri4
写真は”植物園へようこそ!”のHPより。カタクリです。


【本】アナザー(綾辻 行人 角川書店)
 夜見山北中学に転校してきた榊原恒一は、入院していた病院で見かけた美少女、見崎鳴(ミサキ・メイ)に学校で声をかける。それは3年3組の厄災の引き金でもあった。
 いるのにいないことになっているメイ、なぜか次々に死んでいくクラスメイトとその親族・・・
【花】カタクリ(片栗)
 ユリ科カタクリ属に属する多年草。片栗粉の原料として有名ですが、現在の片栗粉はほとんどジャガイモから作っているそうです。つまり名前だけ残って、実態がなくなってしまっている状態のようです。
 花言葉は”寂しさに耐える”。
 春に紫色の繊細な花が咲く草で、ぜひ実物を見たいと思っている花のひとつです。

 ”いないはずの人がいるのに、それがみんなには誰だかわからない”というシチュエーションでメジャーなのが”座敷わらし(*1)”。子供たちが遊んでいるのを数えると、本来の人数より一人多いのに、それがだれだかわからない。でも、座敷わらしは”いる家は栄え、去った家は衰退する(*2)”といういわば福の神の眷属でもあります。

 怪談モノの小品なんかも多いですが、このバリエーションはSFジャンルでもあって、有名なところでは、”エイトマン(*3)”とか”11人いる!(*4)”とか。イントロの「警視庁捜査一課の八番目の男」というのはエイトマンのネーミングの元になっています。
 ”11人いる!”では、宇宙大学の入試最終テストで、10人で行われるはずの試験会場になぜか11人目がいるという設定。正体不明の11人目を含んで合格に向けてチームワークを反目を繰り返して行くストーリーは秀逸です。

 これらの作品の多くは座敷わらし自体は”自分が座敷わらしである”ことを自覚していますが、今回の”アナザー”では自分自身も含めて誰が座敷わらしか判らない、つまりひょっとしたら自分が厄災の元凶たる”座敷わらしかもしれない”という恐怖。犯人探しをすることが自分に跳ね返ってくるかもしれない不安。ミステリーとしても、ホラーとしてもなかなか面白い設定です。

 もうひとつ面白かったのが、人が死んでいくのが理屈ではなく”現象”であること

  これは誰かの作為じゃなくて、そういう「現象」なんだ
  だから、これはいわゆる「呪い」とは違うものなんだって・・・。

 そこのはいわゆるミステリーで言う”フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット”も何にもなく、経験則としてただ回避する方法だけ。呪いであれば動機が明確である分、対処の方法とか恨まれる動機に納得するってのもありますが、”現象”だからといって理不尽にどんどん人が死んでいくとなると”なんでやねん!”と言うしかありません。これって、別の意味でかなり怖いです。

 ネタバレになりますが、その回避方法っていうのが”だれか一人をいなかったことにして人数を合わせる”というもの。それが”みんなを守るために寂しさに耐える”ってことであっても、通常だったら耐えられないでしょうね。
 悪意によるいじめとしての”シカト”ってのもつらいでしょうが、恐怖と畏怖の対象として”いないことにされる”ってのもかなりきついと思います。現実にこんな”クラスぐるみのシカト”があったらPTAがだまっちゃいないでしょうが、実際に人死にがで出したら手のひら返すんだろうな~~。それを考えるのも怖いけど。

 ”アナザー”は2010年版の「このミステリーがすごい!」で国内第3位、第10回本格ミステリ大賞の最終候補作にもなったそうですが、”フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット”がないことからも、むしろホラーとして読んだほうがいいんじゃなんかなと思います。どっちにしても面白かったけど。

PS.どうも綾辻 行人は椎名高志(*6)のファンらしいです。

《脚注》
(*1)座敷わらし(座敷童子)
 岩手県を中心に伝えられる民間伝承。読んでませんが、柳田國男の”遠野物語”なんかにも載っているようです。
(*2)いる家は栄え、去った家は衰退する
 座敷わらしのいる宿として有名だった岩手県の緑風荘(りょくふうそう)ですが、座敷わらしを祀る亀麿神社以外が全焼したということで、けっこうなニュースになりました(2009年10月4日。ただし、従業員・宿泊客は全員無事)
 座敷わらしがいなくなってたんでしょうか?
(*3)エイトマン
 原作はSF作家の平井和正、作画は桑田次郎によるマンガ及び、TVアニメ。
 アニメ版の放映が1964年。主題歌に流れるトランペットを吹いていたのがラッツ&スターのトランペッター桑名信義の父親さんというぐらい古い作品。
 ”8番目の刑事”というのはアニメのナレーションで語られているのでこっちの印象がありますが、最近のマンガ版に登場する機体No”8th”のほうがメジャーかも。
(*4)11人いる!
 萩尾望都のSFマンガ。
 試験の内容は”漂流中の宇宙船で、10人のチーム全員が53日間生き延びる”というもの。
  宇宙はつねに変化にみちている。概念が通用しない場合もある。
  事態は急変する。的確です早い判断力が必要だ。
  常に異端の11人目が存在するようなものだ。
 至言です。
 1976年、小学館漫画賞少年少女部門を受賞した名作です。
(*5)フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット
 フーダニット(Whodunit):誰が犯人なのか
 ハウダニット (Howdunit):どのように犯罪を成し遂げたのか
 ホワイダニット(Whydunit):なぜ犯行に至ったのか
(*6)椎名高志
 マンガ家。最近では”絶対可憐チルドレン”がTVアニメ化されていますが、今回の話のネタつながりは別の作品です。

そんなに基地が欲しいというのなら、東京に作ればいいじゃないか(東京に原発を!/ニガヨモギ)

 ども、ついつい電気をつけっぱなしで寝てしまうおぢさん、たいちろ~です。
 なんだか、すったもんだの上、菅直人が新首相になりました(*1)。
 鳩山前首相の辞任は、普天間基地問題の右往左往が直接のトリガーみたいですが、結局”基地は必要だ”という前提に立ってしまうと”じゃあどこに持ってくんだ?”という問題は必ず出てきます。街のゴミ処理場から基地まで、必要なのは判るけど自分ん家の近くには持ってきて欲しくない施設ってのは確かにあります。
 ”そ~言えば、昔に同じようなテーマの本があったな~”ということで、今回ご紹介するのは広瀬隆の ”東京に原発を!”であります。


Nigayomogi2

写真は”植物園へようこそ!”のHPより。ニガヨモギです。


【本】東京に原発を(広瀬 隆 集英社文庫)
 チェルノブイリ、スリーマイル島の原子力発電所事故を始め、核燃料リサイクルに秘められた危険性などを告発したノンフィクション。
 集英社文庫版は初版のJICC版(1981年)を、チェルノブイリ原発事故を受け大幅に加筆修正。
【花】ニガヨモギ
 キク科ヨモギ属の多年草。アブサンやベルモットなどのお酒の香り付けに使われるハーブの一種。調べてみると”英名(absinthe)はエデンの園から追放された蛇の這った後に生えたという伝説に由来する”とか”北欧のバイキングの間では死の象徴”とか、あんまりいいイメージはないみたい。その割に花言葉は”冗談、からかい、平和”など。

 ”便利な暮らしを支えるには電気が必要だ”という意見に異議を唱える人は、まあそんなにいないでしょう(*2)。良くも悪くも現代社会ってのは電気に支えられています。ブログだって電気がなければありえないシロモノです。で、電気が供給されているってことは、その電気を作ったり送ったりする人が当然のことながら存在します。
 資源エネルギー庁の統計によると2009年度の総発電量、9,254億KWhの内、火力が61%、原子力が30%、水力が8%、地熱、風力、太陽光などがチョロ。なので、原子力発電所を閉鎖するという議論は、安価でクリーンな代替エネルギー源を確保しない限り単純にいうと”電気の消費量を1/3にする生活を許容する”ということになります。また、もしそんなものが出来ても、安定供給という観点から適当に分散をさせておかないと”アンチ・シズマドライブ(*3)”に対応できないリスクもあります。

 では、ここまで依存しちゃっている原子力発電が”安全”かというのが本書の本題。結論から言うと、でんでん安全じゃない。よく話題になる原子炉もそうですが、発電しおわった廃棄物(つまり”死の灰”)や、寿命の来た発電施設そのもののお片づけなど問題は山積み。そういえば、この前テレビでウラン採掘時の残土を、ほかの土とまぜてレンガにして売るってのもありましたね。
 問題は、このような問題が根本的に片付かないままにどんどん原子力発電が進んでいることと、それを”安全だ”と言い切ってしまうエネルギー行政の問題。安全かどうかも”判らない”というのもけっこうあるみたいです。

  そんなに安全で便利だというのなら東京に作ればいいじゃないか。
  新宿西口に建ててみたらどうだ!

 これは、集英社文庫版の解説文より。ケンカの売り文句としてはけっこう良いデキだと思います。実際に原子力発電所の施設自体の面積だけでいうと東京都内だけでも30ケ所はあるとのこと。送電によるロスや廃熱のエコ利用を考えると、地産地消というか東京に作ったほうが合理的ではあります。
 つまり、”どこに建設するか”は政治的な問題であります。この前の基地問題でも”辺野古と書いたら政府方針の署名しない”と言っていた某党首がいましたが、”だったら、どこって書いたら署名する?”ってなんで誰も聞かないんだろう? 
 沖縄の人に

  そんなに基地が欲しいというのなら、東京に作ればいいじゃないか

 と問われたら、みんななんて答えるか聞いてみたい気がします。まあ、空港であればいいんなら、赤字の地方空港なんて山のようにあるんだし(*4)、税金使うなら基地だどうがなんだろうが採算がとれるようにしろって選択肢もありそうな気がするんですが・・・

 どうすればいいかと聞かれても、さして良いアイデアがあるわけじゃないんですが、こういったネガティブな施設の負担を応分に受け持つっていう観点でいうと、それぞれの施設のリスクをポイント化して(*5)、各県に割り振るってのはありでしょうか? 補助金の額に比例させるとか、選挙権の一票の格差の逆数に比例させるとか。

 ところで、上記の”ニガヨモギ”ですが、この名前を由来とする街があります。その名は”チェルノブイリ(*6)”。冗談のようですが、暗示的な話ではあります。

 本書は、1986年の発刊とほぼ四半世紀前に書かれた本。現在どうなっているかとっても気になります。”温故知新”という意味も含め、今読んでみるのも良いかと。他の問題も含めて2010年度版も見てみたいのであります。

《脚注》
(*1)菅直人が新首相になりました
 2010年6月4日に第94代内閣総理大臣に指名されました。
 てか、第8代民主党代表のほうが驚き。現民主党(1998~2010年)の12年間で8人も変わってるんだ(内3回が菅直人)。首相が短命なので気がつきませんでしたが、実はこっちもみんな短期政権。
(*2) ”便利な暮らしを支えるには電気が必要だ”という意見に~
 まあ、”安全保障のために基地は必要だ”という意見には異議を唱える人はいるでしょうが、”平和と正義のための軍事力”みたいな議論をやってる限りなくせはしないんでしょうなぁ・・・
(*3)アンチ・シズマドライブ
  完全リサイクル可能で完全無公害なエネルギー源”シズマドライブ”。シズマドライブのみの働きを止める”アンチ・シズマドライブ”により地球規模のエネルギー静止現象を引き起こされる。この事態の中、唯一可動できるのが原子力で動く”ジャイアント・ロボ”のみであった・・・
 ”ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日”(横山光輝 バンダイビジュアル)より。
(*4)赤字の地方空港なんて山のようにあるんだし
 どこがどうとはいいませんが、”赤字 空港”で検索するといっぱい出てきます。
(*5)それぞれの施設のリスクをポイント化して
 これはこれで難しいんですけどね。オシャレな建物の代表みたいなテレビ局だってテロや軍事目標たりうるので、いざ有事になれば市街戦に巻き込まれる可能性は否定できません。
(*6)チェルノブイリ
 正確にはオウシュウヨモギ(ロシア語で「チェルノブイリニク」)だそうですが、ニガヨモギと言われるのが多いので、こちらから。この話を知ったのは清水玲子の”月の子(MOON CHILD)”(白泉社文庫)でした。

« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ