« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »

2010年5月

充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。黒か白かは知らんけど(クォンタム・ファミリーズ/サワロ)

 ども、並行宇宙を行き来するおぢさん、たいちろ~です。(ウソです)
 一応、コンピューターを作っている会社なんぞで働いてはいるんですが、コンピュータ屋にとってひとつの目標が”とにかく早いコンピュータを作ること”ってのがあります。2009年度の事業仕分けで話題になった次世代スーパーコンピューターなんてのがまさにそれ。生命情報工学研究センターの”Magi Cluster(*1)”、もうすぐ完成予定の理化学研究所のプロジェクトなどなど。
 この次のスーパーコンピュータとして考えられているのが”量子コンピューター”。
 ということで、今回ご紹介するのはこれを使ったSF(かな?)小説”クォンタム・ファミリーズ”であります。


Photo
写真は”竹居のデジカメ写真”のHPより。巨大なサボテン”サワロ”です。


【本】クォンタム・ファミリーズ(東 浩紀 新潮社)
 量子コンピュータが実用化された高度情報化社会。それは、コンピューターからの情報が信用できない、並行世界(*2)と行き来することのできる社会でもあった。
 壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。
【花】サワロ
 小説内に登場する”サワロ”とはサワロサボテンのこと。ラテン語で「巨大なローソク」という意味で、最高20メートル、重量12トン、寿命200年にもなるそうです。


 ネタバレになりますが、この物語は葦船友梨花(あしふねゆりか)が並行世界の間で
夫の往人(ゆきと)、子供たちである理樹(りき)、風子(ふうこ)、汐子(しおこ)たちの意識(魂?)を移動させることで、家族の絆というか、幸せ探しをするような物語です。
 平行世界なんで、子供たちは生まれてたり、生まれてなかったり、生き残ったり死んだりととってもややこしい。じゃあ、この技術でみんなが幸せになれたかというとそれはまた別。主人公の往人はテロに巻き込まれて妻子を亡くしたり、自殺したり、自首したりとどの世界でもさんざんな目にあっています。
 平行世界モノの根本には”あの時こうしておけば、もっと良い人生を送れたはずだ”という思いがあるんですが、ベーシックな性格と能力が変わらなければねぇ。よく、”もし、もう一度高校生に戻れたら、もっと勉強するのに”とぬかすヤツがいますが、それが出来るぐらいなら、今も真面目に勉強しているハズです

 このあたりの話を本書では”35歳問題”という言葉で表しています。要約すると

 1.人の人生は過去に成し遂げたこと、現在成し遂げていること、
  未来に成し遂げるであろうことだけでなく、”成し遂げられたかもしれない”
  ことからも出来ている。
 2.生きるとは、成し遂げられるかもしれないこのとの一部を選択し、あとの
  可能性を”成し遂げられたかもしれないこと”に変えていく行為。

 3.35歳で成し遂げられたかもしれない過去が、実際の過去の量を超える
 4.だから人は憂鬱になり、どんなに幸せな人でもこの憂鬱から逃れられない。

 まあ、35歳ってのがビミョ~です(*3)

 現在の人生ってのは”無数の可能性から、自分の意思で選択したことの結果”(いわゆる自己責任原則)。たとえ、偶然の要素が大きかったとしてもです。大学受験なんかでも、どの大学を受験するかを決めるのは結局自分の問題。で、選択を間違えると私のように二浪するハメになります(選択の問題だけか?)。
 まあ、二浪しなければ、今の会社には入っていないだろうとか、もっと素敵な奥様と結婚できたいたはず(*4)とか可能性は捨て切れませんが・・・

 話は戻って、クォンタム・ファミリーズのSF的ポイントは”量子コンピュータによる平行世界間の意識の転移”。量子論てのは現在の科学の中ではもっともわかりにくい理論のひとつで、SF的にケムにまくには格好の素材。でも、この小説ではもっともらしい用語がちりばめられてはいるものの、ほとんど魔法の世界です。
 魔法(魔術)には、白魔術と黒魔術に分かれますが、前者は”好ましい目的のために、人のために使う魔法”、後者が”他人に危害を与えたり、自己の欲求・欲望を満たすために目的のために使われる魔法”のこと。家族のためであれば白魔術だし、自分の人生を再構築するなら黒魔術だし。結局、結果からだけ見れば黒魔術的なんでしょうかね。

 物語の随所に出て来るサワロというサボテンにしても、荒涼とした風景を表現するというより、私としては、葦船友梨花の家族に対する”ハリネズミのジレンマ(*5)”を連想しちゃいました。
 結局のところ、どんなに人生をリセットするような魔法の技術があっても、人間の愛憎といった業の問題を解決することはできないのかもしれません。

 今回のおまとめ

  充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。
  Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic
   クラークの第三法則(*6)

  善悪はそれを持ちいる者の心の中にあり。科学者がよく使う詭弁じゃ!
   サクラさんのお言葉(”うる星やつら ビューティフルドリーマー(*7)”より)

《脚注》
(*1)Magi Cluster
 マギ・クラスターは分子機能系を担当するCaspar(カスパー)、生命システム系を担当するBalthazar(バルタザール)、遺伝子情報系を担当する Melchior(メルキオール)などから構成されています。
 命名をしたヤツは絶対エヴァンゲリオンのファンでしょう。決裁した人も偉いけど。
 実物は生命情報工学研究センターのHPでご覧いただけますのでどうぞ。
(*2)並行世界
 いわゆるパラレルワールド。理論的には存在する可能性があるそうです。
 ”よく似ているけど、ちょっと違う”という世界なので、SF的には便利な設定。
(*3)35歳ってのがビミョ~です
 ”OL進化論”(秋月りす 講談社)の”35歳で独身で”を読んでいただければよろしいかと。
(*4)もっと素敵な奥様と結婚できたいたはず
 いや、あの、その、今の奥様が最高です。
(*5)ハリネズミのジレンマ
 鋭い毛を全身に生やしたハリネズミが二匹、巣穴の底で震えている。
 ハリネズミは,寄り添い暖めあおうとするが,互いの針で相手を傷つけあってしまう。 エヴァンゲリオンの屈折した親子関係を表現するのに使われて有名になりました。
(*6)クラークの第三法則
 イギリスのSF作家、アーサー・C・クラークが定義した法則。ちなみに第一と第二は下記のとおり。
 1.高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。
  また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
 2.可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみる
  ことである。
 至言です。
(*7)うる星やつら ビューティフルドリーマー
 高橋留美子原作、押井守監督の劇場版アニメ。名作です。
 このセリフは巫女のサクラさんが、夢を操る妖怪”無邪鬼”と対決する時のもの。

損得を度外視して熱中しちゃうのがオタク、ただし隠蔽体質だけど(星間商事株式会社社史編纂室/東京ビックサイト)

 ども、たまには勘違いして本を読んでしまうおぢさん、たいちろ~です。
 先日、”まほろ駅前多田便利軒(*1)”を読みまして面白かったので、”星間商事株式会社社史編纂室”も読んでみました。実はこの本、SFだと思ってたんですよね。宇宙を股にかける商社の話を予想してたんですが、でんでん違いました。
 ま、三浦しをん自体を何の根拠もなくキリスト教系の宗教系作家だと考えたぐらいだからしょうがないか・・・


0309
写真はたいちろ~さんの撮影。オタクの聖地、東京ビックサイトです。


【本】星間商事株式会社社史編纂室(三浦 しをん 筑摩書房)
 29歳、独身の川田幸代は社内の閑職、社史編纂室勤務に勤務するOL。隠れ腐女子(しかもボーイズラブ系(*2))。社内のコピー機で密かに同人誌を作っているところを上司の本間課長に見つかり、ひょんなことから会社の過去の秘密を調査することになり・・・
 ”星間”は”せいかん”ではなく”ほしま”です。
【旅行】東京ビックサイト
 日本最大のコンベンションセンター。正式名称が”東京国際展示場”で運営会社が”株式会社東京ビッグサイト”(ややこしい)
 夏コミも冬コミも行ったことはありませんが、あの広大な展示スペースに無慮数十万のオタクが結集してる光景は感動モン(何が?)だと推察します(*3)。


 さすがに同人誌を作ったことはありませんが(*4)、ブログを書くという行為もまた”誰かに私の思いを知って欲しい”というのがベースにあります。で、そのために労力を惜しまないのがオタク。川田幸代さんの場合も、寝る間を惜しんで原稿を書いて、製本して、東京ビックサイトのコミケで売ってと、大忙し。売ってる同人誌の内容はといえば、”男同士で組んずほぐれつ(幸代さんの恋人談)”。幸代さんいわく

  損得を度外視して熱中しちゃうのが、オタクの特徴ですから。

 私のブログの場合、本を読む->ブログのネタを考える->ネタの裏をとる(*6)->写真を探す->原稿を書く->ブログにうPする、という手順をとりますが、1ネタ書くのに本を読んでいる時間を除いても2~3時間かかるので、けっこうな時間を費やしていることになります。ブログを初めて1年半ほどになりますが、この時間にアルバイトをしてたとすると海外旅行に2~3回行けるぐらいの収入になってたはずなんですが・・・

 話は戻って、幸代さんはこの情熱で会社の黒歴史を穿り返しちゃいます。まあ正義感もあるでしょうが、”わかんないことは知りたい、知っちゃったことは発表してみたい”というオタクの性だったんじゃないでしょうかねぇ。それを同人誌にして社史にまぎれて作っちゃうという本間課長もマニアックといえばマニアックです。

 ところで、オタクのもうひとつの特徴というのは”同好の士にはたくさん読んで欲しいけど、それ以外(特に身近な人)には知られたくない”ってのがあります。幸代さんの友人にして人妻、英理子さんのような例もありますが、むしろ一般人と結婚を悩む実咲さんのような反応が一般的かもしれません(男同士で組んずほぐれつだし)。
 本間課長に自分の同人誌を読まれた幸代さん、

  夏に引きつづき、冬コミの新刊まで本間課長に読まれてしまうとは。
  こんな屈辱と羞恥プレイがあるだろうか。

 今、会社で社内ブログの管理人をやっていますが、アクセス率UPのために”個人でやってるブログのURLを教えてください”とお願いしたところ、比較的すんなり教えてくれる人と、頑なに教えてくれない人と極端に反応が分かれました。中には”誰から私がブログを書いていることを聞いたんですか!”と詰め寄る人も。こやつは一体どんなブログを書いてるんだ?!

 こういったアンビバレントな行動様式こそが、オタクをしてオタクたらしめてるんでしょうかね。英理子さんのように自分の本質をあけすけに出せる人ってのは勇者なのかも。竹宮恵子の”地球へ(*7)”の中で、心を読むことができるテレパスの中で、それをシールドできないジョミーに対し、導き手たるフィシスが

  うわさはお聞きしています
  そうやって 心をオープンにしたまま 読まれていることを知っていてなお
  かくれもせず人前に立てる勇者だと

 てなことを言ってますし。
 もっともジョミーはこれに対し”ものには言いようがあるもんだ”と答えていますが。

 ”星間商事株式会社社史編纂室”は、身に覚えのあるオタクの方々には楽しんでお読みになれるのではないかと思います。

《脚注》
(*1)まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん 文春文庫)
  多田啓介はまほろ駅前で”多田便利軒”というラーメン屋もとい、便利屋を営んでいる三十半ばの男。ふとしたきっかけで高校時代の同級生、行天春彦と生活をともにすることになり・・・
 2006年に、直木賞を受賞しました。詳しくは、こちらのhpでどうぞ。
(*2)ボーイズラブ系
 ♂と♂のラブゲーム。おぢさんの想像の域を超えています(想像したくないけど)。
 川田幸代さんの場合はおぢさんと若者というシチュをお好みのようですが、リアルであったらきっとどん引きしちゃいそうです。
(*3)夏コミも冬コミも行ったことはありませんが~
 コミックマーケットは世界最大規模の同人誌即売会のこと。8月に開催されるのが”夏コミ”、12月が”冬コミ”。2009年の夏コミは3日間で参加サークル3.5万、一般参加者数は延べ56万人と鳥取県民(約61万人)にほぼ匹敵する人数です。
(*4)同人誌を作ったことはありませんが
 企画拡販という仕事をやっているので解説資料なんかは作ります。
 かつて、”猿でもわかる経営管理入門”という社内向けの小冊子を作ったことはありますが、ゆうこりんは出て来るわ、EVA(*5)は出て来るわとオタクテイスト満載でありました。
(*5)EVA(Economic Value Added)
 経済的付加価値のこと。株主に対する収益還元に重点を置いた経営指標です。
  経済的付加価値=税引後利益-資本コスト
         =税引後利益-(有利子負債+株主資本)×加重平均資本コスト率
 大体、経営管理系ってのはややこしい話が多いのでエヴァンゲリオンのひっかけで解説しました。
(*6)ネタの裏をとる
 いちおう、ネタの内容に間違いがないかを確認しています。モノによっては書いているよりこっちのほうが時間がかかることも。
(*7)地球へ(テラへ)
 環境破壊の進んだ地球を再生するために人類をコンピュータの管理する社会。その中で生まれたエスパー”ミュウ”。迫害されるミュウたちが自分たちの生存認めさせるために人類に戦いを挑む・・・
 竹宮恵子のSF傑作マンガ。2007年にテレビアニメ化。

iPad、見てきました!!(StarTrekシリーズ/アップルストア銀座店)

 ども、新しモン好きのおぢさん、たいちろ~です。
 2010年5月28日、日本でiPad(*1)が発売されました。おそらくこの日を待ち望んでいた方も多いかと。欲しいんだけどな~~~、コレ。予約はしませんでしたが、ぜひ実物を見たかったので、アップルストアまで見学に。
 ということで、今回のお題は”iPad、見てきました!!”であります。


Applestore0318Ipad0314
 写真はたいちろ~さんの撮影。左はアップルストア銀座店の様子。右はiPadです。
(カメラの関係でちょっと画面が青みががっていますが、実際はもっときれいな色です)


【DVD】StarTrekシリーズ
 ”宇宙、そこは最後のフロンティア、これは宇宙船エンタープライズ号が23世紀において任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求め人類未踏の宇宙に勇敢に航海した物語である。”(Star Trek 2009年版より)
 1966年開始の初代シリーズ(TOS = The Original Series)より連綿と続くSFシリーズの最高傑作
【旅行】アップルストア銀座店
 東京都中央区銀座にあるアップルの直営店。メタリックな外壁とガラスばりの店舗がおしゃれ。銀座という土地柄も含めデートコースにはなりますが、デートにiPadを見に行くこと自体が問題かも(ぜったい彼女をほったらかしにします!)


 会社の近くにあるアップルストア銀座店ですが、お昼休みということもあってけっこうな混雑。
 予約をされている方の長蛇の列に加え、マスコミの方も多数お集まりでした。

 さて、肝心の”iPad”ですが、一言でいうと”すんげ~~~カッコイイ!”です。
 まず、操作に感するユーザーインタフェースですが、その直感性はさすがです。
 15分ほど操作をしているお兄さんを見ていましたが(早く交代せんかい、に~ちゃん)、iPodを持っていない人(私です)でもそれなりに操作できてしまうほど良くできているし、縦を横に持ち直すと画面の方向が変わるとか、この機能を利用してハンドルのように車の操作ができるゲームとか。指2本で写真の拡大や寄せるとフォルダのような写真の集まりになるとか、けっこうクールです。

 何かと話題の電子書籍は、デモ用に”くまのプーさん(ただし英語)”が入っていますした。バッククラウンドが明るいので読みやすいですし、イラストもかなりきれいに出ています。横にすると2ページ、縦にすると1ページ分が表示されるので、老眼の方は縦モードがよろしいかと。
 ただ、本としてみるとちょっと重ため。長時間通勤で読みつづけるのはしょっとしんどいかなというのが、触った感じでの唯一の欠点でした。

 他にも、YouTubeは大きい画面でもさくさく動くし、あの大きさがあればけっこう迫力あります。iPadは”見る”、”さわる”に特化した感じで、パーソナルユースの情報端末としてはたいへん良くできたデバイスと感じました。

 ビジネスユースの視点で見ると、これで文章を作ったり表計算をしたり(機能はついていますが)というより、出来上がった書類をこれに入れて会議するとかしてペーパーレスをするなんて、けっこういかした使い方かも。会社の経費で買ってくんないかなぁ。
 あと、簡単な入力端末としては使えそう。これで思い出されるのが”StarTrekシリーズ”に出て来るパッドデバイス。確かTOSでもカーク船長が報告書を読んだりするのに使ってましたね。最新の映画版でも登場しています。
 下の画像は2009年度版から。スポックがウラの乗艦船舶を変更する指示を出すのに使っています(*2)。


Startrek_1


 あんまり目立たないガジェットですが、実は子供のころから憧れていたんですよね、これ。情報パッドどころか、パソコンすらほとんどなかった時代に(*3)報告書をこのデバイスでぴぴぴするのって、まさに未来!
 StarTrekに登場するガジェットとしては二つに折り曲がるコミュニケータ(通信機)なんかも、現在の折りたたみ式の携帯電話の先取りで(*4)、最初にこのタイプを持った時は”カークよりエンタープライズ”なんか言って遊んでましたねぇ。

 SFのガジェットが現実を追い越すのってすごいことです。というより、昔は追いこすなんて思っても見なかったんですがね。
 それにしても、あぁ~、欲しいな~、欲しいな~、これ。
 住宅ローンと、子供の学資が無ければ買えるのに・・・


《脚注》
(*1)iPad
 アップルによって開発されたタブレット型コンピュータ。
 iPhoneと同様の画面を使ったマルチタッチスクリーン方式のインターフェイス、大型ディスプレイ、大容量メモリを採用したスグレモノ。
 詳しくはアップルの公式HPでどうぞ。
(*2)2009年度版から~
 2009年度版はTOSの少し前の時代、カークが船長になるまでのエピソードを描いた作品。”早く続編が見たい!”と思わせる名作。老齢のスポック(演じるのはTOSで同役を演じたレナード・ニモイ)が渋い魅力をだしています。
 詳しくはこちらのブログでどうぞ。
(*3)パソコンすらほとんどなかった時代に
 iPadやWindowsのインタフェースのご先祖様にあたる”ダイナブック”構想をアラン・ケイが提唱したのが1972年。
 ダイナブックはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を搭載したA4サイズ程度の小型のコンピュータで、文字、映像、音声も扱うことができ、ネットワークへの対応も可能と斬新なアイデアには脱帽します。
 ちなみに、IBMがPCを発売したのは1981年のことです。
(*4)折りたたみ式の携帯電話の先取りで
 最初に折りたたみ式を販売したのはNEC。きっとこれを開発した人はトレッキーだったんだろうなあ。登場時期ははっきりはわかりませんが、1991年あたりみたいです。

速い=強いとは限らないんだけど・・・(超高速の香織/仮面ライダーW/チーター)

 ども、のんびり生きてるおぢさん、たいちろ~です。
 日曜日だというのにすることもなく、朝から”仮面ライダーW”を見てました。今回登場するのは、仮面ライダーアクセルの超高速仕様”トライアル”(*1)。まあ、後から出て来る変身フォームは強いのがお約束なので、ちゃんと敵をやっつけるわけですが、兵器において”速い=強い”かという問題が実はあります
 ということで、今回ご紹介するのは超マイナーな作品”超高速の香織”であります。


Photo_2
写真はS-Hoshino.comより。チーターです。


【本】超高速の香織(風忍 太田出版)
 体を高速化する薬物を飲んだ母が、ジェット機事故から子供を守るために、ビルから脱出するという話。1978年に少年マガジンに掲載された風忍の短編読みきりマンガです。
 ”ガバメントを持った少年”に収録されていますが、今は絶版。
【動物】チーター
 四肢動物では走行速度が最も速い動物。走行してから2秒で72km/hに達し最高時速が100km/h100kmを超えるとする説もある。ただし、全力疾走できるのは約400m(Wikipediaより)


 私自身は格闘技はやりませんが、ボクシングであれ空手であれ、速い=強いというのは確かにありそうです。格闘に強い女性というのは”スピートで相手を翻弄する”というのはお約束の戦法。そのせいか、超高速で戦うするヒーローというのはけっこう多くて、古くは弾丸よりも速い8マン、加速装置のサイボーグ009、仮面ライダーシリーズではアクセルフォームの仮面ライダーファイズ
 いずれ劣らぬ強さですが、問題はこの”超高速”。実際に超高速で戦うとなるといろいろ不都合が出てきます。このあたりのことがリアルではどうなるかを初めて読んだのが、今回ご紹介する”超高速の香織”です。手元に本がないので記憶に頼ってですが、いくつか上げてみると

〔慣性力の問題〕
 たしか、方向を変えたときに赤ちゃんを入れたポッドにひっぱられるといったシーンだったと思います。
 ニュートンの”運動の第1法則(運動している質点は力を加えられない限り等速直線運動を続ける)”に従うので超高速で方向を変えると外側に振られることになります。これがもうひとつ問題なのは、摩擦力は変わらないので、急に止まろうとしてもスリップすること。前につんのめっていては戦いになりません。

〔空気抵抗の問題〕
 普通に動いている分には問題ない空気抵抗ですが、高速になるほど抵抗が大きくなります。たしが、マンガでは水の中でもがいているような描写だったと思います。
 テレビのクイズ番組で”スカイダイビングで落下する人の速度の変化を答えよ”というのがありましたが、空気抵抗は速度の二乗に比例するので、重力加速と空気抵抗が均衡するため一定速度(終端速度)になるとのこと。つまり、超高速で敵をぶん殴ろうとすると、質量としての腕を動かす以上に空気抵抗に打ち勝つパワーが必要になります。

 それ以外でも、いくつか考えられる点としては

〔ソニックブームの問題〕
 モノが空気中で音速を超えるとソニックブーム(衝撃波)が発生します。これは武器としてはありかもしれませんが、周りに広がるので周囲の人もぶっとばす可能性があるはた迷惑なシロモノ。形状によっては自分自身にも及びます。

〔防御力の低下〕
 速度を上げる方法ためには軽量化するという手がありますが、これは往々にして”装甲を薄くする”というやり方になるので、防御力の低下につながります。この例として挙げられるのが大日本帝国海軍の”ゼロ戦(零式艦上戦闘機)”。防弾による重量増加より軽量化を優先させて、速度や運動性などを向上させた機体ですが、防御力の弱さが欠点として指摘されています。
 仮面ライダーアクセルトライアルも、防御力が低下しているらしいです。

〔活動時間の問題〕
 パソコンに”オーバークロック(*2)”というテクニックがありますが、これは定格を上回るクロック周波数でCPUを動作させること。実際にやるとなると消費電力や発熱の増加、信頼性・安定性の低下を招きます。つまり無制限に長時間の利用は難しいということです。
 動物のチーターもそうですが、高速で活動できる時間というのは案外短いものです。
 仮面ライダーアクセルトライアル、仮面ライダーファイズのアクセルフォームも活動限界は最大10秒間なので、この間に相手をタコ殴りにしないと勝てないはずです。

〔反射神経の問題〕
 一般のパワードスーツ(*3)では、パワーは増加されますが、人間の反射神経系はそのままなので使いこなすにはそれなりのテクニックが必要。100Km/hの乗用車に乗れるからといって、F-1マシン(*4)を運転できるかというとそれはまた別物ということです。

 じゃあ、まったくダメかというと、トライアルメモリを渡したミイラ風のお姉さん(*5)は、”戦法を変えろ(スピードを使って相手の懐に入りこみ、殴る回数を増やせ)”とか”10秒以内にバイクでコースを回れなければ使いこなせない(反射神経トレーニング、10秒の時間を体で思える)”など、実に理にかなったアドバイスをしています。
 まあ、こういったリアルと空想科学的なほどよいブレンドがこの番組の持ち味かと。
 このへんのリアルをつきつめた作品としては山本 弘の”奥歯のスイッチを入れろ(*6)”なんかもお勧めです。

 風忍はダイナミックプロ(*7)らしからぬ絵柄ですが、永井豪ばりの卓越したストーリー、横尾忠則っぽいポップな雰囲気と、もっと再評価されてもいい人だと思います。B○○K○FFあたりで見かけたら、ぜひ買いです。

《脚注》
(*1)超高速仕様”トライアル”
 仮面ライダーは”メモリ”というUSBメモリみたいなので変身とか機能UPする仕様になっていて、トライアルメモリは”挑戦の記憶”とのこと。どんな記憶だ?
(*2)オーバークロック
 CPUは製品として安定的に可動させるために多少の余力が残してありますので、原理的には提供される性能以上を引き出すことが可能。で、”可能となればやってみたくなる”というのが人の常。スピードUPに情熱をかけるパソコンマニアというのは存在しますが、メーカーの保障対象外になるため、やるなら自己責任でやってください。
(*3)パワードスーツ
 電動アクチュエーターや人工筋肉などの動力を使ってパワーを増加さえた”着るロボット”。ロバート・A・ハインラインの”宇宙の戦士”や映画”マトリックス”なんかにも出て来るSFではメジャーなシロモノですが、介護用などで実用化もされています。
(*4)F-1マシン
 レース中の最高時速が370.1km/h,最高速度を競う大会では415km/h(Wikipediaより)。何かで読んだんですが、F-1マシンは車高が低いので、体感速度は普通の乗用車より速く感じるそうです。
(*5)ミイラ風のお姉さん
 黒ずくめの服、顔をサングラスと白包帯で覆った謎の女性、シュラウド様のこと。
 月光仮面に似てなくもない?!
(*6)奥歯のスイッチを入れろ
 超高速で可動するサイボーグを描いた短編小説。題名はもちろん”サイボーグ009”のパロディですが、内容はいたって真面目。ご本人もHPで述べられていますが、この小説自体が”超高速の香織”へのオマージュです。
 ”まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ)”に収録。
(*7)ダイナミックプロ
 マンガ家永井豪の率いる漫画プロダクション。
 ゲッターロボサーガ、虚無戦記シリーズの石川賢なんかがメジャー。

大阪に”ラブ・アゲイン症候群”はない! と思うぞ(うちのトコでは/ハイビスカス)

 ども、わりとマメに同窓会には出席しているたいちろ~です。
 高校、大学とも大阪、現在は神奈川県在住ですが、同窓会の案内をいただくと、出席できるものは行くようにしています。
 で、奥様から
  よく、同窓会に出てるけど、ラブ・アゲイン症候群(*1)とかあれへんの?
 とのご質問をいただきました。
  50歳過ぎの大阪のおばちゃん(*2)相手にそんなんあると思うか?
 と返事をすると”そやな~”と納得のご様子。
 ということで、今回ご紹介するのは県民性マンガ”うちのトコでは”であります。


0398

写真はたいちろ~さんの撮影。近所の植木市のハイビスカスです。

  【本】うちのトコでは(もぐら  飛鳥新社)
 全国47都道府県の県民性を完全擬人化したマンガ。いわゆる”あるある系”のネタですが、けっこう納得しちゃったりします。社会のお勉強には役に立つかも。
 突っ走るお姐さん”神戸”、ケンカ上等の”広島”、クールな”岡山”が出て来る『夢の架け橋』(本州四国連絡橋完成秘話)もいかにもありそうな話で面白いです。
【花】ハイビスカス
 アオイ科フヨウ属の低木の総称。意外ですが芙蓉(フヨウ)や槿(ムクゲ)と同じ属。
 沖縄やハワイやなど南国を代表する花ですが、沖縄県の花はデイゴ、那覇市の花はブーゲンビリアと、何故かハイビスカス以外の花です(沖縄市の花はハイビスカス)

 大阪にも上品なおばさまや、清楚な奥様も実在します(たぶん)。県民性というのは血液型占いや星占いと一緒で”こんな傾向がありそう”ぐらいの感じでしょう。
 とはいえ、”大阪の人間は二人集まると漫才を始める”とか”大阪のおばちゃんのカバンにはアメちゃんが入っている(*3)”といったほぼ事実に近いものから、”大阪人は全員阪神タイガースのファンである(*4)”といった事実に反するものまでさまざま。精神分析で言うところの”自分の見ている自分、他人の見ている自分”というのをひっくるめて”県民性”というのが出来上がっているようです。

Kinnki  で、”県民性”をいわゆる”萌えキャラ”でビジュアル化したのが今回ご紹介の”うちのトコでは”。よくよく読んでみると、上手く描かれている県のキャラと、なんで? と思うのが混在します。(左は飛鳥新社のHPより、近畿編)

どうも著者の実力というより、元々の県民性が濃いか薄いか県を代表するイコン(*5)があるかどうかによるようです。分類してみると




行動そのものがイコン
京都府
 長い黒髪に着物といった外見以上に己が文化に対するプライド、”京都”というブランドを商売に変えるしたたかさ、冷ややかに見つめるクールさはまさに京都ならでは。本書中、もっともキャラが立っている県です。
広島県
 人のよさそうなに~ちゃんですが、いったん切れると”ああ、広島だ!”と判る県。どうも、”仁義なき戦い(*6)”のイメージです。ただ、見た目でわかり難いのが難点。

見た目そのものがイコン
大阪府
 ハリセンにトラをあしらったTシャツの女の子。テンポのいいノリ突っ込み。見まごう事なき県民性、それが”大阪”です。
 大阪人の日常会話が漫才になるのは、サービス精神の表れで”相手を楽しませる”ことに生きがいを感じるから。受けるためなら、親でも殺します(*7)。

ファッションがイコン
沖縄県
 琉球王朝の流れを汲む独特な着物をおめしの女の子。ハイビスカスの髪飾りにペットのシーサーもかわいいぞ!
神戸(神奈川県)
 ファッションリーダーを自認し、活動も活発な娘さんはやっぱり”神戸っ子”。
 ただ、”ファッションリーダーは私だ!”と思っている県はほかにもありそうなのが難点といえば、難点。
秋田県
 小野小町を始め美人で有名、日本有数の米どころの秋田。着物に黒髪が良く似合う別嬪さんです。

人がイコン
鹿児島県
 郷土の英雄”西郷隆盛”まんまです。
 以外と人がイコンになってるパターンってのはなくて47県中、鹿児島だけ。高知県なんか坂本龍馬でやりそうなのに・・・

わかんらんけどかわいいから許す
新潟県
 超ミニスカートな今風な女子高生。女子高生のスカートが日本一短い県だそうですが(*8)、普通、知らないと思いますよ。
静岡県
 明るくて穏やか、子供のように素直で好奇心のかたまりと高評価の静岡県。なぜか赤いランドセルを背負った小学生キャラですが、かわいいからOK!
 平均的な日本人像ということで、テストマーケティングは静岡県でやることが多いと聞いたことがあります。

 以外と少なかったのが、木や花をイコンにしたパターン。沖縄のハイビスカスと北海道のトウモロコシぐらいでした。考えてみると、県の木や花ってかぶってるケースが多くて、関西出身の私から見ると”大阪の木だ”と思いますが、東京都(*9)、神奈川県の木でもあるから使いにくいのかも。

 ”うちのトコでは”は、県民性をシャレと思って読むには良い本。ふるさとを遠きにありて思う人にもお勧めです。

 PS.言い忘れましたが、私の奥様も大阪出身です。

《脚注》
(*1)ラブ・アゲイン症候群
 2010年にテレビ朝日で放映の”同窓会”のサブタイトル。同窓会をきっかけに再び愛が始まる話らしいですが、見てません。
 主演は伝説のタカラジェンヌ”黒木瞳”。以前、娘と”奥さんが黒木瞳だったら、絶対浮気しないよね~”とか”お母さんが黒木瞳だったら、絶対なんでも言うこと聞くよね~”とか言ってたら、奥様が怒っちゃいました。
(*2)大阪のおばちゃん
 地上最強の生物
(*3)大阪のおばちゃんのカバンにはアメちゃんが入っている
 以前、やしきたかじんがテレビの公開放送で、会場のおばちゃんにアンケートをとったところ、ほとんどのおばちゃんがアメちゃんを持っていました。
(*4)大阪の人間は全員阪神タイガースのファンである
 大阪にも巨人ファンは存在します。ただ、優勝したからといって道頓堀川に飛び込んだりしないだけです。
(*5)イコン
 物事を簡単な絵柄で記号化して表現するものをイコンといいます。英語で言いうとアイコン (icon) 、パソコンで使われる簡単な絵で機能やアプリを現すあれです。
(*6)仁義なき戦い
 1973年に公開された東映ヤクザ映画の代表作。監督は深作欣二、主演は菅原文太。 やっぱし、広島といえばコレです。
(*7)受けるためなら、親でも殺します
 別にホントに殺すわけではありませんが、会話の流れで親が死んだほうが面白いと思えば、死んだことにしてしまうぐらいのことは平気でやります。身内の不幸でも笑いに変えるというバイタリティは大阪ならではです。
(*8)女子高生のスカートが日本一短い県だそうですが
 どうもファッションセンスというのは、周辺に向かって拡大解釈されるようです。
 東京より大宮の女子高生の方が(以下自主規制)
(*9)東京都
 東京都のシンボルマークは”T”の意匠ですが、見た目はまんまイチョウの葉っぱ。

世界征服ってのは意外と報われないもんらしいです(「世界征服」は可能か?/六本木ヒルズ)

 ども、”愚民ども、我の前にひざまずけ”のおぢさん、たいちろ~です。
 以前、六本木ヒルズで開催されたセミナーに行きました。休憩時間にタバコを吸いながら、
  見ろ、人がごみのようだ(*1)
 なんかつぶやいていると、世界征服をしたような気になります(*2)。勘違いっちゃ勘違いなんですが、それなりにハイな気分には浸れます。
 ということで、今回ご紹介するのはオタキング、岡田斗司夫の”「世界征服」は可能か?”であります。

六本木ヒルズ・52階その2
六本木ヒルズ・52階その2 posted by (C)itokoichi

写真はフォト蔵から。六本木ヒルズ52階から眼下を見下ろした写真。
こんなブログを書くことになるなら、自分でも写真とっとけば良かった・・・


【本】「世界征服」は可能か?(岡田 斗司夫 ちくまプリマー新書)
 男と生まれたからには、一度は夢見る”世界征服”。では、何のために世界征服をするのか? 世界征服は実現可能か? という根源的な理由をアニメ、マンガ、特撮から紐解いた書。
【旅行】六本木ヒルズ
 日本の不動産王”森泰吉郎”が創業した”森ビル”が再開発した複合施設。上記のセミナーは超高層ビル”六本木ヒルズ森タワー”で開催されました。
 単独で立っているビルなので、とても見晴らしが良いです。


 本書で開設されている世界征服の手順としては
  1)目的設定 : 実現する目的の明確化
  2)人材確保 : 目的を同じくする人材の調達と組織化
  3)資金調達と設備投資 : 資金確保と秘密基地作り
  4)作戦と武装 : 実行計画の策定と実行手段の確保
  5)部下の管理と粛清 : 人事政策
  6)世界征服とその後 : 体制の定着化
 が上げられています。”:”の左側が本書の記載ですが、内容を右側のように読み替えると、あることが見えてきます。つまり、世界征服のプロセスというのは会社なんかで言うところの”マネジメント(*3)”なんですね。

 特に重要なのは”なぜ世界征服を行うか?”、つまり目的の明確化です。会社なんかの場合だと”当社の提供するソリューションを通じて、お客様の成長と社会への貢献、それを通じて会社の継続的な成長”云々のきれいごとが通じますが、世界征服を企む悪の組織としてはそうはいきません。本書では例として

 ・人類の絶滅  : 地球への移住を意図する宇宙戦艦ヤマトの”ガミラス人”
 ・お金が欲しい : 非合法な手段で富を集める初期007の悪役”スペクター”
 ・支配されそうだから逆に支配する :機動戦士ガンダムの”ジオン公国”
 ・悪を広める  : 自分の信念に忠実なドラゴンボールの”ピッコロ大魔王”
 ・目的が不明  : 仮面ライダーの悪の秘密結社”ショッカー”(*4)

なんてのを上げています。

 あと、私のほうで追加するなら、”地位復権のため”。まあ、地位を取り戻した後に何をするかという別の目的があるので、”中間目標”といってもいいかもしれません。意外なことに世界征服を実現しているのこのパターンでもあります。代表例としては、

悪魔神サタン
 永井豪の傑作マンガ”デビルマン”に登場する神。神々との戦いに勝利し、次なる戦いのために冬眠についている間に勝手に地球を占拠した人類を滅亡させます。まあ、サタンからしてみると、寝てる間に自宅に繁殖していたゴキブリを駆除するようなもの。
 目的は、神々との戦いに勝利することなので、邪魔者を片付けるのは中間目標ではあります。

アルカンフェル
 高屋良樹の長編マンガ”強殖装甲ガイバー”に登場する秘密結社”クロノス”の長。おそらく、もっともスマートに世界征服を成し遂げた人です(*5)。
 最終目的は自らの軍団を率いて、”降臨者(ウラヌス)”に戦いを挑む事。

 どうも、このパターンは世界征服が成功しないと次の段階に行かないというドラマ的な都合もあるんでしょうか、根底には”貴種流離譚(*6)”といったところにロマンを感じるのかも。

 ところで、現実社会で一番ありがちなのがこれ。世界征服までいかなくても、国のトップに返り咲こうとするパターン。物語なら”めでたし、めでたし”もありですが、現実では、それが幸福(誰にとって?)になるかはまた別。正義と悪という二項対立が成り立つほど現実は簡単ではなく、複雑に絡み合ったステークホルダーの利益調整が政治の役割なら、だれがやってもどっかに不満は出てきます。本書でも”征服者の欲望の充足”の観点で考えると、世界征服は苦労の割には報われないもんだといってます。ま、紆余曲折の末に日本のトップに立った鳩山総理を見てると判らんでもないですが。

 フィクションであれば笑ってみてられますが、タイの混乱を見ていると(*7)いろいろ考えてしまう今日このごろであります。

《脚注》
(*1)見ろ、人がごみのようだ
 宮崎駿の”天空の城ラピュタ”に登場する世界征服を企む”ムスカ”の名セリフ。本名はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタとラピュタ王家の末裔。
 声を担当するのは、仮面ライダーWで秘密結社“ミュージアム”の長、園咲 琉兵衛を演じる寺田農。
(*2)世界征服をしたような気になります
 勝ち組の代名詞だった”ヒルズ族”ですが、ライブドアの堀江貴文や、村上ファンドの村上世彰、グッドウィル・グループの折口雅博と、成功の後にずっこける人が多いのはこの勘違いのせいかもしれません。
(*3)マネジメント
 マネジメントにご興味のある方は”もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら”なんかが入門書としてはお勧め。こちらのブログもどうぞ。
(*4)悪の秘密結社”ショッカー”
 悪の秘密結社の代名詞のようなショッカーですが、確かに言われてみると何のために世界征服をするのかはわかりません。まあ、それはそれで納得して見ていられた時代というのは、シンプルな世界観ではあったんでしょうが。
(*5)もっともスマートに世界征服を成し遂げた人です
 力押しというより、自分の部下を各国に潜入させクーデターに近い形で政権を奪取しています。また、全体としては民生面を含む政権維持がわりと上手くいっている例でもあります。
(*6)”貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)
 日本の民俗学の泰斗、折口信夫が日本の物語文学の原型として論じた概念。
 「高貴な生まれの、弱く、力ない人間が、遠い地をさすらう苦悩を経験する」(Wikipediaより抜粋)というもの。世界征服ではないですが、ディズニーの”美女と野獣”や、”かぐや姫”なんかもこの系統です。
 上記の例でいうとサタンは神様だし、アルカンフェルは司令官(王)として調整された人です。
(*7)タイの混乱を見ていると
 タイ王国の第31代首相タクシンは、クーデターにより首相の地位を追われましたが、タクシン元首相派勢力が暴徒化しバンコクなどが大混乱しました。とりあえずは正常化しつつあるようですが、まだまだ予断を許さない状況みたいです(2010.5.22)。

なんで女子高生がこんなイラストが好きだったんだろう?(千夜一夜物語/ジャスミン)

 ども、春の香りを楽しむおぢさん、たいちろ~です。
 近所にジャスミンの花が咲きました。小さくて白い花が群がって咲くのがとっとも可憐です。なにより甘い香りが特徴で、この季節なら離れていてもすぐ気がつきます。ジャスミンティー(*1)と言えばおわかりになるかと。
 ところで、ジャスミンはその可憐さのせいか、女性の名前としてもよく使われます。その代表例がディズニーの”アラジン”に登場するヒロインの”ジャスミン”。ということで、今回ご紹介するのは”千夜一夜物語”であります。
 あっ、デカレンジャー(*2)でも良かったかも・・・

0381_2
写真はたいちろ~さんの撮影。近所のジャスミンです。

【本】古沢岩美画集 千夜一夜物語(ノーベル出版)
 日本の画家(1912~2000年)。
 裸婦像や超現実主義絵画を残した人ですが、私が知っているのは”千夜一夜物語”のイラストの人です。
【花】ジャスミン
 モクセイ科ソケイ属の植物の総称。漢字では茉莉(まつり、まり)茉莉花(まつりか、まりか)。原産地はアジアからアフリカの熱帯あるいは亜熱帯地方。ジャスミンの語源はペルシャ語に由来するそうなので、”アラジン”に使われるのはたぶん正解です。

 素直に、ディズニーの”アラジン”をやればいいんでしょうが、山ちゃんのはっちゃけたジニー以外に印象がないので(*3)、ちょっとひねって原作版のほうから。
 でも、”千夜一夜物語”の原作って、シェヘラザードが1001夜に渡って物語するのでかなりの超大作。文庫版で10巻以上が当たり前のボリュームです。
 実は、原作の”千夜一夜物語”って読んだ事なかったりします。特に”バートン版 千夜一夜物語”(大場正史訳)ってのが大人向けっぽくって。絵が古沢岩美という画家の人。実にセクシーというか色っぽいというか・・・

 今回ご紹介するのは”古沢岩美画集 千夜一夜物語”なんですが、意外なことにあとがきをみると、この本までは主人公のイラストはみんな西洋人だったそうです。古沢岩美はこれを東洋人にして、”イスラムの世界を象徴するモスク、コーランの甲高い祈りの声まで絵の中に閉じ込めてみたかった”とのこと(あとがきより抜粋)
 そうすると、実にセクシーで、退廃的で、享楽的で、残酷な作品になります。たとえばこんな感じ。

0386_2 0387_2

左は”ハルン・アル・ラシッド教主とオマンの商人アブ・ハサンの話”(ちくま文庫版11巻の表紙)、右は”少女と父”(ちくま文庫版9巻の表紙)


 有名な話の船乗りシンドバットや、今回のアラジンにしてもけっこうえぐいイラストになります。

0392_3 0384_2

左は”アラジンまたは不思議なランプ”、右は”船乗りシンドバットと軽子のシンドバッド”


 ディズニー版に出て来るランプの精”ジニー”は歌って踊れるゆかいなおっさんというイメージがありますが、古沢岩美版だと、夢に出てきたらうなされそうな悪役顔だし(ピアスとかしてちょっとおしゃれかも?)。シンドバットにしても、悪役はちゃんと串刺しにして焼いて食べる(レアっぽいけど)とこなんか念がいってます。


 ところで、この本を紹介してくれたのは、高校時代に女性の友人からで、”高い本だったけど、買えて嬉しい!!!”と言ってました。(ちなみに定価で18,000円します)。
 ずいぶん後になって、たまたま古本屋で同じ本を見つけたので買ってみましたが、なんで女子高生がこんなイラストが好きだったんだろう? 今だに謎です。


 まあ、妻の不貞で女性不信になった王様にシェヘラザードが寝物語にする話なので、ディズニー的な勧善懲悪的な話のはずがないんだろうな~ 今度、まじめに読んでみよう。 古沢岩美画集は1979年出版とすでに絶版、中古品で買っても3,500円以上と入手は難しいですが、図書館あたりを探すと読むことはできます。
 バートン版の”千夜一夜物語”自体は現在でもちくま文庫で入手できますので、真面目に(?)読んでみたい方はこちらのほうもどうぞ。


《脚注》
(*1)ジャスミンティー
 ジャスミンの花と緑茶などをブレンドして作ったお茶。中国茶のイメージがありますが、緑茶のブレンドなので日本茶の系列にもはいりそうです。
 どうなんでしょう、日本茶インストラクターの奥様?
(*2)デカレンジャー
 ”特捜戦隊デカレンジャー”は2004年に放映された”スーパー戦隊シリーズ”第28作目。宇宙警察モノです。
 デカイエローを担当する通称”ジャスミン”のお名前は礼紋 茉莉花(れいもん まりか)。だからジャスミン。
 演じたのは木下 あゆ美さんですが、そういえはこの人は仮面ライダーWでも刑事さん役をやってました。
(*3)山ちゃんのはっちゃけたジニー以外に印象がないので
 日本語版の”ジニー”の声を演じたのが、山ちゃんこと山寺 宏一。
 とてもエヴァンゲリオンの加持リョウジと同じ中の人とは思えん・・・

金採掘者を掘ることがゴールドラッシュの成功法則だ(金融危機の本質は何か/藍)

 ども、経営管理のスペシャリスト、たいちろ~です。
 まあ、スケシャリストというのは言い過ぎですが、以前ITによる経営管理システムの拡販というのをやっていました。
 でも、この”経営管理系”のシステムというのが営業が売るのがもっとも苦手な分野のソリューションのひとつなんですね。PDだLGDだ内部格付手法だと(*1)、なんだか難しそうな専門用語がポンポン飛び出してくるので、根っから文系人間の集まりである営業にはかなりハードルが高い分野です。
 まがりなりにも、売っていく人がこのレベルなので、世の中のおっちゃん、おばちゃんにはかなり難しい分野。ということで、今回ご紹介するのは、専門家にケムに巻かれないためのお勉強”金融危機の本質は何か”であります。


Photo


写真は”日々是好日”のHPより。藍の花です。


【本】金融危機の本質は何か(野口 悠紀雄 東洋経済新報社)
 サブタイトルが”ファイナンス理論からのアプローチ”とあるように、サブプライム問題やエンロン事件でとかく悪役にされがちなファイナンス理論に対し”なにが間違っていたか”をわかりやすく解説した経済書。
【花】(アイ)
 青色の染料(インディゴ)として使われるタデ科の植物。現在は染料が工業的に生産できるので、あまり栽培はされていないようです。
 ジーンズを染めるのに使われたこともあるようですが、現在はほとんど合成品を利用しているとのこと。


 ”ファイナンス理論”で求められるもののひとつに、将来のある時点の値段がわからないものを、今ならどれぐらい価値と考えれば良いかを計算するというのがあります。
 金融の話だとわかりにくいので、身近の例にするとこんな感じ。

 たいちろ~さんは前回のテストで、ちょうど平均点を取りました。
 部屋でマンガを読んでいると、おかんが入ってきてこう言いました。

  おかん:たいちろ~、もうちょっと勉強せんとええ学校にいかれへんで!
  たいちろ~:だって、やる気で~へんねん。お小遣いくれたらやる気でるんやけど
  おかん:また、そんなこと言うて。そやったら、お母ちゃんと賭けしよか。
  たいちろ~:どんな?
  おかん:ここに1000円出し。次のテストで60点以上取れたらお金を
      何倍かにして返したげるわ。なんぼやったらええねん?

 学習意欲をお金で買うのがいいかどうかは別にして、たいちろ~さんは幾ら以上もらえたら、この賭けに乗るべきでしょうか?

 この前のテストの平均点は50点、標準偏差は10の正規分布だったとして、次回のテストもまったく同じであるとすると、60点以上を取る確率は約16%ですので、84:16に勝ち負けが分かれるくじ引きをするようなもの。損をしないためには、だいたい5250円以上のお金を貰えばこの賭けはプラスになります(*2)。

 で、お金をもってないたいちろ~さんは、弟のじろ~くんにこんな話を持ちかけます。
  たいちろ~:あんな、おかんとこんな賭けしたんやけど、お金もってないねん。
        でな、1000円貸してくれへんか?
        5250円貰ったら割り増しして返すから。
        その代わり、貰われへんかった500円しか返されへんねん。
        いくら割り増しで出したらええやろか?
  じろ~  :なんぼや言われても・・・

 きわめて単純にいうと、”ファイナンス理論”ってのは、上のような会話を高度な数学と膨大なデータを使って延々計算するような側面があります。
 理論の高度化によって緻密な計算式が構成されたこと、コンピュータの発達により膨大な計算が短時間でできるようになったこと、インターネット等によりデータが入手しやすくなったことなど、さまざまな環境変化が働いてかなりのレベルで高い精度の結果を得ることが出来るようになりました。

 で、翻って、上記の賭けをどう考えますか?
 実は5250円っていうのもかなりムリな前提条件で計算しています。まず、次回のテストが前回のテストと同じ分布になるとは限りません。これは過去のデータをいくら積み重ねても、”こうなりそう”度合が上がりはしますが、”必ずこうなる”といった保証をするものではないです。
 そもそも、標準偏差は正規分布を前提としていますが、成績なんてランダムウォークしないので、きれいな正規分布の結果にならないのが当たり前(*3)。
 では、まったくムダなことをやっているかと言うとそうではなくて、得をする(損をしない)ためには、この程度は必要という数字を出さないと取引が成立しないからです。でも、小数点以下の数字まで出されることに意味があるかというとそればまた別。往々にして細かい数字を出されると”きっちり計算しているので安心”と思い込んでしまうことのほうが問題であります。

 さて、おかんとたいちろ~さんの賭けの正しい答えは

  そんな計算をやってるヒマがあったら、ちゃんと勉強する

 であります。

 表題の”金採掘者を掘ることがゴールドラッシュの成功法則だ”というのは、金儲けをしたのは金を掘り当てて一発当てようという人ではなくて、金採掘者にジーパンを売ったリーバイ・ストラウス(*4)のこと。まあ、まじめに働くのが一番ということで・・

 ”金融危機の本質は何か”のスタンスは、ファイナンス理論はあくまで”道具”であって良い使い方をすると役に立つが、間違った使い方をするととんでもない結果を引き起こすということ。原子力なんかで語られる技術のあり方と同じです。
 ”行動ファイナンス”の本なんかと比べるとやや古典的な印象はありますが(*5)、わかりやすい本ですので、ご興味のある方はどうぞ。

《脚注》
(*1)PDだLGDだ内部格付手法だと
 PG :倒産確率(Probability of Default)
     企業が一定期間に倒産する確率のこと
 LGD:倒産時損失率(loss given default)
     倒産した時にどれぐらい回収できない損失が発生するかの確率
 企業に貸しているお金が、倒産した時にどれぐらい返ってこないかの比率は
  PD×LGD(倒産確率×倒産時損失率)
 で決まります。倒産しなさそうな大企業(しないわけではないです)では小さくなるし、担保が少なければ担保を処分して回収する部分が少なくなるので大きくなります。
 これらの確率を金融機関の中で算出するのが内部格付手法。
(*2)だいたい5250円以上のお金を貰えばこの賭けはプラスになります
  貰う金額×16%(勝つ確率)-払う金額×84%(負ける確率)> 0
 を満たせばよいので、この金額になります。
(*3)そもそも、標準偏差は正規分布を前提としていますが~
 正規分布は結果の曲線がきれいな釣鐘型になることを前提としていますが、実際に子供の持ってきたテスト結果を見ると、ふたコブになってたりします(できる子と出来ない子が二極分化しています)
 ランダムウォークはサイコロのように、前回出た目と次に出る目にまったく関係がなく、ランダムに発生する状態。前回のテストで30点しか取れなかったヤツが次のテストで100点とることがありうると言ってますが、実際には(まったくないとは言いませんが)まずありえないと考えるのが常識的な判断。
(*4)リーバイ・ストラウス
 アメリカのアパレルメーカー”リーバイ・ストラウス社”の創業者。
 金採掘者のために、破れにくいスボン”ジーンズ”を作って儲けました。
(*5)”行動ファイナンス”の本なんかと比べると~
 ”行動ファイナンス”は、ファイナンス理論に心理学的なアプローチを加えた学問。別に古典的だから悪いという意味ではなく、基礎をちゃんと抑えておかないとこっちも理解できないので、両方理解する必要があります。

青春の二人で一つのコート(長門有希ちゃんの消失/サボテン)

 ども、孤高の本の読み手、たいちろ~です。
 最近、気のせいか文芸部を舞台にした小説をよく読んでいる気がします。”涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ(*1)”とか、”文学少女シリーズ(*2)”とか、”青年のための読書クラブ(3)”とか。
 今の高校で、そんなに文芸部ってはやっているんでしょうか? もっとも、みんな部員不足のようですけど。
 ということで、今回ご紹介するのは文芸部員の登場する”涼宮ハルヒの憂鬱”から、アナザーストーリーの”長門有希ちゃんの消失”であります。


0075


写真はたいちろ~さんの撮影。近所の園芸店のサボテンです。けっこうかわうい。


【本】長門有希ちゃんの消失(ぷよ 角川書店)
 県立北高校でただ一人の文芸部員の長門有希、おかんなキャラの朝倉さん、近所の世話焼きなおばちゃん化している先輩の鶴屋さん、あいかわらず突っ込み役のキョン。本編”涼宮ハルヒの憂鬱”のキャラを別設定で描いた”ぷよ”版コミック。
 一昔前なら、完全に同人誌ネタです。
【花】サボテン
 サボテン科に属する植物の総称で、その多くが葉、茎または根の内部に水を貯蔵する多肉植物。まん丸や平べったい形とか、とげがあるとか、特異な印象の植物ですが、それゆえかけっこうマニアが存在するとのこと。
 花言葉は、これも以外なことに”温情、温かい心、内気な乙女”など。


 ”長門有希ちゃんの消失”に出てくる長門さんは、本編とちがって、キョンくんに憧れる普通の内気な高校生。てれたり、落ち込んだりしてるのがかわいい人です。
 同じくぷよの”涼宮ハルヒちゃんの憂鬱(*4)”では、完全にいじられキャラのあちゃくらさんが、ここでは完全にいじり側のキャラに。本編では壮絶なバトルを繰り広げるお二人ですが、本作品では親友という設定です。
 本編の長門有希は、サボテンほどトゲトゲしていませんが、ちょっと近寄りがたいキャラ。でもこんな切り口の作品にもできるんですね。サボテンの花言葉がその外見から想像できないような”内気な乙女”ってあるように、けっこう意外な展開ではあります。

 さて、”長門有希ちゃんの消失”の第一巻でのメインエピソードは文芸部員を中心にクリスマスパーティを開くお話。キョンくん一人に美女4名ととってもうらやましいぞっと。
 この中で印象的だったのが、一人外で佇む有希ちゃんに、キョンくんがコート(ただし、サンタさん仕様)をかけるシーン

  キョン:ちょっと休んだら部室戻るからな。
      こんなトコに座ってても、風邪ひくだけだしな
  有希 :これ、いいの・・・
  キョン:羽織っとけ、寒いし
  有希 :無理しないでこれ着たほうが
  キョン:いやでも、それだと格好がつかないから
  有希 :じゃ・・ じゃあ
       (そういって、一つのコートをふたりで羽織る)
  キョン:あの、長門さん?
  有希 :何?
  キョン:これ、恥ずかしくないか?
  有希 :うん、でもあったかい

 いや、いいですよね、若いって・・・
 このシーンを見て、思い出したのが伝説のスターカップル山口百恵と三浦友和

 グリコのセシルチョコレートのコマーシャルで、たぶん1970年代の後半ですからリアルタイムで見たことある方は、それなりにご年配のはず。でも、当時の高校生にとって、このシチュエーションはとっても憧れでしたねぇ。
 ”寒くないかい”といって、さりげなく百恵ちゃんにセータをさしかける友和、やせがまんをしてますが、このさわやかさこそが青春スターの証です。
 高校時代の友人みんなで遊びに行った時に、このマネが出来たときは嬉しかったですねぇ(遠い目・・・)

 まあ、今やったら”おじさん臭い!”とかいって、コートごとポイ捨てされるんでしょうけど。まあこういった、昭和の時代の香のするラブコメってのもいいもんかもしれません。
 本編を読んでいないと内容はわかりにくい話ですので、ぜひあわせてどうぞ。

 今回のおまとめ

  「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

     ”サラダ記念日(*5)”より

《脚注》
(*1)涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ
 ”宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと”を目的に結成されたSOS団団長、涼宮ハルヒを中心とした非日常的学園ドラマ。ここでの長門有希は唯一の文芸部員にして、無口な対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。
(わからない人はスルーしてください)
(*2)文学少女シリーズ(野村美月 ファミ通文庫)
 食べちゃうぐらい文学を愛している遠子先輩(読む専門)と、元美少女覆面作家(♂)の井上心葉(書く専門)の分業体制の確立した聖条学園文芸部の活躍を描くライトノベル。
(*3)青年のための読書クラブ(桜庭一樹 新潮社)
 名門女学校「聖マリアナ女学園」の読書クラブの歴史を描いた桜庭一樹の連作小説。
 ここに登場する文芸部の中で唯一アクティブな活動をするクラブです。(涼宮ハルヒシリーズでアクティブに行動するのはSOS団のほうで、長門有希の所属する文芸部はな~んもしていません)
(*4)涼宮ハルヒちゃんの憂鬱(ぷよ 角川書店)
 ”涼宮ハルヒの憂鬱”のキャラをベースにした4コマギャクマンガ。シュールなボケをかます有希ちゃんと、ちっちゃなあちゃくらさんの掛け合い漫才が笑えます。
(*5)サラダ記念日(俵 万智 河出文庫)
 1987年に発表された時は、古い短歌という形態で表現される新しい感性って、衝撃的でした。出版されてすぐに買いましたが、よもやあんなに大ブームになろうとは思いませんでした。
 あまりに気に入ったので、会社の女の子に貸してあげたら
  ”あんたのキャラには合わん!”
 とつっこまれましたが。

雑木林を見て、パソコン業界のことを考えてみる(スティーブ・ジョブズ革命/植生遷移)

 ども、人生沈んだりもぐったりのおぢさん、たいちろ~です。
 栄枯盛衰、七転び八起きといい時もあれば悪い時もあるのが人生。とは言いながらいったん沈むと浮き上がってくるのがたいへんなのも事実です。再ブレークした有吉さん(*1)もまたどっかいっちゃいそうだし・・
 そんな中で、華々しい再ブレークをしたのが、今回ご紹介するスティーブ・ジョブズであります。


0440


写真はたいちろ~さんの撮影。近所の森林公園の林。すらっと伸びているのがヒノキ、下はアオキや笹なんかが育っています。


【本】スティーブ・ジョブズ革命(村山 恵一 日本経済新聞出版社)
 サブタイトルは”IT帝国の興亡”。ジョブズはアップルの創立者の一人にして、ピクサー(*2)のCEO、今やiPodなど新しいビジネスの創造者でもあるコンピューター業界のカリスマ。アップル創立のころの本も面白いですが、これは最近のアップルや、マイクロソフト、ヤフー、グーグルなんかを交えたビジネス書です。
【自然】植生遷移(しょくせいせんい)
 植物が土地で生育することによる、環境形成作用が主な原因となり、時とともに場所の環境が変化して行く現象を植生遷移という(Wikipediaより)


 話は突然飛びますが、学校で”植生遷移”って習ったの覚えていますか?
 簡単にまとめるとこんな感じです。

  1)まず、コケ類が生えてきて、それを土壌にして草が生え始める。
  2)背の高い草が生え始めて草原になる
  3)やがて背の低い木による低木林が形成される
  4)陽樹という生育に光が多量に必要な木が大木となって森林が形成される。
  5)森林が出来ると、その下は湿度が高く光の量が少ないので、
   光が少なくても育つ陰樹林になる。

 この遷移のポイントは4)と5)。陽樹の下は日が射さないので陽樹は育たないが、陰樹は日が射さなくても育つので、最終的には陰樹が優勢になります。このような陰樹林は育っている木は変わらなくなるので、これを極相(クライマックッス)と言います。
 雑然と木が生えているような雑木林でも、ちゃんと大自然の理にそって動いているんですね。

 なぜ、長々と植物の話を書いているかというと、これってパソコン業界にと~ってもよく似てるんです。
 まず、今考えると何の役に立つのかわからないようなコケ類のごときワンボードマイコンが登場し、その後、いろんなメーカーからパソコンが雑草のように販売されます。富士通のFM、シャープのMZ、そしてNECのPC98etc,etc。その中で日本という環境にもっとも適応したのが、一世を風靡したPC98シリーズ。でも、このパソコン林の中で他のパソコンと関係のなく独自の進化をとげたのがアップルのマッキントッシュです。
 やがて、DOS-Vの登場によって日本でのPC98の優位性がなくなるとデル、コンパック、IBM等の外来種を含めた陰樹林が形成され、外見上は複数メーカによる一定のシェアを分け合うような安定期に入ります。この中で最も大木に育ったのが、ビル・ゲイツのマイクロソフト。つまり、ビジネスの主体としては、新しい分野のモノが巨木に育ったってこと。しかも、ネットスケープのブラウザビジネスを枯れ死させるなど、周りの陽樹を駆逐していく点もよく似ています。

 このように見ていくと、環境に合った植物が優位性を確保して相を変えていくように、ビジネス環境に最適化したメーカがその時代のトップに立っていくというまさに相似形のように思われます。まあ、どの産業も同じようなモンでしょうが、あまりに環境変化が早く際立っているのが、この業界の特徴でしょう。

 で、アップルはこの間なにをしていたかと言うと、ジョブズを放逐して以来、なかずとばずというか、一定のマーケットを確保しつつも拡大できない状態にはまり込んでしまいます。ここから抜け出したのが、本書で書かれているジョブズのアップルへの復帰。

 iMacによるマックブランドの復活
 iPodとiTunesによる、”音楽を聴く”というスタイルの変革
(*3)
 iPhoneによる、新しい携帯電話のスタイルの提案(*4)

 などにより今日のアップルの盛隆を決定づけました。

 植生遷移の戻ると、ここにも”ギャップダイナミクス”というのがあります。安定している極相林が、大木が倒れて日照条件が変わるなどして、新しい植物が出てくる状態のこと。ここででてくるのをパイオニア的樹木と言います。
 パソコン業界でのギャップが”インターネットの爆発的普及”、パイオニアがグーグル、ヤフー、アマゾンなど、ネットのコンテンツや、インフラを提供するプレーヤー。現在のアップルもどちらかというとこのカテゴリーに近いかも。

 強引にまとめると

  

ハードウェアの時代->ソフトウェアの時代->ネットワーク・コンテンツの時代

 環境に最も適応した代表選手がハードウェアのIBM,ソフトウェアのマイクロソフト、ネットのグーグルとアマゾンあたりでしょうか。アップルはそれぞれの時代でうまく適応した稀有な例なのかもしれません。

 これから先はわかりませんが、あえて予想するならバーチャルの時代3D技術(*5)とサイコミュ(*6)あたりが普及レベルになれば、また新しいプレーヤーが登場するかも・・・
 なんてことを、この本を読みながら考えてしまいました。

《脚注》
(*1)有吉さん
 元猿岩石の有吉 弘行(ありよし ひろいき)のこと。
 1996年、”進め!電波少年”のヒッチハイクで大ブレイク、その後低迷期を経て、あだ名芸人で再ブレーク。一発やならぬ二発屋。
(*2)ピクサー
 1986年に、ジョブズがルーカスフィルムのコンピュータ関連部門を買収して作った会社。現在はディズニーの完全子会社としてディズニーのアニメ部門を支えています。
 詳しくは、”メイキング・オブ・ピクサー”でどうぞ。
(*3)”音楽を聴く”というスタイルの変革
 この変革の先駆者がソニーのウォークマン。”音楽は家で聴くもの”といったライフスタイルから”外でも音楽を聴く”ものに変えました。1980年代初頭のことです。
 ウォークマンは”どのカセットテープを持って行こう”という感覚だったのに対し、iPodは”自分のコレクションをまるごと持って歩く”ことを可能にしました。
(*4)新しい携帯電話のスタイルの提案
 あと、おサイフ携帯機能をくっつけてくれたらな~~ これがネックでまだ手が出ずにいます。
(*5)3D技術
 つくば博(1985年)の富士通パピリオンで上映しているぐらいなので、割と古くからある技術ですが、当時は赤青の2色ですら汎用大型コンピュータが必要でした。先日、”カールじいさんの空とぶ家”の3D版を映画館で見ましたが、かなりのレベル実用化されています。
(*6)サイコミュ
 ガンダムシリーズに登場する脳波で機器を制御するシステム。ここまですごくはありませんが、ブレイン・マシン・インタフェースとして、まじめに研究されています。

ボンカレー的、貧困なる精神(我が心はICにあらず/セリ)

 ども、あいかわらずぐだぐだブログを書いているおぢさん、たいちろ~です。
 ブログというものは内容はともかく、まがりなりにも”書く”という行為なわけですが、やはり影響を受けた作家というものが存在します。一人目はマンガ家の”いしかわじゅん(*1)”、二人目が今回ご紹介する”小田嶋 隆”であります。
 テクニカルライター(*2)の草分けの人ではありますが、屈折していて、不平家で、オタクで、斜に構えていて、毒舌で、一言でいうとヤなヤローなんですが、この男が後に天下の”ASAHIパソコン”(*3)のコラムニストに成り上がろうとは・・・
 でも、面白いんですよ、この人の書く文章って


0387


写真はたいちろ~さんの撮影。近所のスーパーで売っていたセリです。


【本】我が心はICにあらず(小田嶋 隆 光文社文庫)
 ”遊撃手(ラ・ポート(*4))”、”月刊BUG NEWS(ビー・エヌ・エヌ)”に掲載されたエッセイを集めた本。オリジナルのビー・エヌ・エヌ版の出版は1988年。
 ”ハッカーの花かんざし”、”ハッカーの金銭感覚”、”パソピア7からの発想(*5)” など、エッセイの題名からして、内容はそんな話です。
 ちなみに、”我が心は石にあらず(*6)”の誤植ではないので念のため。
【花】セリ(芹)
 春の七草の一つ。1月ごろにはスーパーマーケット等で束で売っています。川のそばなどに自生しているようですが、ドクセリ(日本三大有毒植物の一つ)と似ているので注意が必要。


 ここに掲載されているエッセイは1985年ごろと、パソコン界がカンブリア爆発(*7)を迎えた時代に書かれたもの。やっと、MS-DOSやソコン通信(ただし300~2400bps)の出始め、Windowsの普及はまだまだ先(*8)。そんな時代はまさにハッカーの黎明期でもありました(*9)。でも、ハッカー感ってそのことからあんまり変わっていないんですよね。そんな中でも、今でも通用しそうなスルドイ分析を”ハッカーの金銭感覚”から引用。

 私の考えによれば、貧困は単なる経済生活の一状態を示す述語だが、貧乏は文化的、生理的、精神的な背景までをも含む、より包括的な概念だ。それ故、貧困は遺伝しなくても貧乏は遺伝するのである。
 もっと分かりやすく言えば、貧困とは昼食にボンカレーを食べるような生活のことで、貧乏というのはボンカレーをうまいと思ってしまう感覚のことである。ついでに言えば、中流意識とは、ボンカレーを恥じてボンカレーゴールドを買おうとする意思のことだ。
(*10)

 どんな経済書より、これほど貧困と貧乏をテキカクに表わした記述はありませんぜ!
 ちなみに私はセブンイレブンの冷凍エビピラフ、肉のハナマサの”プロ仕様激辛カレー”(ともに100円)を愛食しておりますが、なんか負けた気がする・・・

 余談ですが”貧乏”というキーワードで花言葉を探すと”セリ”ってのが引っかかってきます。”清廉潔白”てのが多いんですが、”貧乏だが高潔”というのも。まあ、名前が芹(セリ)だけに、鴨(カモ)にされているのかもしれません(*11)。

 実はこの本、オリジナル版が本箱のどっかに入っているはずなんですが見つからなくて、B○○K○FFの105円棚で先日やっと見つけてました。もちろん絶版ですが、Amazon.comで中古品なら2,000円近くするんですぜ、これ。もし古本屋で見かけたら絶対に買いです。
 できれば、岩波文庫で復刊してもいいぐらいの名著なんだがな~。まっ、無理だと思うけど。

《脚注》
(*1)いしかわじゅん
 一般の人にはNHKの”BSマンガ夜話”のコメンテーター・漫画評論家と思われているかもしれませんが、本業は漫画家。初期の”憂国”、”約束の地”、”至福の街”や、週刊プレイボーイに連載されたトレンディ風マンガ”東京物語”など名作が多いんですよ、マイナーだけど。
(*2)テクニカルライター
 パソコン黎明期に雨後の竹の子のごとく誕生したカタカナ職業の一つ。”わかりにくいパソコンのマニュアルをわかりやすく解説する本”を作るというお仕事。当時のマニュアルがいかに不親切な作りだったかがわかりますが、最近はほとんど(本の形では)マニュアルを添付することすら放棄しているんだから、まだマシか?!
(*3)天下の”ASAHIパソコン”
 1988年(あの『AERA』創刊の年だぜ、おい)、に天下の朝日新聞社から発刊されたパソコン初心者向け雑誌。技術情報より、時事記事やコラムのほうが面白かったです。2006年に休刊。
(*4)ラ・ポート
 アニメ雑誌『アニメック』や投稿雑誌『ファンロード』を出版していた会社といえば、その筋の方なら分かっていただけるかと・・・
 過去形なのは、会社自体は2003年に倒産したから。
(*5)パソピア7からの発想
 ”パソピア7”は1983年に東芝から発売されたホビー用8ビットパソコン。コマーシャルキャラクターはお元気だったころの横山やすし師匠・木村一八親子
 CPUはザイログのZ―80A。詳しいスペックは”高島平パソコン倶楽部”のHPでどうぞ。知っても役には立たない知識ですが。
(*6)我が心は石にあらず
 高橋 和巳の小説。”邪宗門”や”悲の器”を書いた小説家でもあります。この人の本読んだことないので詳しいことは割愛。
(*7)カンブリア爆発
 ”カンブリア爆発”とは、およそ5億4200万年前~5億3000万年前に突如として今日見られる動物が登場した現象のこと。その理由は新井素子の”ネプチューン”に詳しい
 パソコン界でも、この時期前後から”マイコン”と呼ばれる今思うとおもちゃ並みの機能から、ディスプレイ付き、BASIC内臓とまがりなりにも個人が遊べるレベルに進化し、いろんなメーカーから提供されるようになりました。
(*8)Windowsの普及はまだまだ先
 WindowsがデファクトになったVer3.1は1992年の登場。インターネットの拡大とともに売れたWindows 95は1995年の発売であります。
(*9)ハッカーの黎明期でもありました
 それまでは、ざっくり感でいうと技術者の時代。あこがれのVAXで遊ぶとか、TK80にアセンブラでプログラムを組むとか・・
 説明すると長くなるので、スルーしてください。
(*10)貧困とは昼食にボンカレーを食べるような生活のことで~
 別にボンカレーに恨みがあるわけではありませんので、念のため。
 ちなみに、1985年当時のボンカレーの値段は分かりませんでしたが、2010年現在ではボンカレー(沖縄限定)、ボンカレーゴールド21とも168円(税込み)です。
(11)名前が芹(セリ)だけに、鴨(カモ)にされている~
 新選組の悪役、芹沢鴨(せりざわかも)のダジャレです。単にそれだけです。申し訳ない。

植木屋さん、鯉の洗いたべてか(青菜/南三陸潮騒まつりの鯉のぼり)

 ども、カキ、ホタテ大好きおぢさん、たいちろ~です。
 私んとこのゴールデンウィークの恒例行事に”南三陸潮騒まつりにホタテと牡蠣を食べに行く”というのがあります。ど演歌の流れるメインステージに、大漁旗のディスプレイに地元の水産業者による出店にと、決して吉永小百合が訪問するようなイベントではありませんが(*1)、なんでかほぼ毎年行ってます。
 ホタテ、牡蠣とも冬が旬なので、シーズン的にはほぼ最後になりますが、美味しくてとってもリーズナブルに食べることができます。


0325


写真はたいちろ~さんの撮影。南三陸潮騒まつりのこいのぼりです。


【DVD】青菜(あおな)
 ご隠居さんと仕事が植木屋さんが、家でお酒と鯉の洗いをあてに一杯飲むお話。青菜もあったはずと奥さんに頼みますが、青菜が切れていて・・
 元々は上方ネタの落語で、笑福亭仁鶴、桂枝雀なんかで聴きました。
【旅行】”南三陸潮騒まつり”の鯉のぼり
 ”南三陸潮騒まつり”は毎年ゴールデンウィークに神割崎キャンプ場(宮城県本吉郡南三陸町)で開かれるイベント。2010年は5月3~5日です。何故か、必ず鯉のぼりが道の上に泳いでいます。
 近くに”神割崎”という岬がスパっと断ち割られた景勝地もありますので、一度遊びに行ってみてください。(南三陸町観光協会のHPはこちら


 どうもゴールデンウィークに必ずここに行きたくなるのは、鯉のぼりがあることでしょううか? 一般の家で大きな鯉のぼりが少なくなっている昨今、勇壮に泳ぐ鯉のぼりに季節感を感じてしまうのかもしれません。

 で、鯉のぼりをみながら牡蠣なんぞを食べていると、どうも”鯉の洗いを食べてみたい”と思うのが人情(人情か?) ということで、今回のお話は落語から”青菜”であります。

  ご隠居:御苦労さんじゃな。植木屋さん、こっち来て一杯やらんかいな。
      どや、柳蔭飲まんか(*2)。
  植木屋:こら、えらいありがたいことでおます。うわあ、いい酒でんなあ。
  ご隠居:そうか、そうか。では鯉の洗いも食べてか。
  植木屋:へえっ!こらえらいもんを!鯉ちゅうたら、もうし、大名魚言うて、
      わたいらのようなもん、滅多に食べられまへんで。

 鯉の洗い”とは、鯉をおろして湯通しの上、冷水で締めたもの。しょうゆ、酢味噌などでいただきます。この落語を聴いて、”鯉の洗い”を食べて一度食したことがありますが、大変美味でありました。

 で、青菜の話、続きます。

  ご隠居:植木屋さん、青菜も食べてか。
      奥や!奥や!。青菜を持ってきておくれ。

       (その後、奥さんが青菜を持たずに出てきて)
  奥さん:鞍馬から牛若丸が出でまして名も九郎判官
  ご隠居:ああ、義経。

 奥さんのセリフは”名(菜)も九郎(食ろう)判官”=青菜は食ってしまってありませんという意味。ご隠居の”義(よし)経”はよしよしということです。
 まあ、お断りのしゃれっけでいうと、太田道灌のやまぶきの話(*3)と並ぶ名文句でしょうね。落語としては、ご隠居を真似て失敗する植木屋さんってのがオチになります。

 ま、鯉のぼりを見ながら食べ物を連想するってのはおかしな感覚しれませんが、牡蠣やホタテと醤油のこげる香ばしいかおりが食欲をくすぐるもかもしれません。
 それはそれとして、どうも貧乏花見とか、蛇含草(*5)とかB級グルメっぽい話の多い落語の演目の中で、これは美味しそうな食材の出てくる話
 笑福亭仁鶴師匠の話も捨てがたいですが、押入れの中から飛び出してくる植木屋のおかみさんのしぐさがユニークなので、DVDの桂枝雀師匠版でどうぞ。

《脚注》
(*1)決して吉永小百合が訪問するようなイベントではありませんが
 JR東日本の”大人の休日倶楽部”のコマーシャルのことです。吉永小百合が訪れたというだけで行って見たいとおもうのはおぢさんの証拠でしょうか。まあ、入会資格が50才以上だし・・・
(*2)柳蔭飲まんか
 柳蔭(やなぎかげ)は甘味の強いみりんに焼酎を加えて甘味を抑え、飲みやすくしたものだそうです。飲んだことはありませんが、とっても美味しいらしいです。
(*3)太田道灌のやまぶきの話

七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき

 雨宿りをした太田道灌に蓑がない意図(蓑ひとつだに無きぞ悲しき)を伝える逸話。
 やまぶきの話はこちらのHPでどうぞ
(*4)貧乏花見
 貧乏長屋でお花見に行くことになりましたが、お金が無いので食べモノはみんな代用品。卵の巻き焼きは沢庵、尾頭付きの魚はダシジャコ、カマボコはご飯のおこげ(釜底)・・・
 シャレとバイタリティで楽しむ貧乏人たちをお楽しみください
(*5)蛇含草(じゃがんそう)
 餅が大好きなご隠居が、食べすぎた餅を消化をするためにこの蛇含草を食べると・・
 落語にしては珍しいブラックなオチの話。東京落語では”そば清”という餅がそばになった話もあります。

資産運用には役に立たない話ですが・・・(シティバンクとメリルリンチ/帰化植物)

 ども、相変わらず金欠病に苦しむおぢさん、たいちろ~です。

  資産価値、試算するほど資産なし

 そろそろ、年金生活をまじめに考えなきゃな~~という年になってきました。投資信託だとか、FX(*1)とか色々ありますが、相変わらず資産があるわけじゃなし。まあ、どんな金融機関と取引をすれば良いかということで、今回ご紹介するのは、外資系の金融機関をとりあげた”シティバンクとメリルリンチ”であります。


0052


写真はたいちろ~さんの撮影。自生しているのでネームプレートはないですが、セイヨウタンポポだと思います。


【本】シティバンクとメリルリンチ(財部 誠一、講談社現代新書)
 全米最大の不良債権を抱えたシティバンク、巨額の赤字を計上したメリルリンチは、いかに苦境を乗り越え、世界のトップ企業となったか。日本の個人資産 1200兆円市場を狙う両社の経営戦略を徹底解剖(Amazon.com「BOOK」データベースよりそのまんま転記)
【花】帰化植物
 単に国外から入った植物の意味ではなく、人為的な手段で持ち込まれた植物のうちで、野外で勝手に生育するようになったもののことである(Wikipediaより)。
 なので、入ってくるには人間が介在していて、広がるには人間か介在していないということみたい。セイヨウタンポポ(*2)、セイタカアワダチソウ(*3)、オナモミ(*4)などが有名。


 さて、世界で最も有名な銀行”シティバンク”と、世界で最も有名な証券会社”メリルリンチ”ですが、今回はメリルのほうの話がメインです。
 メリルリンチ創業者であるチャールズ・メリルは小口投資家がもっと取引に参加できるようにと考えた”リテール指向”の人。”金融機関のデパートたれ”ということで、マスマーケッティングによる広告と大量販売、コスト削減、投資家教育なんかを進めました。
 その後、事業を”法人顧客グループ、米国個人顧客グループ、国際個人顧客グループ、資産運用フループ”に再編成、さらに”よりグローバルに、よりローカルに”をスローガンに世界をアメリカ、カナダ・ラテンアメリカ、ヨーロッパ・中東・アフリカ、オセアニア、東南アジア、日本”の6地域に分割。この中で日本を担当するのがホールセールの”メリルリンチ日本証券”とリテールの”三菱UFBメリルリンチPB証券”です(*5)。
 メリルリンチの経営理念は下記の5つ
  顧客重視(Cliant Forchus)
  個人の尊重(Respect For The Individual)
  チームワーク(Teamwork)
  責任のある企業市民(Resiponsibul Citizenship)
  誠実さ(Integrity)

 これに対し日本の金融機関がとったのは提携戦略。日本興業銀行と野村證券、日興證券とトラベラーズ、住友銀行と大和證券、三菱グループ連合(東京三菱銀行/三菱信託銀行/東京海上/明治生命)、東海銀行とあさひ銀行、第一勧業銀行とJPモルガン、富士銀行と第一勧業銀行・・・

 と、ここまで読まれて”あれ?!”と思われた方は正解。実はこの本、1999年発刊とほぼ、10年近く前のものなんですよね。
 第一勧業銀行/富士銀行/日本興業銀行統合してみずほフィナンシャルグループに。
 東京三菱銀行/三和銀行/東海銀行は三菱東京UFJ銀行に。
 日興證券はシティグループ(シティコープとトラベラーズ・グループの合併会社)を経て現在は三井住友フィナンシャルグループの傘下に。
 今回のお話であるメリルリンチですら、2009年にバンク・オブ・アメリカに買収されています。

 こうやって見ると、金融機関にとって激動の10年だったんだな~と分かります。でも、日本の金融機関再編成を促したバブル崩壊といい、アメリカのサブプライム問題といい(*6)、やってることはあんまし変わっていないなぁというのが感想。

 もう一つ変わらないと思ったのは顧客サービスかな。投資信託の一般化とかはあったものの、本書で語られるような外資系金融機関による夢のような(ただしお金持ちにとって)サービスが普及したとは思えん・・・

 ところで、上にあるセイヨウタンポポですが、在来種に比べて生育可能場所が多くて繁殖力が高いから広がったようですが、こと金融機関に関して言うと在来種の勝ち。日本の金融機関のほうが生命力(=顧客サービス)が強かったのか、この10年間で日本というマーケットの魅力がそんなにないことがわかって、外来種がやる気をなくしなのか・・・

 本書は、現時点での資産運用を考えている人にはあまり役には立ちませんが、10年前にどんなことを言っていたかを振り返るには良い本かも。つまり、理想を語るほどには現実はあんまし変わっていのかなぁというとが認識できます。メリルリンチの経営理念なんて、今、日本の金融機関が作っても同じこといいそうだし・・・
 2020年に2010年に書かれた本を読み返して”多少は良くなった”と思えるようにするのは、おぢさん世代の責任かもしれません。

《脚注》
(*1)FX
 外国為替保証金取引のこと。為替差益、金利差益にレバレッジという手持ち資金よりはるかに大きい金額の取引ができることから、先行き見通しが当たると大儲け、外すと大損というリスクがあります。
(*2)セイヨウタンポポ
 タンポポは日本に生育していた在来種と外来種(セイヨウタンポポ)があります。在来種は開花時期が春の短い期間で、生育場所も限られていることから、よく見かけて夏でも咲いているのは概ねセイヨウタンポポだそうです。
(*3)セイタカアワダチソウ(背高泡立草)
 キク科アキノキリンソウ属の多年草。名前のとおり2m近くあるわ、毎年出てくるわと雑草の代名詞のような草ですが、元々は明治時代末期に園芸目的で持ち込まれた帰化植物。もっとも、大繁殖したのは第二次大戦後のアメリカ軍の輸入物資に付いていた種子によるものだそうです。
(*4)オナモミ
 カギ状のとげのある実をつける雑草。年配の方には”ひっつき虫”といった方がメジャーかも。ガキのころ、これをセーターなんかに投げつけて遊んだものです。
(*5)”メリルリンチ日本証券”と~
 前身は1997年に経営破たんした山一證券。これとて、最近の新入社員にとっては小学校時代の話ですから、あっという間に歴史化してるんでしょうね。
(*6)サブプライム問題といい
 バブル崩壊と発生メカニズムは違いますが、根本には”不動産価格はいつまでも上昇しつづける”という幻想があったことは共通だと思うんですがねぇ。

« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ