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結果が悪ければ、それまで天使が味方をしても結果は変わらないない(「世界大不況」は誰が引き起こしたか/千両)

 ども、今年から三重生活でお金がないあるおぢさん、たいちろ~です。
 娘が大学で下宿生活を始めました。行きたい大学があるというので”え~よ~”と言ったものの、実際に始まってみるとやっぱりお金がかかります。こうなってくると宝くじでも当たんないかとか、どっかに千両箱(*1)が落っこちていないかと考えてしまいます。
 ということで、今回ご紹介するはお金持ちの人たちの栄光と挫折”「世界大不況」は誰が引き起こしたか”であります。

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 左の写真はたいちろ~さんの撮影。園芸店にあった”千両”です

【本】「世界大不況」は誰が引き起こしたか(ジョン・カシディー、講談社)
 サブタイトルは”米国「金融エリート」の失敗”。”ニューヨーカー”に発表されたニーダホッファ、オニール、バーナンキの3人の人物像をまとめたもの。
 サブプライム問題からリーマンショック後の現在に至る世界大不況期の中心にいたエリートたちの行動を描いたノンフィクション。
【花】千両(センリョウ)
 センリョウ科の常緑小低木。冬に赤い果実をつけ美しいのと、名前がめでたいの正月の縁起物になります。お正月前後になると、万両とともに園芸店ではよく見かけます。
 花言葉は”可憐、恵まれた才能、富貴、裕福、利益”など。

 この本に登場する3人のプロフィールは、

〔ビクター・ニーダフォッファ〕
 ジョージ・ソロス(*2)のファンドにも参加した、世界一のトレーダー
 (サブタイトル”投資アーティストの失墜”。2007年10月15日号)
〔E・スタンレー・オニール〕
 メリルリンチの前会長兼CIO。
 (サブタイトル”サブプライム危機の容疑者”。2008年 3月31日号)
〔ベン・バーナンキ〕
 第14代Fed(*3)の議長(~2006年2月)
 (サブタイトル”金融メルトダウンの解剖”。2008年12月 1日号)
     ※年度は”ニューヨーカー”の掲載号

 ”「世界大不況」は誰が引き起こしたか”というフーダニット(Whodunit 犯人は誰か)のような表題ですが、内容は発生した事象に対し、どのように考え、どのように行動したかといういたってクールな内容。それに現在のような国際的に密接に連携している時代では”特定個人を犯人扱いする”ような簡単な構図ではないことがよくわかります。

 「世界大不況」のトリガーとなったサブプライムローンですが、本来は不動産担保証券(*4)のバリエーションで、
 ・銀行は住宅ローンの返済リスクを投資家に転化できる
 ・証券の販売手数料が入る
 ・投資家は購入した債権から利益を得られる
 ・サブプライム(信用度の低い人)も住宅が購入できる
と、利用方法さえ間違えなければ、それ自体が悪の権化のようなもんではありません。ところが、どっかでこの運用を間違える人たちがでちゃうんですね。
 メリルリンチのオニール会長の場合もこれ。オニール自身は、会社を筋肉体質に変え、数々の会社を買収するなど積極的な経営姿勢で、飛躍的に増大させた人。オニールに対する1億6200万ドルの退職金はこの功績に対するもので、住宅ローン関連でメリルが80億ドルの赤字を出した直後でなければ、ここまで問題視されなかったかもしれません。やっかみはあるけど・・・

 で、何が問題だったかというと、全体のコントロールとリスク管理が”結果的に”上手くいかなかったこと。優秀なトレーダーがいなくなったとか、報告がちゃんと上がっていなかったとか、片方で証券化を進めながら、もう片方で証券をいっぱい買っていたとかのちぐはぐがあったりとか。でも、オニール一人が方向性を間違えたとは言いにくいでしょうね。なんせ、みんなやっていたんだから。

 その後に、”結果的に”尻拭いをさせられることになったのが、Fedのバーナンキ議長。「金融の神様」といわれたアラン・グリーンスパン議長(*5)の後釜といい、金融緩和政策の残したサブプライム問題の影響をもろかぶりした間の悪さといい、ある意味めぐり合わせの悪い人。
 初期におけるサブプライム問題への危機感の薄さとか(*6)、AIGとリーマンへの対応がちぐはぐとかいろいろ非難を浴びてはいますが、その後の積極的な関与でそれなりに安定方向に持っていっています。

 三者三様に栄枯盛衰、毀誉褒貶はありますが、共通するのは”結果”に対する責任はあること。企業トップの給料には結果責任が入ってるから、あんだけ高いお金をもらえるんだと思いたいです。
 印象的なのが本書で最後に引用されているリンカーンの言葉

  私は知る限り、できる限りの最善を尽くし
  それを最後の最後までやり続けるつもりだ
  結果が良ければ、私への非難は何の意味も持たない
  また、結果が悪ければ、
  たとえそれまで10人の天使が私に味方してくれていたとしても
  その結果は変わらない

 赤い鳥が赤いのは、赤い実を食べたからですが、赤くてきれいだといっても、ヒヨドリジョウゴやスズラン、ソテツのように毒をもっているものもあります。成長の糧となるか死んじゃうかは知識や経験、そして”食べるかどうか”の決断の結果。でも、できればその決断の結果を税金に押し付けないでいただきたいのもです。

《脚注》
(*1)千両箱
 実際の千両箱は約20Kgもあるので(慶長小判(1枚約18g)×1,000枚+箱の重量)、ひょいひょい拾って持って帰れるシロモノではなさそうです。
 ちなみに、千両を現在の貨幣価値に引きなおすと、米価ベースで江戸初期で1億円、中~後期で3~5千万円、幕末頃には3~4百万円程度とのこと(日本銀行金融研究所貨幣博物館のhpより)
(*2)ジョージ・ソロス
 ”ヘッジファンドの帝王”の異名を持つ、ソロス・ファンド・マネージメントの会長。世界有数のお金持ちの一人。
(*3)Fed
 アメリカの連邦準備制度(Federal Reserve System, FRS)のこと。市中銀行の監督と規制、金融政策の実施、支払制度の維持、財務省証券の売買と、日本でいう日本銀行に相当する機関です。
(*4)不動産担保証券(MBS、Mortgage-backed securities)
 簡単いうと、不動産から上がってくるお金(住宅ローンの返済金とか、商業施設の利益とか)を返済の原資に当てる証券化商品。一般的には住宅ローンの返済は家計の中の優先順位が高いのでまず間違いなく支払われるだろうという前提に立っていますが、これとて本当にお金がなくなれば踏み倒すヤツは出てきます。
(*5)アラン・グリーンスパン議長
 第13代連邦準備制度理事会議長。1990年代の米国経済の黄金時代を築いた立役者の一人。神様扱いですが、金融緩和政策が世界金融危機の原因であったとの意見から、最近はちょっと旗色が悪いです。
(*6)初期におけるサブプライム問題への危機感の薄さとか
 確か日本のマスコミも銀行も同じことを言っていたような気が・・・
 この手の話は後知恵であればなんとでも言えます。

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