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煙草の煙と吐き出したのは、我が内なる愚か者への悪態(愚か者死すべし/カクレミノ)

 ども、最近ハードボイルドにはまっている、たいちろ~です。
 ここんとこ、原リョウの沢崎シリーズというのを立て続けに読んでいます。ハーフボイルド(*1)ではなく、和製の正統派ハードボイルドで、主人公が40代のおぢさんってのも良い!
 ということで、今回は新沢崎シリーズ第一作”愚か者死すべし”であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影
 近所の公園のカクレミノです。

【本】 愚か者死すべし (原 リョウ 早川文庫)
 大晦日、新宿署地下駐車場に2発の銃声が轟いた。1発は暴力団組長襲撃事件の容疑者”伊吹哲哉”、もう1発は容疑者を護送する刑事”東海林秋彦”を打ち抜いた。これをきっかけに私立探偵沢崎は思いもよらぬ展開に巻き込まれていく・・・
”私が殺した少女”で第102回直木賞を受賞した原リョウの沢崎シリーズの新作。といっても、2004年発刊です。ほんとに、寡作な作家です。
【花】カクレミノ(隠蓑)
 ウコギ科の常緑亜高木。別名 テングノウチワなど。写真をご欄になるとわかりますが、葉が昔の雨具の蓑の形をしています(*1)。
 隠れ蓑は天狗などが身にまとう空想上の蓑で、自在に姿を隠すことができるもの。今風に言うとステルス機能の宝具。ここから、実体を隠すための手段、表向きの理由を指すようになりました。

 ストーリーとしては、組長襲撃事件、自首した組長襲撃犯人、政治家の秘密を握る謎の老人の拉致事件、その誘拐犯からの身代金強奪事件等、話が二重三重に錯綜していて、けっこうな伏線が入り組んでいます。
 ”政界の裏で暗躍する謎の老人”なんていうと、社会派ミステリーの松本清張っぽいですが、代議士の学歴詐称事件のエピソードなんかが出てくると(*3)、ハードボイルドながら社会派の香りがしてますし

 ”愚か者死すべし”の中で、”愚か者”という言葉が2回出てきます。
 一つ目は、沢崎が伊吹哲哉への銃撃を阻止するために行ったことで死亡した、東海林秋彦の葬儀の場所を田島警部補に尋ねるシーン。

 沢崎:東海林警部補の弔問には、どこに行けばいい
 田島警部補:えっ? 本気で言っているのか、あんた
       そんなことをしてもだれも喜ばんぞ(中略)
       詳しい事情を知る立場にいる人間は、
       あそこであんたが登場しなければ
       彼は死なずにすんだのではないかと思っている。
       当然のことだが、遺族もそのへんの事情を知る権利がある
 沢崎:だから、弔問するのだ

 基本的な性格として、実は沢崎はとってもおせっかいな人間で、かつ頑固。上記の事件にしても誰からか依頼を受けたわけでもないのに、いつの間にか事件に巻きこまれているし、自分が原因で死んだかも知らない人間の葬儀に行けばもめる事は分かっているのに(実際にもめましたが)、自分の矜持と真相への希求のために訪問しているし

 で、表題のモノローグが出るわけです

  午後のよどんだ空気の中に、私がタバコの煙といっしょに吐き出したのは、
  わが内なる愚か者への悪態だった。

 この、ダンディズムこそが、ハードボイルドの真髄です。

 二つ目は、この事件の犯人のセリフ。ネタバレになるので、あまり細かくかけませんが、こんなシーン。
 自分の職業倫理に反する犯罪行為を行い、部下の犯罪行為を恐喝に変えて成果をあげている犯人。沢崎と対峙する中、周りを警察にとりかこまれ、全容を解明されていることを知って。

  拳銃は私の目の前で反転するような動きをした。
  ○○(犯人)が何をしようとしているか気づいたときは、すでに遅かった
  「愚か者め」と、○○は吐きすてるように言った。
  拳銃の銃口が○○の顎の下にぴたりと当てられた瞬間、
  三発目の銃弾が発射された。

 いろいろな事件を隠れ蓑にしながら、その中の事実が明らかになる瞬間です。

 ふと思ったんですが、政治資金規正法違反の容疑で起訴されかかった某O沢幹事長なんか、もし起訴されていたら「愚か者どもめ」とか言いそうだよな~~~
 元秘書とか、土地購入代金とか隠れ蓑にして・・・

 沢崎シリーズは、細かいエピソードのオーバーラップはあるものの、どこから読んでも面白いハードボイルド小説。ぜひ、ご一読のほどを。


《脚注》
(*1)ハーフボイルド
 仮面ライダーWの主人公、中途半端なハードボイルド探偵、左 翔太郎のあだ名。元々、ハードボイルド(堅ゆで卵)は、感情に流されない、強靭な肉体、妥協を許さない等の記号なので、ハーフボイルト(半熟卵)は、中途半端っさって言う意味では意外と合っている用法かも。
(*2)蓑の形をしています
 といっても、若い方でお分かりにならない方はこちらをどうぞ。
(*3)代議士の学歴詐称事件のエピソードなんかが出てくると
 衆議院議員の古賀潤一郎による「ペパーダイン大学卒業」という学歴詐称事件が2003年ごろ、本書の発行が2004年ですので、タイムリーに話題を取り入れています。
 ちなみに代議士の経歴詐称は公職選挙法の定める虚偽事項の公表にあたるため、れっきとした法律違反です。

 奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」はこちら

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