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10億年の引きこもり(都市と星/松ぼっくり)

 ども、風邪をひいて引きこもりのたいちろ~です。
 先日、ニュービジネスと愚者のブログを書いていて(*1)、そういえば、過去の記憶を持たない人と道化師が出てくるSFがあったな~と考えてたら、やっと思い出しました。
 ということで、今回ご紹介するのは、巨匠アーサー・C・クラークの”都市と星”であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所の松ぼっくりです。






【本】都市と星 (アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫)
 遙か未来、銀河帝国は崩壊し、侵略者の脅威におびえた人類は地球に密閉された永遠の都市”ダイアスパー”を建築する。そして、10億年。都市の外への通路すら塞がれた中、ただひとりアルヴィンだけは、都市の外の世界に憧れていた・・・
 クラークの古典的SFの傑作。09年に新訳版で出版されました。
【花】松ぼっくり
 松は日本を代表する常緑樹。日本では長寿を表す縁起のよい木ですが、花言葉も”不老長寿”。こちらは、大地の女神レアの神話に由来するようです(*2)。
 松の果実が松ぼっくり(松笠)で、種子は松ぼっくりの中にできますが、内部に閉じこもっているので外からは見えません。

 少し解説しますと、”ダイアスパー”という都市は、侵略者と戦うための第3新東京市(*3)。ではなく、むしろシェルターという性格を持っています。で、すべてのデータはコンピュータの中に記録されていて、人類は1000年ぐらい生きるとコンピュータのメモリバンクの中に保存され(厳密には死ではない)、また、過去の記憶を持ったまま再生されます。
 街自身もコンピュータメモリ上にある形でほぼ維持されており、また都市の外に出る通路は封鎖されていて、マインドコントロールにより人々は外に出ることに恐怖を感じていとので、人が外に出ることはありません。つまり”街ごと引きこもり”状態なんですね。これが10億年続いています。

 主人公の”アルヴィン”はこの都市の中で唯一、過去の記憶を持たずに生まれてきた人。また、外界に出たいと願う存在として描かれています。そりゃ、不安でしょうね、ほかの人が何回も経験した人生の記憶を持っているのに、自分だけがないってのは。
 で、アルヴィンを外界に導くのが道化師(*4)の”ケドロン”。コンピュータに自由にアクセスできる万能の人ですが、その位置づけは”王”ではなく”いたずら者”。いわゆるかく乱因子です。
 ファウストとメフィストフェレス(*5)の関係に似ているかな?

 ”都市と星”というのは、10億年の悠久の時間を引きこもっていた人類がアルヴィンによって、外に向かって歩き出すという話なんですが、なんせ10億年だもんな~~
 ダイアスパーという都市は自己完結型の生活環境としては理想的に設定されていますが、人類自体は完全な内向き志向。コンピューターによる完全管理の世界というと、映画の”マトリックス(*6)”なんかが思い出されますが、むしろ萩尾望都版の”百億の昼と千億の夜”(*7)が近いかも。

 ”閉じこもっている世界から外に出る”というのはある意味で創造的な破壊が必要なのかね? アメリカのヨセミテ国立公園などに生えているコントルタマツってのは、火事になると松ぼっくりが開いて種が飛び出すそうですが、なんでそんな進化をしたんだろ? ここまでいくと近所迷惑でしょうけど。そういえば、自然災害がトリガーで宇宙に子孫を送り出すってSFもあったような・・(*8)

 で、最後にダイアスパー建設に至る人類の隠された歴史が明らかになるんですが、ネタバレになるのでナイショ。ただ、ここまで壮大なホラ話を考え付くクラークってやっぱりすごいな~~~の一言です。

 どんなに、暮らしやすい環境でもやっぱり引きこもりって限界あるし。
 何があるかわかんないけど、外に出ないと身体を使った新しい体験て出来ないでしょう。
 ということで、芦ノ湖にでも行ってみましょうか?

《脚注》
(*1)ニュービジネスと愚者のブログを書いていて
 ”新しいビシネスは愚者にしかできないのかも”のテーマで”異業種競争戦略”の紹介を書きました。ご興味のある方はこちらをどうぞ。
(*2)大地の女神レアの神話に由来するようです
 ”心を込めて花言葉”のHPに由来が載ってます。ご興味のある方はどうぞ。
(*3)第3新東京市
 ”エヴァンゲリオン”に登場する「使徒迎撃専用要塞都市」。設定では箱根芦ノ湖の近くにあります。
 財団法人箱根町観光協会が”第3新東京市マップ”をマジで作っています。ご興味のある方は”Gigazin”のHPに載ってますので、どうぞ。
(*4)道化師
 中世のヨーロッパの宮廷道化師はお笑い芸人であるとともに、君主に対して無礼なことでも好きに言える唯一の存在だったそうです(再ブレイクした有吉?)。ケロドンはこの系譜を受け継ぐ存在かと。
(*5)ファウストとメフィストフェレス
 ゲーテの戯曲”ファウスト”に登場する人物。
 知識欲のかたまりであるファウスト博士と、彼を導く悪魔メフィストフェレスにより新たな人生を経験する物語。昔読んだんですが・・・
(*6)マトリックス(THE MATRIX)
 1999年に公開されたSF映画シリーズ。監督はウォシャウスキー兄弟。
 ちなみに”Matrix”は子宮という意味なんだそうです。知らなんだ・・
(*7)萩尾望都版の”百億の昼と千億の夜”
 原作は光瀬龍のSF小説。主人公は阿修羅王、シッタータ(釈迦)、プラトン。
 この中にコンピュータのメモリバンクの中で人類が眠り続ける”ゼン・ゼンシティ”というのが出てきます。1977年とマトリックスよりも20年以上前の作品ですが、ビジュアル的な美しさ、物語の壮大さはこちらのほうが優れていると思います。
 阿修羅ブームなので、ぜひ再注目して欲しい作品。
(*8)自然災害がトリガーで宇宙に子孫を送り出す~
 星野宣之だったような・・ 探してみます。

 奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」はこちら

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