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2009年12月6日 - 2009年12月12日

モザイクの向こう側(プロジェクトX/アダルトビデオ30年史/新子安のきしや)

 ども、風俗にはとんと縁のない人生のたいちろ~です(*1)。
 前回、中国史のブログを書いたので(*2)、今回は現代史のお話であります。

  ”科学技術を発達させるのは戦争とエロだ!

 という意見がありますが、私もそう思います。破壊と創造、エロスとタナトス、方向は反対ですが、人間本来の本能に根ざした行動ではあります。
 ということで今回は歴史を造った人たちの物語、”プロジェクトX”、”アダルトビデオ30年史”の豪華2本立てであります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
”きしや”ですが、お休みでした。






【VHS】プロジェクトX(NHKエンタープライズ)
【本】プロジェクトX(日本放送出版協会)
 無名の人々が直面する開発プロジェクトの苦悩と成功を扱ったNHKのドキュメンタリー番組及びその書籍化。全国のおと~さんが涙した名作です。
 今回とりあげる話題は”窓際族が世界規格を作った/VHS・執念の逆転劇”書籍版は第一巻に収録(*3)。
【DVD】アダルトビデオ30年史(ビデオバンク)
 アダルトビデオの創成期から現在に至る作品の中から選ばれた女優さんの総集編的な作品。言うまでもありませんが18禁です。
【旅行】新子安のきしや
 私も呑んだことがありますがふつ~の居酒屋さんです。
 この店が有名なのはビクターのVHS開発者たちが頻繁に利用したこと。”プロジェクトX”や”出没!アド街ック天国(*4)”でも紹介されました。

 私の記憶が正しければ、VHSが比較的気軽に買える価格になったのは1980年代の前半ぐらいだったと思います。レンタルビデオ屋がそこここにできたのもこのころ。VHSによってもたらされたのは”時間の変革”。映画館に行かないと見ることのできない映画がレンタルすれば格安で自宅で見られる、家にいなくても後からTV番組が見れる・・・
 今なら当たり前のことかもしれませんが、当時としては大きなライフスタイルの変化でした。で、この潮流を作り出したのが、日本ビクターの男たち。業務用ビデオメーカとしては弱小であり(失礼!)、その中でも存続すら危ぶまれていたVTR事業部を率いていたのがのちに”出るミスターVHS”と呼ばれた高野鎭雄。上記の”きしや”というのは、高野がVHSの未来を熱く語り、部品業者の社長たちに応援を要請した店です。どこにでもある普通の居酒屋。でも、どんな所にも歴史ってあるんですよね

 で、この後、ソニーのベータマックス(*5)との熾烈な規格戦争を勝ち抜くわけですが、この勝敗の大きな鍵を握ったのがアダルトビデオだったりなんかします。VHSとベータマックスの両方を持ってた友人に言わせると、画像等の性能ではベータマックスの方が上だったそうですし、企業規模、先行者メリット、ブランドイメージともソニーが上。
 にもかかわらず、VHSが勝利したのは、アダルトビデオの大半がVHSリリースされるようになったから(*6)。
 まさか、雌雄を決した原因はエロエロになろうとは、技術者たちは考えもしなかったでしょうねぇ

 ”アダルトビデオ30年史”に登場するのは桜樹ルイ、冴島奈緒、村上麗奈、夕樹舞子、後藤えり子、星野ひかる、白石ひとみ、菊池えり、金沢文子 などなど。キラ星のようなAV女優さんたちが登場します。

 うぁ~、何もかもみな懐かしい・・・

 お世話になった(何が?)女優さんたちの映像、よく残ってましたね!
 美少女シリーズの”処女宮”なんか、今だったら”萌え~~~”って言われるんでしょうね。お嬢さんたちの眉毛がすごく太かったり、男優さんがブリーフだったり、モザイク(*7)が異様に大きかったりしているのも歴史を感じます。
 モザイク越しに見えるナニのアップが実は明太子だったりのネタばらしもご愛嬌!

 この、”アダルトビデオ30年史”という作品、本来のアダルトビデオの目的(どんな目的だ!)から言うと、完全な失敗作。なぜなら、エッチな気分にならないんですね。若かったころ、ドキドキしながら見ていた嬉し恥ずかしの記憶が甦って、思わず見入ってしまいます。
 ”そんなことないやろ?”と思われる女性の方もいらっしゃるでしょうが、目の前に20年前の”CanCan”や”セブンティーン”を出されてみなさい。ファッションセンスがどうのという前にうぎゃ~~となります。

 この作品の意義は、アダルトビデオという業界の歴史を振り返って、そこに登場した女優さんのきらめき、エロを追及した監督さんたちの足跡をたどることで、現在のアダルトDVDの興隆の礎になった人たちを振り返ることにあると思います。

 中小企業の多い業界ですし(*8)、大宅壮一文庫や米沢嘉博記念図書館(*9)みたいなのが出来ると思えないので、こういったコンテンツはぜひ続きを出していただきたいものです。

 おぢさん世代にはお勧めの作品ですが、中高生にはNG。だって18禁ですから!

《脚注》
(*1)風俗にはとんと縁のない人生~
 これをいうと皆さん意外と思われるそうですが、ソープランドはおろかストリップすら行った事がありません。別に品行方正とか男のほうが好きなわけではなく、単なる貧乏なだけです。
(*2)中国史のブログを書いたので
 田中 芳樹の”蘭陵王”のことです。内容はこちらからどうぞ
(*3)書籍版は第一巻に収録
 このエピソードはVHS版のみに収録されていて、DVD版はないようです。
 まあ、気持ちはわからなくもないですが、DVDにも収録して欲しかったです。
(*4)出没!アド街ック天国
 テレビ東京で放映されている地域密着系都市型エンターテイメントバラエティ番組。面白い番組なんですが、放送されてない地域が多いのが残念。
(*5)ソニーのベータマックス
 ソニーが開発した規格。販売開始は1975年で、家庭用VTR市場を開拓した先駆者でもあります。おぢさん世代には当たり前の知識ですが、若い人には説明しないとわかんないだろうな~。
 ちなみにVHSの販売開始は1976年です。
(*6)アダルトビデオの大半が~
 当時のAVメーカーの大多数は小規模であり、両規格をリリースする体力がなかったため、1980年代前半からVHSがリードしていたという事情と機材が安価に調達できる環境が整っていったことから、AVのほとんどをVHSのみで供給した。結果、AVを見たいユーザーはVHSへ流れ、元々優位だったVHSがさらに優位に立ち、ビデオ戦争は事実上終結した(Wikipediaより抜粋)。
(*7)モザイク
 余談ですが、映像にモザイクをかける技術というのはNECの発明なんだそうです。
 何をすんねや、NEC!
(*8)中小企業の多い業界ですし
 業界大手のソフトオンデマンドでさえ、年商は150億円程度。これは”千と千尋の神隠し”1本のビデオ推定販売額の6割程度にすぎません。
(*9)大宅壮一文庫や米沢嘉博記念図書館
 大宅壮一文庫はジャーナリスト大宅壮一の雑誌のコレクションを基礎として作られた私立図書館。
 米沢嘉博記念図書館は、コミックマーケットの創設者であり評論家である米沢嘉博のマンガ・同人誌コレクションをもとに、明治大学に開設された図書館。
 サブカルチャー、社会史を残すには貴重なアーカイブです。

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皇帝を皇帝たらしめいているのは良き人格じゃないんだな、これが(蘭陵王/ヒノキ)

 ども、亀田vs内藤の試合(*1)は結局見なかったたいちろ~です。
 先日、田中 芳樹の”蘭陵王”を読みました。
 ”蘭陵王”こと”高長恭(こう ちょうきょう)は、中国の北斉の皇族。数多くの軍功を立てた武将ですが、”北斉書”に”貌は柔(ヤサ)しく、心は壮(イサ)ましく、音(コエ)と容(カタチ)、兼ねて美し”といわれた美丈夫でもあります。
 こんな立派な人が仕えた皇帝”無愁天使・高緯”。奸臣たちを信任してやりたい放題で北斉を滅亡させてしまいます。
 ということで、歴史の不条理を感じつつ”蘭陵王”の紹介であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所のひのき林です。













【本】蘭陵王(田中 芳樹 文藝春秋)
 六世紀の中国、北斉は北周、陳、突厥と三方を強敵に囲まれていた。
 蘭陵王は、滅亡に瀕した国を必死でささえていたが、皇帝の嫉妬をかいやがて悲劇が訪れる・・・
 舞楽の世界ではメジャーなものなのだそうですが、浅学菲才の身なので知りませんでした。(YouTubeで観ることができます
【花】ヒノキ(檜、桧)
 日本と台湾にのみ分布するヒノキ科の針葉樹。なので英語では”Japanese cypress”(cypressは糸杉)。
 高級建築材として古事記も示唆されていて、法隆寺や伊勢神宮にも使われているという由緒ある樹です。
 花言葉は”不滅、強い忍耐力”。

 蘭陵王の逸話として、鬼の仮面(雅楽では竜頭)を着けて戦うというのはありますが、その理由は「その美貌が兵卒たちの士気を下げるから」。武勲を挙げるたくましさ、類まれなる美貌、そしてミステリアスな仮面とボーイズラヴにうってつけの人物ですが、そんな腐った目で見てはいけません!

 そんな人が国の為とはいえ、腐敗した皇帝に仕えて外敵と戦うわけですが、暗愚な皇帝は国内の有為な人物を嫉妬や猜疑心から次々粛清していきます。まさに内憂外患の状態にあるわけです。

 戦友でもある名将斛律光(こくりつこう)が讒言により殺された時の蘭陵王の言葉。

  もはやこの国から忠臣も良将も消え去りました。
  柱も壁もなく、屋根だけが無事ではありえませぬ。
  もう終わりです。

 同じく田中 芳樹の”銀河英雄伝説”の中でも、こんなことを言っています(*2)。

  ゴールデンバウム王朝も、これで終わった。
  みずからの手足を切りとって、どうして立ってることができるだろう

 つまり、下に支える人がいてこそのトップなんですね。

 屋根に取り付けられる小柱、防火壁や装飾のことを”うだつ”と言います。生活や地位が向上しないのを”うだつがあがらない”というあれです。で、柱がしっかりしていないと屋根もうだつも上がらない訳です。
 ひのきなんかが日本では建材として使われますが、写真を見ていただくとわかりますように、ひのきって地面からまっすぐ直立する樹です。もちろん真っ直ぐじゃないと柱にはなりません。
 人も同じで、ひねごびると支えてはくれません。なのに中国も皇帝(とそのとりまき)って、部下をいぢめたり殺したりする人のほうが多いように見受けられます。これが行き過ぎると、蘭陵王の弟の漁陽王のようになっちゃいます。

  尊敬され、人望があったら、この国では殺されます。
   (中略)
  この国で生きていくには、軽蔑され、笑われ、
  それでも平気な表情で遊び呆けるしかないのですよ、諸兄・・・

 部下がこうなっちゃったら後は滅びの道へまっしぐら!
 上の人が嫉妬や猜疑心から有為の人を潰しちゃったら、媚びへつらうヤツか、こんなのしか残んなくなります。私も幹部社員の端くれなんで、肝に肝に銘じるべきでしょう。

 中国史を扱った本を読んでいると、人間の歴史って武力と血による権力闘争の積み重ねであると思ってしまいます。中国四千年を定年真近の60歳のおじさんだとすると、文化大革命(*3)ですら59歳6ヶ月の時にやってる事になりますので、そこらのヤ○ザさん真っ青の血みどろ人生であるといるでしょう。
 こんな人たちに清廉潔白な人格を求めるのはいかがなものかと。そんな人が皇帝になれば望ましいですが、それは庶民のファンタジーなのかもしれません。
 ま、現在の日本は選挙で首相を選ぶのでここまでえげつないことはやらないと信じたいですが、政党の選択基準は政策と運営能力であって、人格じゃありませんし(*4)。

 スポーツの世界での皇帝であるチャンピオンや横綱って、実力をもってその地位を獲得したのであって、人格があるからなったわけではありません。なので、お行儀の良い亀田兄弟とか、品行方正な朝青龍を期待するほうが間違っていると思うんですけんどねぇ・・・

《脚注》
(*1)亀田vs内藤の試合
 2009年11月29日に行われた「プロボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチ」のこと。”ごんたくれ”亀田興毅vs"いい人”内藤大助の因縁試合。
 結果は12回判定で亀田興毅の勝ち。
(*2)田中 芳樹の”銀河英雄伝説”の中でも~
 自らの領地に核攻撃を加えようとするブラインシュバイク公に対し、部下のアンスバッハ准将がつぶやいた言葉。
 ”銀河英雄伝説 野望編”に収録。
(*3)文化大革命
 本来は中国における新しい社会主義文化を創生しようという運動だったはずが、実質的には、毛沢東、四人組によるて中国共産党指導部内の大規模な権力闘争になりました。
 時間的には1966~76年にあたり、犠牲者数は数百万人から一千万人以上ともいわれています。
(*4)人格じゃありませんし
 一回くらい人格を争点に選挙をしてみても面白いかも。”友愛の人”vs”捨石の人”とか
 何かで読んだんですが、入学試験は純粋に学力で選別するから良いのであって、人格のみを評価して合否を決めたら、不合格の時へこむでしょう。

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