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2009年11月8日 - 2009年11月14日

名前で人を判断してはいけない・・・(まほろ駅前多田便利軒/りんご)

 ども、ビューティフル・ネーム(*1)を持つブロガー者、たいちろ~です。
 先日、三浦しをんの”まほろ駅前多田便利軒”を読みました。実は何の根拠もなく、三浦しをんって、キリスト教系の小説を書く人だと思ってました。だって、名前のシオン(*2)って、エルサレムにあるユダヤ教、イスラム教の聖地”神の神殿”の別名だし、苗字の三浦も”三浦綾子(*3)”を連想させるし。
 ということで、なかなかに期待を裏切ってくれる本、”まほろ駅前多田便利軒”のご紹介であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所のスーパーに売っていたリンゴです。






【本】まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん 文藝春秋)
 多田啓介はまほろ駅前で”多田便利軒”というラーメン屋もとい、便利屋を営んでいる三十半ばの男。ふとしたきっかけで高校時代の同級生、行天春彦と生活をともにすることになり・・・
 2006年に、直木賞を受賞しました。
【花】りんご
 バラ科リンゴ属の落葉高木樹。原産地は中央アジアの山岳地帯。
 リンゴといえば、旧約聖書のアダムとイヴが食べた果実を思い出しますが、旧約聖書の舞台となった当時のメソポタミア地方にはリンゴは分布していなくて、食用に適さなかったので、この話は後に創作された俗説とのこと(Wikipediaより)。今さらそんなこと言われてもねぇ・・・

 さて、この”まほろ駅前多田便利軒”という作品、確かに面白いんですが、なんで面白いのか説明に困ってしまうシロモノです。

表紙がなぜリンゴなんだ?(*4)〕
 表紙の写真はリンゴのヘタのところにタバコを立てているものです(下の写真をご参照ください)。主人公の二人がヘビースモーカーなのでタバコはわかるんですが、なぜリンゴなんだ? 小説の中になんのエピソードもないのに?
 でも、なんとなくイメージに合ってるのが不思議。

友情の物語でもなければ、ボーイズラヴでもない
 多田と行天は高校の同級生という間柄ですが、高校時代はちょ~無口だった行天と、行天にケガをさせたというトラウマを抱える多田の間に友情らしきものがあるのか不明。
 かといって、ボーイズラヴするのは二人ともおっさんすぎるし。
 単行本のイラストを担当されている下村富美の絵はちょっと耽美っぽいですが、本文中の二人に怪しげな雰囲気は皆無です。コミック化した山田ユギのイラスト(*5)だけ見ると、相当怪しげですが・・・

推理小説でもなければ、ハードボイルドでもない
 いろいろ事件があって解決するんですが、そんなに深い推理をやってるわけでもないし。あえて言うなら、探偵役は行天のほう。といっても多田がワトソンってわけでもないし。行天はケンカとかナイフで刺されたりとかハードボイルドな展開もありますが、健康サンダルにハイビスカス柄のアロハに竜の刺繍のジャンバーにとハードボイルドとはかけ離れたファッションセンスだし。
 でも、あえてジャンル別けするならこのあたりしかなさそうだし・・・

屈折しているくせに、以外と素直
 妻の不倫と子供を病気で死なせた末に離婚した多田と、偽装結婚で一回もエッチしていないのに実の子供がいる行天と二人とも屈折した人生を送っています。でも想いはけっこうストレート。本書の締めくくりはこんな言葉。

  今度こそ多田は、はっきりと言うことができる。
  幸福は再生する、と。
  形を変え、さまざまな姿で、
  それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。

 ま、読後感で言うなら、フリーターが希望と共に語られた時代(*6)の若者たちのその後を描いた青春小説といったところでしょうか。
 直木賞を受賞した小説ですが、”何で?”と思うのと”なるほど!”と思うのとないまぜになった不思議な小説です。

《脚注》
(*1)ビューティフル・ネーム
 1979年にゴダイゴがリリースした歌。”国際児童年”の協賛歌だったそうです。
  Evrey child bas a beautiful name, A beautiful name,butiful name
  呼びかけよう名前を、すばらしい名前を
 歌うと、結構元気の出る曲。最近ではつるの剛士によってカバーされました(”つるのおと”に収録)
(*2) シオン
 英語で書くと”Zion(ザイオン)”。ちなみにガンダムに出てくるのは”Zeon(ジオン)”、インテルのCPUは”Xeon(ジーオン)”です。お間違えのないように
(*3)三浦綾子
 クリスチャンの信仰に根ざした小説を書いておられる小説家。2006年に石原さとみ主演で放映された”氷点”の作者です。
 この人の作品は読んだことありませんが、昭和のおぢさんにとっては遠藤周作と並んでキリスト教系の作家として有名な人でした。
(*4)表紙がなぜリンゴなんだ?
 単行本版の表紙です。文庫版はタバコがたくさん立っている写真です。
(*5)コミック化した山田ユギのイラスト
 ポプラ社の雑誌”ピアニッシモ”に連載中。本書は読んでないので、雑誌の表紙を見た感想です。
 でも、ポプラ社って、”かいけつゾロリ”とか児童書専門の出版社じゃなかったっけ? いつの間に?!
(*6)フリーターが希望と共に語られた時代
 今でこそ、生活不安定な非正規雇用労働者の代名詞のような扱いですが、元々はミュージシャンなどを目指す若者が、時間を拘束される正社員ではなくアルバイトなどで生活することをさした言葉。逆に言うと、そんな生活が許容できるほど社会が豊かだったということです。
 出典はリクルート社のアルバイト情報雑誌”フロムエー”から。バブル期である1987年のことです。
 ちなみに、多田、行天とも元々はちゃんとしたサラリーマンでした。

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これがホントのハネムーン(第六大陸/花束)

 ども、月よりの使者、たいちろ~です(ウソです)。
 先日、”宇宙で暮らす道具学”という本を読みましたが、この中に月面でコンクリートを作る方法というのが載っていました。月の砂(レゴリス)に水を加え、太陽熱による処理を行うと、コンクリート状の建材ができるとのこと。つまり、技術的には月面に建物を作ることは可能とのことです(*1)。へえ~~~
 ということで、今回はこの技術を使って月面に結婚式場を作るという”第六大陸”の紹介であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所の花屋さんで見つけたミニ花束です。






【本】第六大陸(小川 一水 ハヤカワ文庫)
 極限環境下での建設事業で実績のある御鳥羽総合建設が受注したのは、月面での結婚式場”第六大陸”。依頼主はレジャー企業の会長、桃園寺閃之助とその孫娘 妙。工期10年、総工費1500億円の民間企業版宇宙開発の行方は? そして妙と現場監督(?)青峰との恋の行方は?
 2004年、第35回星雲賞日本長編部門を受賞した名作です。
【花】花束
 花束と言うと結婚式のブーケ(bouquet)を連想されるかもしれませんがこれはフランス語。英語では”a bunch of flowers”。
 題名に”花束”はつく小説としては”アルジャーノンに花束を(*2)”がありますが、この原題は”Flowers for Algernon”です。

 ”月面に結婚式場を作る”というと、コミカルな小説と思われるかも知れませんが、”第六大陸”は日本を代表するといっても過言ではないハードSFです。
 この小説の中での技術面でのブレイクスルーは”トロフィー”といわれるハイブリット型のロケットエンジン。現在のロケットの輸送コストは低軌道(高度350~1400km)ですら1キロの荷物に170万円ほどかかるとのこと(宇宙エレベータ協会HPより)。”トロフィー”はこれをペイロード(積載重量)10倍、製造コスト1/20にする技術。

 もうひとつの”ブレークスルー”である水の確保ですが、これは2009年10月9日にNASAの月クレーター観測機「エルクロス」が月の南極付近面に水があるか(*3)の調査を行いました(National Geographic Newsより)。”第六大陸”でも建築現場を南極に設定しています。本書の発行は2003年ですがちゃんと抑えるべきところを抑えているのはさすが。
 水があれば、生存に必要な酸素、推進剤としての水素の作成が可能になります。月の重力が1/6であることと、アポロ世代のおぢさんはアポロ11号の月着陸船の小ささから(*4)、帰りの燃料って少なくて済むと思っていますが、実際にはそれなりに必要。つまり燃料の現地調達ができれば、帰りの燃料を地球から持っていく必要がなくなるので打ち上げコストの削減、あるいは持っていく荷物を他のものに振り向けることができ、こちらでもコスト削減につながります。
 また、上記のレゴリスを使ったコンクリートの作成も、月に水があればわざわざ地球から持っていく必要がないので、こちらもコスト削減につながります。普段、何気なく飲んでいる水ですが、けっこう水って偉大なんですね。

 で、こういったことが民間企業でできるかというと、経済原理から言うと投資・回収ができるかどうかにかかっています。本書中では、中国の宇宙船に同乗させてもらう費用が大人一人20億円、機材等の運送コストだけで現状の技術では1.2兆円の試算としています。これを上記のコスト削減で、月までの運賃を1億円、総工費1500億円に圧縮して事業化していますが、これとて本書の中では1億円のお金を払う人を月4人20年間確保する必要があるとのシミュレーション結果。
 私見ですが、私は事業としては成立すると思います。1億円というと大金ですが、結局それでも行ってみたいという気持ちがある人がいる限り、それを抑えることはできないでしょう。それに、現在の企業の広告宣伝費を考えれば懸賞としても出せない価格ではないかと。それに低重力化での素材産業、科学実験等の需要は相当にあるのではないかと見ています。

 それでも、民間企業である以上重要なのは資金繰り。この計画では工期10年と見積もっていますが、逆に言うとそれまで大きな収入が見込めないということ。施工主の妙さんが過労で倒れたとき、第3のブレークスルーがあります。それは、妙さんの病室に届けられた無数のお見舞いの花束

  Take care of yourself,Moon Princess.--A.B.Navamukungman KL
  聞いたこともない名前だった。マレーシアからのものらしい。
  次のカードのもそうだった。次も、その次も。
  個人名もあれば、第六大陸に関係していない企業からのものも
  どこかの国の公人のものもある。

   (中略)
  数百の花束。優しさの海。名も知らぬ人からの声。
  妙は呆然とする。こんな応援は予測していなかった。
(本書より)

 つまりは、”人の想い”こそがブレークスルーの原動力なんですね。
 これを受けて、妙はさらに先に進むことになります。

 ”なぜ、宇宙開発に莫大な税金を使うのだ”という議論は昔からありますが、とどのつまりは”行ってみたいから”という純粋な気持ちを超えるものはないのかもしれません。もっとも、それでは稟議書が書けないのがお役所のつらいとこなんでしょうが(*5)。
 むしろ、妙さんのように個人資産を使ってでも計画を推進するほうがいいのかもしれませんんね。宇宙旅行のコストを劇的に下げるといわれている宇宙エレベータにしても、総工費は1兆円程度とのこと(*6)。この程度の費用であれば、ビル・ゲイツなら5~6ケ作れます

 まじめな話、数百万円、豪華客船クルーズ程度のお金で宇宙に行ければ相当な需要があるでしょう。私だって退職金で言っちゃうかも・・・

《脚注》
(*1)技術的には月面に建物を作ることは可能とのことです
 現実的にはクリアすべき課題(水の確保、製造プラントの建築、それらの輸送コスト等)が山積みですが、できるとわかればやってみたくなるのが人間の性。
 レゴリスの解説は大阪市立科学館のホームページをどうぞ。
(*2) アルジャーノンに花束を
 ダニエル・キイスによるSF小説。知的障害の為、幼児並の知能しか持たないが心の優しい青年チャーリーは、手術により天才的な頭脳を持つにいたる。しかし、この手術には致命的な欠陥があり・・・
 最終章にある”アルジャーノンのお墓にお花をあげてください”は涙なしには読めません。名作です。
(*3)月の南極付近面に水があるか
 水がないと思われている月ですが、水を主成分とする彗星が月に衝突し、かつ太陽の当たらない南極のクレータの影であれば氷の形で存在するのではないかと推測されています。
(*4)アポロ11号の月着陸船の小ささから
 高さ7m、最大重量 15.5t。"APOLLO MANIACS"のホームページにCGなどが掲載されていますので、ご興味のあるかたはどうぞ。
(*5)それでは稟議書が書けないのが~
 ダムが必要とかそうでないとかの議論をするよりよっぽど建設的ではないかと思ってしまします。それに経済的な波及効果も大きそうですし。
 いっそのことロケット開発の予算を文部科学省から国土交通省に移管したらどうでしょうね。ロケットだって交通機関なんだから。
(*6)総工費は1兆円程度とのこと
 宇宙エレベータとは、静止軌道から丈夫な糸(テザー)をたらしてエレベータで宇宙に出るというもの。試算は宇宙エレベータ協会によるものです。理論的には高校物理程度のものですし、技術的にはカーボンナノチューブの発明でまったく空想上のものではなくなってきています。
 ちなみにビル・ゲイツの個人資産は580億ドル、日本円にして約6兆円です(2008年度フォーブス長者番付より)

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