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2009年9月6日 - 2009年9月12日

恋には我身の命もいらぬ(夜叉ケ池/インパチェンス)

 ども、電車賃がなくてなかなか自宅に帰れない単身赴任のたいちろ~です(*1)。
 会社の出張だと交通費は気になりませんが、自腹となるとやはり往復2万円は結構な出費(*1)。なかなか連休とかないと帰れない状態です。
 ということで、今回は別れ別れの恋人=竜神を扱った泉鏡花の”夜叉ケ池”のご紹介です。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所の公園に咲いていたインパチェンスです。












【本】夜叉ケ池(泉 鏡花 岩波文庫他)
 大昔に竜神と人間の間に交わされた契約。それは「竜神がその力を封じ続けるには日に3回鐘をつくこと」。その鐘を撞き続ける若い夫婦と、村人たちとの対立。そして恋に焦がれる竜神”白雪”の想い。
 泉 鏡花の代表的な戯曲。
【花】インパチェンス(Impatiens)
 アフリカのタンザニアからモザンビークにかけての高原地帯に分布する一年草。別名、アフリカホウセンカ(鳳仙花)。語源は、ラテン語の”impatient 我慢できない”から。花言葉は”豊かさ”のほかに”短気”などもあります。

 で、なんでこんな。大正時代の戯曲(*1)を読む気になったかというと、最近読んだ野村美月の「”文学少女”と月花を孕く水妖」のモチーフがこれなんですね。
 こちらのほうは別のブログで書きましたので省略しますが、本歌(*3)である”夜叉ケ池”はというと2つの恋の交錯する幻想的なお話です。

 人間のお話は学生の荻原晃と村娘の百合が竜神との約束に従って鐘をつく役目を引き継ぎますが、日照りに悩む村人たちは百合を竜神への雨乞いの生贄に捧げようとします(*4)。

  晃  生命に掛けても女房は売らん、
     竜神が何だ、八千人が何(ど)うしたと!
     神にも仏にも恋は売らん。

 かたや、竜神の白雪は遠く剣ケ峰にいる恋人の妖怪に会いたいものの、人間との約束のため、鐘がつかれている間は夜叉ケ池から離れられない身(*5)。

  白雪 人の生命が何う成ろうと、其(それ)が私の知ることか!
     恋には我身の命もいらぬ。
     (中略)
     あこがれ慕ふ心には、冥土(よみじ)の関を据ゑたとて、
     夜のあくるのも待たれうか

 目先の利益のため、他人を平気で犠牲にできる代議士や村人たちと、恋人に会いに行きたい気持ちが我慢できず、村人の犠牲をいとわない白雪はある意味相似形なのかもしれませんが、我が身をも犠牲の内に考える白雪と一方的に他人に犠牲を強いる村人ではやはり深みが違います。

 で、誰を犠牲にしなくても家に帰れるのに帰らないおとうさんは”我慢できない”という名をもつインパチェンスの花を見ながら、交通費の捻出をしみじみ考えるのであります

 泉 鏡花の名前は知っていましたが、読むのは今回が初めて。食わず嫌いというか、こんなに面白い話だとは思っていませんでした。大正期の文章ですが、戯曲だけあって言葉のリズムが流れるようで思いの他すらすらと読めます。私が読んだのは”鏡花幻想譚”に収録されたものですが、解説や振り仮名もあって読みやすかったです。他に収録されている”天守物語”、”海神別荘”もお勧めです。

《脚注》
(*1) 大正時代の戯曲
 泉 鏡花(いずみ きょうか)は、明治後期から昭和初期にかけて活躍した小説家、戯曲作者。”高野聖”や”婦系図”が代表作。近代における幻想文学の先駆者ともいわれています。”夜叉ヶ池”は1913年(大正2年)に発表。
(*2) ”文学少女”と月花(げっか)を孕(だ)く水妖(ウインディーネ)
    (作 野村 美月 イラスト 竹岡 美穂 ファミ通文庫)
 「悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください」
 そんな”文学少女”こと遠子先輩に呼ばれて行った先では80年前の殺人に端を発する因縁の事件だった。
 ライトノベル系の推理小説。
(*3)本歌
 本歌取りは、有名な和歌を自作に取り入れて作歌を作る和歌の作成技法の1つ。
 ”文学少女シリーズ”は主人公の遠子さんが古今東西の文学に精通した人なので、有名な小説をモチーフにしています。
(*4)竜神への雨乞いの生贄に捧げようとします
 処女を裸にして牛の背中に縛り付けて夜叉ヶ池に追い立てるというもの。あまりいい趣味とはいえません。
 ちなみに晃の友人学円によると、雨が降るのは牛の背中の犠牲を見るに忍びないので天道が泣くからとのこと。
(*5)夜叉ケ池から離れられない身
 白雪が夜叉ケ池から動くと大雨、洪水によって多くの生命が失われることになるそうです。


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パン・ド・ミーに始まりパン・ド・ミーに終わる(風見鶏/風見鶏の館)

 ども、パンにはちょっとうるさい神戸人たいちろ~です。
 今回のお題は”あなたが一番好きなパンは?”ですが、神戸人にこのネタふるとうるさいぞ~~
けっこういろんなとこに行きましたが、ことパンに関する限りパンは神戸が一番おいしいです。中でもベーシックなところでお勧めはパン・ド・ミー(*1)、しかも厚切り!
 義母が神戸に住んでいるので、お土産にお願いするのがこれ。我が家では”シーアのパン(*2)”で通用します。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
神戸有数の観光スポット、異人館街にある”風見鶏の館”です。











【TV】風見鶏
 1977年~79年に放送されたNHKの連続テレビ小説。主演は新井春美、蟇目良(ひきめりょう)。実在したドイツパン職人ハインリヒ・ブルクマイヤー(フロインドリーブ創業者の父)をモデルにした番組。この番組がきっかけで「異人館ブーム」が起きたのは覚えていますが、内容はほとんど覚えていません。申し訳ない。
【旅行】風見鶏の館
 ”風見鶏”の番組で一躍有名有名になりましたが、元々はは神戸に住んでいたドイツ人貿易商ゴッドフリート・トーマス氏の自宅。
 レンガ造りの概観にくわえ、尖塔の上にある風見鶏が素敵です。

 神戸人がなぜパンにうるさいかというと、ドンクイスズベーカリービゴの店フロインドリーブ(*3)等、パンの名店が目白押し!
 それに神戸の人はよくパンを食べます。特に食パン、フランスパンの世帯あたりの消費量は主要都市中第2位です(*4)。
 元々、異人館街があるように外人の多い土地柄だったんでしょうが、おぢさん世代にとって”神戸=パン”のイメージ作りに貢献したのが、NHKの連続テレビ小説”風見鶏”。さすがに学生だったのでTVはほとんど見ていませんでしたが、”神戸のパンはおいしそう”というイメージが刷り込まれましたね。
 上の写真は、今年の夏に”風見鶏の館”に行って来た時の写真ですが、中にはちゃんと”風見鶏”のポスターが張ってありました。

 異人館街は神戸市の北野町山本通にあるエキゾチックな建物が建っている地区で、神戸ではデートコースの定番。関西以外から訪問するなら新神戸駅からぶらぶら歩くのもオツです。いくつかの異人館を見てそのまま三宮・元町方向に下りれば楽に移動できます(*5)。
 私は仕事のついでに行ったので、さすがに食パン1本抱えていくわけにはいきませんでしたが、もったいないことしたな~。買って買えればよかった!。

 上記のドンク、イスズベーカリー、ビゴの店、フロインドリーブとも三宮・元町から歩ける範囲に店があるので、食べ歩きにもいいかも。
 なんだか観光案内みたくなりましたが、パン好きな方はぜひお越しください

《脚注》
(*1)パン・ド・ミー(pain de mie)
 イギリスの食パンに似せてフランスで作ったパン。カリッとした表皮は、フランスパンぽっくって美味。レシピの例はこちら(Web Site Bread Baking e-pan Studio)。
(*2)シーアのパン
 ”シーア”はJR住吉駅に隣接するコープこうべのお店。1階にパン屋さんがあります。コープこうべは日本最大の生活協同組合で私の大学時代の友人が勤めていますが、昔、レイザーラモンHGも働いていたのは知りませんでした。
(*3)ドンク、イスズベーカリー、ビゴの店、フロインドリーブ
 それぞれ本社と創業年は以下のとおり
  ドンク:神戸市東灘区 (1905年 明治38年)
  イスズベーカリー:神戸市中央区(1946年 昭和21年)
  ビゴの店:芦屋市業平町(1972年 昭和47年)、旧ドンク芦屋店
  フロインドリーブ:神戸市中央区(1924年 大正13年)
(*4)食パンの世帯あたりの消費量~
 総務省統計局・平成20年家計調査年報(家計収支編)より。
 食パン(含むフランスパン)の消費量の主要都市順位は
  1位 奈良市、2位 神戸市、3位 京都市
 と関西が独占。
 ちなみに、菓子パン等を加えた総合順位は
  1位 徳島市、2位 奈良市、3位岡山市、4位 神戸市
 になります(他の都市は菓子パンの消費が多いから)。
 ご興味のある方は統計局からデータがダウンロードできますので見てください(11.都市階級・地方・都道府県庁所在市別 1世帯当たり品目別支出金額)
 って、こういうの載せるのが仕事で企画担当してる人の業なんだよな~。
(*5)楽に移動できます
 神戸という町は三宮・元町を中心に北に六甲山、南に神戸港に挟まれた町ですので、けっこう坂道もあます。異人館街は六甲山のふもとにあるので三宮側から行くと登り坂。バスという手もありますが、神戸人としてはぜひ歩いて楽しんでいただきたいと思います。

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やさしいコスモスの作り方(神様のパズル/キバナコスモス)

 ども、最近、花図鑑で花の名前を調べはじめたたいちろ~です(*1)。
 近所の道端にキバナコスモスが咲いていました。まだまだ暑い日が続いていますが、そろそろ秋の花が咲き始めました。
 誰かが植えたように見えなかったので、たぶんこぼれ種かなにかで芽が出たように思われますが、はかなげなイメージのコスモスですが、けっこう元気に育っています
 ということで、今回の本のご紹介は”神様のパズル”。同じコスモスでも、こちらはコスモス=宇宙(*2)を作るお話です。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所に咲いていたキバナコスモスです。













【本】神様のパズル(機木 伸司 ハルキ文庫)
 ひょんなことから、人工受精で生まれた天才少女穂瑞沙羅華(ほみずさらか)と一緒にゼミで「人間は宇宙を作ることはできるのか?」を研究することになってしまった落ちこぼれ大学生、綿貫君の苦悩の日々・・・
 2002年、第三回小松左京賞受賞作、08年に谷村美月主演で映画化。
【花】キバナコスモス(Yellow Cosmos)
 原産地はメキシコ。同じコスモスですが、ピンク色のものとは交配する事はできないのだそうです。コスモスの花言葉が”乙女の心”に対し、こちらは”野生的な美しさ”です。

 きっかけになったのは、量子力学の聴講生の老人の疑問。

  あなたは何ともないのですか?
  宇宙がどうしてできたかも知らずに生きているということが。
  そしてこんな根本的なことも分からずに
  死ななければならないということがですよ。

 宇宙を作ろうとした物理学者、穂瑞沙羅華の疑問

  私が知りたかったのは、自分のことだったのだ。
  自分は何故生まれてきたのか。何故生きているのか。
  こうして生きているのに、
  自分とは何かもわからないで私はここにいる。
  私はそれを知りたかった。

 引用が長くなりましたが、この疑問を突き詰めると”創造主”、つまり神様に行き着くんですね。意外なようですが、物理学者って神様が好きなようです。本の題名にもなった”神様のパズル”は物理学者アルベルト・アインシュタイン(*3)の言葉。
 きっと、無から宇宙を作り出し見つめる瞳っていうのは、神の視点なのかもしれません。もっとも、人間がコスモスを愛でるように、神様が人間を慈しみの目でみてくれるとは限りませんけどね(*4)

 余談ですが、小説の最後に穂瑞がカラオケで歌うのが”君の瞳に恋してる(*5)”。この曲の原題は”Can't Take My Eyes Off You”。日本語に直訳すると”あなたから目をそらすことなんかできないわ”。
 なかなかオシャレなオチです。

 久しぶりに読みましたが、けっこう面白いSF小説です。最新の物理学用語がポンポン飛び出しますが、ガジェットと思って読み飛ばしてもOK。わかればもっと面白いのかもしれませんが、原始物理学なんて素人の手に負えるもんじゃありません。
 本書でも言っているように、原理なんか知らなくても音楽は美しい調べを奏でてくれるんだから

《脚注》
(*1)花図鑑で花の名前を調べはじめた~
 間違いを書いてはいけないので、基本的には公園や園芸店などのプレートで確認していますが、道端に咲く花もきれいなので載せ始めました。でも、植物の同定(生物の分類上の所属や種名を決定すること)ってけっこう難しいです。
(*2)コスモス=宇宙
 植物のコスモスは”Cosmos”。英語では宇宙も”Cosmos”ですが、元になっている世界、宇宙、秩序を意味するギリシャ語では”kosmos”です。ちょっと違うけど、ま、いいか、書き始めちゃったし。
(*3)アルベルト・アインシュタイン
 相対性理論の基礎を築き上げた20世紀を代表する頭脳。”神はサイコロを振らない”もこの人の言葉。
 けっこうおちゃめなところもあって、舌を出している写真が有名。2008年にノーベル賞を受賞した物理学益川敏英が舌を出したのはこれのパロディです。
(*4)神様が人間を慈しみの目でみてくれるとは限りません
 宇宙創成SFの古典といえば、エドモンド・ハミルトンの”フェッセンデンの宇宙”ですが、こちらは惑星規模の災害をおこしたりとかやりたい破壊したりと放題。
(*5)君の瞳に恋してる
 1967年に発表されたオールディズの名曲。オリジナルを歌ったのは、フランキー・ヴァリ。


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