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2009年7月26日 - 2009年8月1日

トレイン イズ マイ ビジネス(車掌の英さん/広島の路面電車)

 ども、”トレイン イズ マイ スタディ(書斎)”のたいちろ~です。
 今回のお題は”通学電車の中では何して過ごす?”ですが、カンペキ読書派です。たいがい2~3冊ぐらいカバンに入れていてとっかえひっかえ読んでいます。
 今の家から会社まで1時間ぐらいですが、本を読んですごすので長距離通勤でもあまり苦になりません。
 読むのはその日の気分で、古典からラノベ、経済書からマンガまで。美少女文庫(*1)以外ならなんでもありです

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写真はたいちろ~さんの撮影。
広島の市電です。いろいろ種類があります。




【本】環状白馬線 車掌の英(はなぶさ)さん(都戸 利律 白泉社)
 英さんは大きく円を描いてシティを循環する環状白馬線の車掌さん。お客さんに感謝されても”車掌だからな”とツンケンした青年車掌(*2)さんです。でも根はとても優しい人。
 電車に乗り合わせ、そして降りていく人とのふれあいを描いたハートフルなマンガ
【旅行】広島の路面電車
 広島県を走る市電で、通称”広電(ひろでん)電車”。輸送人員と路線延長は、路面電車としては日本一なのだそうです。広島で乗ったタクシーの運転手さんによると”日本中や世界各国で走っていた車両を持ってきた「動く電車の博物館」”。


 さて、電車の出てくる本ってけっこう読みましたが、ふと考えると長距離を走る電車を舞台にしたのが多いですね。”駅弁ひとり旅(*3)”とか、”オリエント急行殺人事件(*4)”とか、”銀河鉄道の夜(*5)”とか、”銀河鉄道999(*6)”とか。歴史書だと”満鉄(*7)”の本なんかもありました。以外に通勤に使うような電車の話は少なくて、”阪急電車(*8)”とか”小林一三(*9)”ぐらいでしょうか。
 その中でも変り種が今回紹介する”環状白馬線 車掌の英(はなぶさ)さん”。珍しく環状線(*10)モノです。
 
 毎日通勤しているのは、満員の16両編成とロマンもなにもありませんが、英さんの乗っている電車は数両編成で、ボックス席もあるんですが、イメージは路面電車。先日広島に行きましたが、ここの市電がなんとなく英さんの電車っぽくって、写真をとりました。広島の市電はワンマンカーなので車掌さんがいるわけではないですが、東京にいると運転手さんすらほとんど見ることがありません。運転手さんが見えるだけでも”電車は人が動かしている”とう実感があります。

  誰が始めに言い出したのかわかんないけど
  何かいいことあるんだって
  車掌の英さんの電車にのると

 特に大きなできごとがあるとかじゃなく、車掌の英さんとお客さんのちょっとした会話とそれをとりまくエピソードがあるだけなんですが、なぜかこの人とかかわると”いいこと”あるんですね。結婚相手が見つかったり、就職先が見つかったり、犬を飼ってもらえたり。不思議に”幸せになる”というより”いいこと”っていう言葉がぴったりします。

  出会いと別れは同じだけあるが
  一番多いのは”出会わない”だ
  一緒に時を過ごせるのは 乗り合わせた人だけだ
  だから
  ほんの少しでも乗り合わせたなら幸運だ


 こう思えるからこそ、英さんはお客さんとの関係を大切にしているんでしょうか。

 考えたら本も同じで、一番多いのは”読めなかった本”。読むことができるのは手にとった本だけ。だから良い本にめぐり合えることは幸運なんでしょうね。

 ”車掌の英さん”はどこが面白いのかと聞かれると困ってしまいます。特に大きな事件があるわけでも、燃えるような恋愛があるわけでもないんですが、それでも面白いんです。たまに、こういった説明不能の面白い本というのがありますが、これはそんな一冊。
 なんとなく手に取った本ですが、この本にめぐり合えた私は幸運です


《脚注》
(*1)美少女文庫
 フランス書院が発売しているライトなポルノノベルのレーベル。女子高生とかメイドとかが主人公なエッチ小説。萌え絵のイラストが特徴。これをブックカバーなしで電車の中で読む勇気はありません。でも、家でも読んでませんよ、奥様。
(*2)青年車掌
 最初は女の人かと思いました。表題の”トレイン イズ マイ ビジネス”は電車で働く人だから。探偵小説に出てくる”トラブル イズ マイ ビジネス(揉め事は俺の仕事だ)”のもじりです。
(*3)駅弁ひとり旅(駅弁ひとり旅:櫻井 寛 (著), はやせ 淳 (マンガ)  双葉社)
  弁当屋のおやじが全国の駅弁を食べ歩くマンガ。ひとり旅といいながらほとんど美人との二人旅。
(*4)オリエント急行殺人事件(アガサ・クリスティ ハヤカワ文庫他)
 オリエント急行の寝台車両の個室の中で、初老のアメリカ人富豪が殺された。名探偵エルキュール・ポアロの登場する推理小説の名作。
(*5) 銀河鉄道の夜 (宮沢 賢治 新潮文庫他)
 ジョバンニとカムパネルラの二人が銀河鉄道に乗って旅をする宮沢賢治童話の代表作。
(*6)銀河鉄道999(松本 零士 少年画報社他)
 機械の体をタダでくれる星へと旅をする星野鉄郎と謎の美女メーテル。マンガでのちにアニメ化。おそらく走行距離ではNo.1。
(*7)満鉄
 正式名称は”南満州鉄道株式会社”。日露戦争後から第二次世界大戦の終結まで中国東北部(旧満州)に存在した日本の鉄道会社。ここで走っていた特急「あじあ」の話を鉄道ヲタクにさせると長~~くなります。
(*8)阪急電車(有川 浩 幻冬舎)
 関西のローカル線(失礼!)、阪急電車のしかも今津線というマイナーな路線を舞台にした連作集。電車に乗り合わせた人たちのエピソードが連なっていくお話が秀逸です。
 私は”有川浩にはずれなし!”と言い切るほどこの作家のファンです。
(*9)小林一三
 阪急電車の創始者にして、宝塚少女歌劇団の生みの親。明治の人ながら、これほどユニークな財界人はちょっといません。
(*10)環状線
 環状型の路線を”環状線”というのは関西の人。東京では”山手線。東京に来てすぐ”環状線のホームはどこですか?”と聞いたら変なカオされました。

聖地巡礼、赤福氷!(半分の月がのぼる空/赤福氷/砲台山)

 ども、かき氷はウィスキー派(*1)のたいちろ~です。
 さて、今回のお題は”かき氷で一番好きな味は何?”ですが、個人的には練乳とかカルピスとは乳製品系が好みです。でもこれでは面白くないのでちょっとひねって地域限定、夏季限定(*2)の”赤福氷”をご紹介。
 なんでそんなマイナーな食べ物を知っているかというと、”半分の月がのぼる空”で主人公の少年、少女がデートで食べに行っているからです。

Aka_koori_pic_01 0807263 左の写真が赤福氷。赤福のホームページから
右は砲台山から望む伊勢市。たいちろ~さんの撮影です。



【本】半分の月がのぼる空(橋本紡 電撃文庫)
 病弱な文学少女,秋庭 里香(あきば りか)と、へたれだけどやるときはやる戎崎 裕一(えざき ゆういち)の伊勢を舞台にした”Boy Meets Girl”のライトノベル。
 いつ死んでもおかしくない里香の病状から、ハッピーエンドが約束されていない恋愛小説。でも、”生きている限りがんばれ!”とお父さんは思ってしまうのです。
【旅行】伊勢の赤福氷
 写真ではわかりませんが、抹茶のかき氷の底に赤福餅がはいっています。私は抹茶がだめなので(*3)ムリいってみぞれ味にしてもらいました。
【旅行】砲台山
 里香と裕一がつきあうきっかけになった山。正式名称は”虎尾山(とらおやま)”。2008年に訪れた時は工事中だったので、道を探すのにずいぶん苦労しました。


 実は、”半分の月がのぼる空が面白いよ”と紹介してくれたのは、友人の高校生の息子さん。いや~、はまりました。主人公の秋庭 里香は、病弱、ツンデレ、ロングヘアという三拍子そろった正統派文学美少女!(*5)
 で、この本を読んで昨年伊勢に行ってまいりました。いわゆる財力にモノをいわした大人の聖地巡礼Part2(*6)です。

 伊勢神宮の内宮、外宮(げくう)、砲台山などをまわって、伊勢うどんと、まんぷく食堂(小説ではまんぷく亭)のからあげ丼を食しました。で、仕上げが”赤福氷”! 熱射病になりそうな炎天下を自転車で走り回っていたので(*7)、とってもおいしゅうございました。
 伊勢に在住の方か小説を読まれた方でないと伊勢神宮以外は何の話かわからないかもしれませんが、こういった小説の舞台になった街に行くのはけっこう好きです。”時をかける少女”の尾道とかメジャーな観光地もありますし、NHKの大河ドラマなんかだと街ぐるみで観光誘致しています。
 だから、ライトノベルやマンガだからといってヲタク扱いするのはいかがなものかと・・・
 
 ”半分の月がのぼる空”は全8巻とけっこう長いですが、意外と伊勢の狭い範囲がモデルになっています。里香が病弱なこともあって、舞台が病院のシーンが多いですがその分文学作品が多くモチーフになっています。特に2巻に出てくる”銀河鉄道の夜(*8)”なんかはいいですね。仲良しのジョバンニとカンパネルラは、里香と裕一の淡い付き合いを連想させますし。二人の乗った銀河鉄道を病院のベットから見上げる里香なんてのはとっても絵になります。
 そういえば、昨日、鉄道ヲタクの友人と呑んでまして、”いわて銀河鉄道”の話が出ましたね。こんど乗りに行ってみようかな。


 ところで、”半分の月がのぼる空”って、ライトノベルとしては唯一「原作小説・漫画・ドラマCD・アニメ実写ドラマ(*9)・実写映画」の6分野で作品化されているとのこと(Wikipediaより)。にもかかわらず、昨年伊勢を訪問したときはほとんど観光化されていませんでしたね。工事中だったこともありますが、砲台山の看板すら出ていなかったし。でも、この本のファンらしい学生がちゃんと4名も来てました。
 ”伊勢神宮”だけを観光資源だよりにしているとしっぺ返しを食いますよ。少しは鷲宮町(*10)を見習って欲しいものです。

 イラストの山本ケイジの絵がいかにもラノベ系なので、おぢさんが電車の中で素で読むには恥ずかしいかもしれませんが、けっこうのめりこめます。虚心坦懐に読んでください。


《脚注》
(*1)かき氷はウィスキー派
 さすがに反則かと思ったので本編では書いていませんが、正確には冬の飲み物。氷点下の雪山でパウダースノーをコップに入れてウィスキーを入れるのが正しい飲み方。学生時代はこれをやりたいがために雪山に登っていたといっても過言ではありません。
(*2)地域限定、夏季限定
 赤福のホームページによると、4月24日(本店のみ6月26日)からの夏季限定で、食べることのできる店も三重県で6ケ所、名古屋で2ケ所のみです。
(*3)私は抹茶がだめなので
  たいがい好き嫌いはないんですが、抹茶だけはダメ。でも、奥様は日本茶インストラクター(*4)の資格保有者なんですね~~
(*4)日本茶インストラクター
 日本茶インストラクター協会による資格試験があります。この協会は日本茶の更なる普及活動の推進を行うことを目的に設立されたNPO法人。
 奥様によると、資格保有者はお茶屋さんの人か、農政担当の公務員が多いとのこと。
(*5)病弱、ツンデレ、ロングヘヤーという~
 すいません、おもいっきりストライクゾーンど真ん中なんです。
(*6)聖地巡礼Part2
 Part1は”鎌倉にうさまんを食べに行く”。こちらは桜庭一樹の”荒野”から。詳しくはこちらで
(*7)自転車で走り回っていたので
 内宮、外宮など、少し離れているのでレンタサイクルを借りて回りました。自転車で移動するには適当な距離ですが、夏に行かれる方は水分補給をしっかり取ってください。
(*8)銀河鉄道の夜
 宮沢賢治による童話の傑作。孤独な少年ジョバンニと、友人カムパネルラの二人が銀河鉄道に乗って旅をするという物語。少年の友情、銀河鉄道の車窓から見える星々のイマジネーションが文学少女の心をがっちりとらえているのか、本書のほかに野村 美月の“文学少女シリーズ”なんかにも出てきます。私もこれらをきっかけに読みました。
(*9)実写ドラマ
 橋本淳に、石田未来に、吉野公佳にとけっこうなメンバーが出演していますが、ロケ地は伊勢市ではなく栃木県佐野市。このへんにも伊勢市の脇の甘さが見受けられます。
(*10)鷲宮町
 埼玉県の北東にある町ですが、この街にある”鷲宮神社”はアニメの”らき☆すた”に登場したことで初詣の参拝客が2007年の13万人から09年には県内第2位の42万人となりました。今では、”平成のお伊勢参り”と称されるそうです。
 いわゆる”萌えおこし”の代表例。詳しくは、北海道大学観光学高等研究センター研究チームのHPをご参照ください。

不完全な死体が輝く時(ぼくらの世界/松葉 他)

 ども、昨日、高校時代の友達と呑みにいってたたいちろ~です。
 さて、今回のお題は”線香花火のような、はかなく切ない思い出”ですが、涙腺のゆるんだ中年のおぢさんにこのネタはいけませんぜ! 泣いてしまうやろー(*1)
 高校時代って、卒業という約束された別れに向かってひた走るもの。でも、今でもこうやって会えるっていうのはすばらしいことなんでしょうね。

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写真はたいちろ~さんの撮影
近所の松葉。


【本】ぼくらの世界(栗本薫 講談社文庫)
 ぼく栗本薫、ぼくが書いた「ぼくらの時代」という推理小説が、かの有名なシャーロッホームズ賞を貰うことになったんだ。ところがその授賞式で殺人事件が起こって・・・
 モラトリアム青年、薫くんに、過去の夢を捨てきれない老作家、老作家を見返すことだけが人生の目的になった作家志望の青年・・・
 それぞれの登場人物が夢と挫折をもった推理小説的青春小説。
【花】牡丹⇒松葉⇒柳⇒散り菊
 調べて初めて知りましたが、線香花火って先に玉ができる時を”牡丹”、火花をちらす時を”松葉”、激しく燃える時を”柳”、消える直前の”散り菊”というのだそうです。


 ”ぼくは不完全な死体として生まれ、完全な死体になる(*2)”と言ったのは寺山修司。昨日会った友人達は、高校2年生のときに知り合ったんで、実際に一緒だったのはほぼ2年間。完全な死体になるまであとどれぐらいかはわかりませんが、おそらく人生の何十分の一の時間。でもかけがいのない時間
 今では子供達が高校生になって、こちらは親の立場になりましたが、子供達はそんなすてきな高校生活を送ったんでしょうか?


 栗本薫さんが亡くなられたのをきっかけに、改めて”ぼくらシリーズ(*3)”を読み返しています。ちょうど昨日読んでいたのが3作目の”ぼくらの世界”。この作品は主人公の栗本薫がシャーロック・ホームズ賞を受賞して作家としてデビューし、友人のヤスヒコは結婚し、同じく友人の信はインドに旅立つエピソードが書かれています。かつては”三位一体”とまで言われたグループがそれぞれの道を歩き出すところで終わっています

  その夢は消えたけれども、そのかわり、ぼくも走る。
  信も、ヤスも、走っていれば、
  いつかきっとどこかで会えるにちがいない。
(本書より)

 結局、人は生きている以上、前に進まざるを得ないんでしょうね。河に浮ぶ木の葉が自分ではなにもしなくても、川下に流れていくように。

  甲野乙骨は意気軒昂と、書きあげられら出版界が震撼するはずの大作について
  話していたではないか
  彼には老いたりといえど気概とも、夢もあるのだ。
   (中略)
  ただひとつ云えるのは、
  ぼくは、死ぬときまで次作の構想をねりつづけていた正史のように死にたい(*4)、
  ということだけだった。(本書より)

 栗本薫さんが亡くなられた時もやはりこう思われていたのでしょうか。今回出席した友人も”グインサーガの続きはどうなるのか?(*5)”と言ってました。

 チャップリンではありませんが、老いてなお”次こそが最高(*6)”といえる気持ちを持ち続けることが大切なのかも。線香花火のように、”もう一回光るかな?”という期待と不安こそが刹那の美なのかもしれません。

 でも、そんなことを考えなくてもあってくれるのが友達でもあるんでしょうけどね。

 追記
  出席できなかった元カノからのメール
   ”あっかんべ~


《脚注》
(*1)泣いてしまうやろー
 元ネタは若手お笑いコンビ、Wエンジンの”惚れてまうやろー!”。こういったシチュエーションコメディって、けっこう好きです。
(*2)ぼくは不完全な死体として生まれ、完全な死体になる
  昭和十年十二月十日に ぼくは不完全な死体として生まれ
  何十年かゝって 完全な死体となるのである

  そのときが来たら ぼくは思いあたるだろう
  青森県浦町字橋本の 小さな陽あたりのいゝ家の庭で
  外に向って育ちすぎた桜の木が
  内部から成長をはじめるときが来たことを
  子供の頃、ぼくは 汽車の口真似が上手かった
  ぼくは 世界の涯てが
  自分自身の夢のなかにしかないことを 知っていたのだ
    寺山修司 ”懐かしのわが家”より
(*3)ぼくらシリーズ
 栗本薫、石森信、加藤泰彦を主人公とする推理小説。”ぼくらの時代(第24回江戸川乱歩賞受賞)”、”ぼくらの気持”、”ぼくらの世界”の三部作のこと。
(*4)正史のように死にたい
  推理作家”横溝 正史”のこと。”犬神家の一族”をはじめとする名探偵”金田一耕助”の生みの親。
 ちなみに、並び称される松本清張の作家デビューは40歳を超えてからなので、おぢさん世代も捨てたもんではありません
(*5)グインサーガの続きはどうなるのか?
 栗本薫のヒロイック・ファンタジー小説。2009年7月現在で正伝が127巻、外伝が21巻とギネス非公認ながら、単一の作家では世界最長の小説。まだ読んでいませんが、栗本薫の死去に伴い今後どうなるかはSFファンの注目するところです。
(*6)次こそが最高
 喜劇王チャップリンに対して、「あなたの代表作は何ですか?」という記者の質問に対するてチャップリンの答え。
 「NEXT ONE(次回作だ)」

名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ(終戦のローレライ/椰子)

 ども、ふるさとの岸を離れて単身赴任中のたいちろ~です。
 さて、今回のお題は”あなたが海で聴きたい曲は?”ですが、おそらく、このネタで最も暗い選曲”椰子の実(*1)”でしょうかね。
 夏の海といえば、TUBEにサザンに加山雄三にと、明るい曲が目白押しというになにゆえにこの曲かというと、私の住んでいる町の夕方にこの曲がかかるんですね。ちょうど”夕焼け小焼け”のノリです。

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写真はたいちろ~さんの撮影
神戸のハーバーランドにて




【本】終戦のローレライ(福井晴敏 講談社文庫他)
 ナチス・ドイツが開発した特殊兵器「ローレライシステム」をした潜水艦伊五〇七(*2)は、3発目の原爆投下を阻止すべく、単身アメリカ軍に挑む・・・
 2005年に香椎由宇(仮面ライダーの妻)主演により”ローレライ”の名で映画化。
【花】椰子の実
 英語ではココナッツ (coconut) 。果実は繊維質の厚い殻に包まれていて、中に大きな胚乳(お菓子なんかで使われる部分)があるのが特徴。
 ジャイアント馬場が得意としたプロレスのワザに”椰子の実割り(ココナッツクラッシュ)”というのがありましたが、本当にこれで割れるかどうかは不明。


  名も知らぬ 遠き島より
  流れ寄る 椰子の実一つ
  故郷(ふるさと)の岸を 離れて
  汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)


 この曲の作詞は島崎藤村(*3)。椰子の実の漂泊の旅に自分が故郷を離れてさまよう憂いを重ねて読んだという詩です。(全詩はこちらから
 いや~、単身赴任のおとうさんとしては、心にしみる名曲です。

 で、今回の本ですが、この曲がモチーフのひとつになっているのが”終戦のローレライ”。軍事小説のヒットメーカ、福井晴敏が終戦をテーマに扱った作品です。
 テイストとしては、”沈黙の艦隊”に”機動戦士ガンダム”をぶち込んで”宇宙戦艦ヤマト”でかき回したような作品(*4)。ま、これだけ聞いて話の想像がつく人がいらたお化けでしょうから解説を少し。
 潜水艦に搭載された「ローレライシステム」とは、主人公、パウラ・A・エブナーの水を媒介とした感知能力を見える化するシステム。そのお兄さんが、元ナチス親衛隊士官のフリッツ・S・エブナー。ガンダムのシャア少佐とセイラさんを彷彿とさせるお二人。パウラの能力はララァっぽいし(*5)。
 このシステムをたよりに、アメリカ軍の艦隊に阻止する絶望的な戦いを挑むことになります。

 で、この物語の中でエブナーが歌うのが”椰子の実”の歌。

   思いやる 八重(やえ)の汐々(しおじお)
  いずれの日にか 国に帰らん


 索敵の切り札である「ローレライシステム」を切り離したあと、沈没していく艦の中で歌われるこの曲は感動的なシーンです。
 映画で使われているヘイリーの”モーツァルトの子守唄”も捨てがたいですが、音楽の使われ方としては、原作のほうが好きですね。

 ”終戦のローレライ”は文庫本4冊とけっこうなボリュームですが、一気に読めました。映画”ローレライ”の原作ということで、基本的な話の流れは同じですが話の広がりは原作のほうが上。映画でも2~3部作にしてもいいから原作のエピソードをもっと入れて欲しかったです。
 日本の叙情歌が小説でこれほどまでに上手く使われている例はなかなかありません。
 映画を見た方にも、そうでない方にもお勧めの一冊です。

 ところで私は、いずれの日にか 家族の元に帰ることができるでしょうか?


《脚注》
(*1)椰子の実
 上ではスタンダードなところで”夏川りみバージョン”にリンクしますが、ジャズ風の”姿月あさとバージョン”とか妙に明るい”矢野顕子バージョン”もあります。お好きなアレンジでお楽しみ下さい。
(*2)伊五〇七
 ”伊XX”は、大日本帝国海軍の潜水艦につくナンバー。
 ちなみに、東宝の特撮映画の傑作”海底軍艦”に 登場するスーパーメカ”轟天号(ごうてんごう)”の番号は”伊403”。”ドリルは男のロマンだ!”の原点のひとつ。
(*3)島崎藤村
  詩集”若菜集”、小説”夜明け前”などで知られる詩人、小説家。”若菜集”に収録された”初恋”は高校時代にどきどきしながら読みました。
(*4)”沈黙の艦隊”に”機動戦士ガンダム”をぶち込んで~
 ”沈黙の艦隊”はかわぐちかいじによる潜水艦マンガの傑作、”機動戦士ガンダム”はニュータイプ(一種の超能力者)による戦いを描いたロボットアニメの金字塔、”宇宙戦艦ヤマト”は松本零士原作のSFアニメの名作。完結編で沖田艦長とともに自沈。
(*5)ガンダムのシャア少佐とセイラさんを彷彿とさせるお二人
 そういえば、福井晴敏は、”∀(ターンエー)ガンダム”のノベライゼーション”月に繭 地には果実”とか書いてるし。アニメは見ていませんが、ノベライゼーションはけっこう面白かったです。

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