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これがホントのハネムーン(第六大陸/花束)

 ども、月よりの使者、たいちろ~です(ウソです)。
 先日、”宇宙で暮らす道具学”という本を読みましたが、この中に月面でコンクリートを作る方法というのが載っていました。月の砂(レゴリス)に水を加え、太陽熱による処理を行うと、コンクリート状の建材ができるとのこと。つまり、技術的には月面に建物を作ることは可能とのことです(*1)。へえ~~~
 ということで、今回はこの技術を使って月面に結婚式場を作るという”第六大陸”の紹介であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
近所の花屋さんで見つけたミニ花束です。






【本】第六大陸(小川 一水 ハヤカワ文庫)
 極限環境下での建設事業で実績のある御鳥羽総合建設が受注したのは、月面での結婚式場”第六大陸”。依頼主はレジャー企業の会長、桃園寺閃之助とその孫娘 妙。工期10年、総工費1500億円の民間企業版宇宙開発の行方は? そして妙と現場監督(?)青峰との恋の行方は?
 2004年、第35回星雲賞日本長編部門を受賞した名作です。
【花】花束
 花束と言うと結婚式のブーケ(bouquet)を連想されるかもしれませんがこれはフランス語。英語では”a bunch of flowers”。
 題名に”花束”はつく小説としては”アルジャーノンに花束を(*2)”がありますが、この原題は”Flowers for Algernon”です。

 ”月面に結婚式場を作る”というと、コミカルな小説と思われるかも知れませんが、”第六大陸”は日本を代表するといっても過言ではないハードSFです。
 この小説の中での技術面でのブレイクスルーは”トロフィー”といわれるハイブリット型のロケットエンジン。現在のロケットの輸送コストは低軌道(高度350~1400km)ですら1キロの荷物に170万円ほどかかるとのこと(宇宙エレベータ協会HPより)。”トロフィー”はこれをペイロード(積載重量)10倍、製造コスト1/20にする技術。

 もうひとつの”ブレークスルー”である水の確保ですが、これは2009年10月9日にNASAの月クレーター観測機「エルクロス」が月の南極付近面に水があるか(*3)の調査を行いました(National Geographic Newsより)。”第六大陸”でも建築現場を南極に設定しています。本書の発行は2003年ですがちゃんと抑えるべきところを抑えているのはさすが。
 水があれば、生存に必要な酸素、推進剤としての水素の作成が可能になります。月の重力が1/6であることと、アポロ世代のおぢさんはアポロ11号の月着陸船の小ささから(*4)、帰りの燃料って少なくて済むと思っていますが、実際にはそれなりに必要。つまり燃料の現地調達ができれば、帰りの燃料を地球から持っていく必要がなくなるので打ち上げコストの削減、あるいは持っていく荷物を他のものに振り向けることができ、こちらでもコスト削減につながります。
 また、上記のレゴリスを使ったコンクリートの作成も、月に水があればわざわざ地球から持っていく必要がないので、こちらもコスト削減につながります。普段、何気なく飲んでいる水ですが、けっこう水って偉大なんですね。

 で、こういったことが民間企業でできるかというと、経済原理から言うと投資・回収ができるかどうかにかかっています。本書中では、中国の宇宙船に同乗させてもらう費用が大人一人20億円、機材等の運送コストだけで現状の技術では1.2兆円の試算としています。これを上記のコスト削減で、月までの運賃を1億円、総工費1500億円に圧縮して事業化していますが、これとて本書の中では1億円のお金を払う人を月4人20年間確保する必要があるとのシミュレーション結果。
 私見ですが、私は事業としては成立すると思います。1億円というと大金ですが、結局それでも行ってみたいという気持ちがある人がいる限り、それを抑えることはできないでしょう。それに、現在の企業の広告宣伝費を考えれば懸賞としても出せない価格ではないかと。それに低重力化での素材産業、科学実験等の需要は相当にあるのではないかと見ています。

 それでも、民間企業である以上重要なのは資金繰り。この計画では工期10年と見積もっていますが、逆に言うとそれまで大きな収入が見込めないということ。施工主の妙さんが過労で倒れたとき、第3のブレークスルーがあります。それは、妙さんの病室に届けられた無数のお見舞いの花束

  Take care of yourself,Moon Princess.--A.B.Navamukungman KL
  聞いたこともない名前だった。マレーシアからのものらしい。
  次のカードのもそうだった。次も、その次も。
  個人名もあれば、第六大陸に関係していない企業からのものも
  どこかの国の公人のものもある。

   (中略)
  数百の花束。優しさの海。名も知らぬ人からの声。
  妙は呆然とする。こんな応援は予測していなかった。
(本書より)

 つまりは、”人の想い”こそがブレークスルーの原動力なんですね。
 これを受けて、妙はさらに先に進むことになります。

 ”なぜ、宇宙開発に莫大な税金を使うのだ”という議論は昔からありますが、とどのつまりは”行ってみたいから”という純粋な気持ちを超えるものはないのかもしれません。もっとも、それでは稟議書が書けないのがお役所のつらいとこなんでしょうが(*5)。
 むしろ、妙さんのように個人資産を使ってでも計画を推進するほうがいいのかもしれませんんね。宇宙旅行のコストを劇的に下げるといわれている宇宙エレベータにしても、総工費は1兆円程度とのこと(*6)。この程度の費用であれば、ビル・ゲイツなら5~6ケ作れます

 まじめな話、数百万円、豪華客船クルーズ程度のお金で宇宙に行ければ相当な需要があるでしょう。私だって退職金で言っちゃうかも・・・

《脚注》
(*1)技術的には月面に建物を作ることは可能とのことです
 現実的にはクリアすべき課題(水の確保、製造プラントの建築、それらの輸送コスト等)が山積みですが、できるとわかればやってみたくなるのが人間の性。
 レゴリスの解説は大阪市立科学館のホームページをどうぞ。
(*2) アルジャーノンに花束を
 ダニエル・キイスによるSF小説。知的障害の為、幼児並の知能しか持たないが心の優しい青年チャーリーは、手術により天才的な頭脳を持つにいたる。しかし、この手術には致命的な欠陥があり・・・
 最終章にある”アルジャーノンのお墓にお花をあげてください”は涙なしには読めません。名作です。
(*3)月の南極付近面に水があるか
 水がないと思われている月ですが、水を主成分とする彗星が月に衝突し、かつ太陽の当たらない南極のクレータの影であれば氷の形で存在するのではないかと推測されています。
(*4)アポロ11号の月着陸船の小ささから
 高さ7m、最大重量 15.5t。"APOLLO MANIACS"のホームページにCGなどが掲載されていますので、ご興味のあるかたはどうぞ。
(*5)それでは稟議書が書けないのが~
 ダムが必要とかそうでないとかの議論をするよりよっぽど建設的ではないかと思ってしまします。それに経済的な波及効果も大きそうですし。
 いっそのことロケット開発の予算を文部科学省から国土交通省に移管したらどうでしょうね。ロケットだって交通機関なんだから。
(*6)総工費は1兆円程度とのこと
 宇宙エレベータとは、静止軌道から丈夫な糸(テザー)をたらしてエレベータで宇宙に出るというもの。試算は宇宙エレベータ協会によるものです。理論的には高校物理程度のものですし、技術的にはカーボンナノチューブの発明でまったく空想上のものではなくなってきています。
 ちなみにビル・ゲイツの個人資産は580億ドル、日本円にして約6兆円です(2008年度フォーブス長者番付より)

 奥様ブログ 「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」はこちら

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