« 名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ(終戦のローレライ/椰子) | トップページ | 聖地巡礼、赤福氷!(半分の月がのぼる空/赤福氷/砲台山) »

不完全な死体が輝く時(ぼくらの世界/松葉 他)

 ども、昨日、高校時代の友達と呑みにいってたたいちろ~です。
 さて、今回のお題は”線香花火のような、はかなく切ない思い出”ですが、涙腺のゆるんだ中年のおぢさんにこのネタはいけませんぜ! 泣いてしまうやろー(*1)
 高校時代って、卒業という約束された別れに向かってひた走るもの。でも、今でもこうやって会えるっていうのはすばらしいことなんでしょうね。

Dcf_0274
写真はたいちろ~さんの撮影
近所の松葉。


【本】ぼくらの世界(栗本薫 講談社文庫)
 ぼく栗本薫、ぼくが書いた「ぼくらの時代」という推理小説が、かの有名なシャーロッホームズ賞を貰うことになったんだ。ところがその授賞式で殺人事件が起こって・・・
 モラトリアム青年、薫くんに、過去の夢を捨てきれない老作家、老作家を見返すことだけが人生の目的になった作家志望の青年・・・
 それぞれの登場人物が夢と挫折をもった推理小説的青春小説。
【花】牡丹⇒松葉⇒柳⇒散り菊
 調べて初めて知りましたが、線香花火って先に玉ができる時を”牡丹”、火花をちらす時を”松葉”、激しく燃える時を”柳”、消える直前の”散り菊”というのだそうです。


 ”ぼくは不完全な死体として生まれ、完全な死体になる(*2)”と言ったのは寺山修司。昨日会った友人達は、高校2年生のときに知り合ったんで、実際に一緒だったのはほぼ2年間。完全な死体になるまであとどれぐらいかはわかりませんが、おそらく人生の何十分の一の時間。でもかけがいのない時間
 今では子供達が高校生になって、こちらは親の立場になりましたが、子供達はそんなすてきな高校生活を送ったんでしょうか?


 栗本薫さんが亡くなられたのをきっかけに、改めて”ぼくらシリーズ(*3)”を読み返しています。ちょうど昨日読んでいたのが3作目の”ぼくらの世界”。この作品は主人公の栗本薫がシャーロック・ホームズ賞を受賞して作家としてデビューし、友人のヤスヒコは結婚し、同じく友人の信はインドに旅立つエピソードが書かれています。かつては”三位一体”とまで言われたグループがそれぞれの道を歩き出すところで終わっています

  その夢は消えたけれども、そのかわり、ぼくも走る。
  信も、ヤスも、走っていれば、
  いつかきっとどこかで会えるにちがいない。
(本書より)

 結局、人は生きている以上、前に進まざるを得ないんでしょうね。河に浮ぶ木の葉が自分ではなにもしなくても、川下に流れていくように。

  甲野乙骨は意気軒昂と、書きあげられら出版界が震撼するはずの大作について
  話していたではないか
  彼には老いたりといえど気概とも、夢もあるのだ。
   (中略)
  ただひとつ云えるのは、
  ぼくは、死ぬときまで次作の構想をねりつづけていた正史のように死にたい(*4)、
  ということだけだった。(本書より)

 栗本薫さんが亡くなられた時もやはりこう思われていたのでしょうか。今回出席した友人も”グインサーガの続きはどうなるのか?(*5)”と言ってました。

 チャップリンではありませんが、老いてなお”次こそが最高(*6)”といえる気持ちを持ち続けることが大切なのかも。線香花火のように、”もう一回光るかな?”という期待と不安こそが刹那の美なのかもしれません。

 でも、そんなことを考えなくてもあってくれるのが友達でもあるんでしょうけどね。

 追記
  出席できなかった元カノからのメール
   ”あっかんべ~


《脚注》
(*1)泣いてしまうやろー
 元ネタは若手お笑いコンビ、Wエンジンの”惚れてまうやろー!”。こういったシチュエーションコメディって、けっこう好きです。
(*2)ぼくは不完全な死体として生まれ、完全な死体になる
  昭和十年十二月十日に ぼくは不完全な死体として生まれ
  何十年かゝって 完全な死体となるのである

  そのときが来たら ぼくは思いあたるだろう
  青森県浦町字橋本の 小さな陽あたりのいゝ家の庭で
  外に向って育ちすぎた桜の木が
  内部から成長をはじめるときが来たことを
  子供の頃、ぼくは 汽車の口真似が上手かった
  ぼくは 世界の涯てが
  自分自身の夢のなかにしかないことを 知っていたのだ
    寺山修司 ”懐かしのわが家”より
(*3)ぼくらシリーズ
 栗本薫、石森信、加藤泰彦を主人公とする推理小説。”ぼくらの時代(第24回江戸川乱歩賞受賞)”、”ぼくらの気持”、”ぼくらの世界”の三部作のこと。
(*4)正史のように死にたい
  推理作家”横溝 正史”のこと。”犬神家の一族”をはじめとする名探偵”金田一耕助”の生みの親。
 ちなみに、並び称される松本清張の作家デビューは40歳を超えてからなので、おぢさん世代も捨てたもんではありません
(*5)グインサーガの続きはどうなるのか?
 栗本薫のヒロイック・ファンタジー小説。2009年7月現在で正伝が127巻、外伝が21巻とギネス非公認ながら、単一の作家では世界最長の小説。まだ読んでいませんが、栗本薫の死去に伴い今後どうなるかはSFファンの注目するところです。
(*6)次こそが最高
 喜劇王チャップリンに対して、「あなたの代表作は何ですか?」という記者の質問に対するてチャップリンの答え。
 「NEXT ONE(次回作だ)」

« 名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ(終戦のローレライ/椰子) | トップページ | 聖地巡礼、赤福氷!(半分の月がのぼる空/赤福氷/砲台山) »

小説」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

私も病気をして、今酒を飲んだら死んでも知らんぞとまで言われたら、さすがにおとなしくなるし、死という物を考えさせられるよなぁ。あと何年生きられるかわからんけど、まだドカンと一発!花火を打ち上げることをあきらめてませんよ。かつてあなたに”社会生活不適合症”と診断されたけど、自分勝手とあきらめの悪さが重なって、このさきどうなることやら。診断した責任上、処方箋を書いてくれ!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/528774/45746984

この記事へのトラックバック一覧です: 不完全な死体が輝く時(ぼくらの世界/松葉 他):

» 栗本薫 死去(グインサーガ) [ソーテックDC204、通販]
栗本薫 死去して、グインサーガが未完になってしまった。 [続きを読む]

» グインサーガ、第一巻 [ソーテックDC204、通販]
グインサーガ、第一巻ってこんな内容 [続きを読む]

« 名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ(終戦のローレライ/椰子) | トップページ | 聖地巡礼、赤福氷!(半分の月がのぼる空/赤福氷/砲台山) »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ