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元祖、二世将軍の行方は?(右大臣実朝/鶴岡八幡宮の大銀杏)

 ども、地縁にも血縁にも縁のないたいちろ~です。
 前回、”地価融解”という本を扱ったブログの中で”アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ”という太宰治の”右大臣実朝”の一節を引用したので、今回はこの本をご紹介。

2009021501
写真はたいちろ~さんの撮影。
鶴岡八幡宮の大銀杏(2009年2月15日)。




【本】右大臣実朝(太宰治 ちくま文庫 他)
 太宰治による、鎌倉幕府の第三代征夷大将軍”源実朝”をモデルとした小説。
amazon.comの紹介では”強い憧洒と新近感をもって精神の貴族のすがたを描いた長篇”とありますが、武家の棟梁が”貴族”と呼ばれること自体が堕落ではないか?
【旅行】鶴岡八幡宮の大銀杏(いちょう)
 鶴岡八幡宮は鎌倉市にある神社、武家源氏の守護神。大銀杏は樹齢千年余といわれる大木で、源実朝はこの木の陰に隠れていた源頼家の子公暁に殺害されたとされています。

 ”源実朝”のプロフィールを簡単に紹介するとを
   鎌倉幕府を開いた”源頼朝”と、初代執権 北条時政の娘”北条政子”の子
   12歳で鎌倉幕府の第三代征夷大将軍に就任(世襲による二世
   武士として初めて右大臣に任ぜられる
   歌人としても知られ(*1)、家集として金槐和歌集を編纂
   鶴岡八幡宮で兄の源頼家の子”公暁”に襲われ死亡、享年28歳。
   源氏直系の最後の将軍となり、以後、執権の北条氏が幕府の実権を握る

 日本史と古文の時間で習いましたが、覚えてますか?(*2)

 太宰治の小説では、源実朝が17歳のころから、公暁に暗殺されるまでを描いています。確かに、”私人”としては教養人であり、人間的にはいい人なんでしょう。太宰自体はかなり好意的な書き方をしています。しかし、武家の棟梁という、”政治家=公人”としてみると、堕落していく様子のように私は読めました。

  アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。
  人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。


 これは、冒頭近くで平家の物語を聞きながら”平家ハアカルイ”に続く言葉。源実朝に言わしめています。
 のちに、右大臣就任というが外見的には明るさの絶頂期(*3)の直後である建保7年(1219年)1月27日に源頼家の子公暁に殺害されます。まさに、明るさは滅びの色だったわけです。

  祖母上(*4)だって言っている
  あの子は生まれつき、白痴だったのです、と言っていた
(本書より)

 公暁の言葉です。実の母がわが子を白痴扱いするのもどうかと思いますが、人間的な聡明さと、政治家としての資質はまた別なのかも。本書中に源実朝が宋(中国)へ渡る計画をたてるエピソードが出ていますが、1年の将軍の不在をいさめる人に対し、

  タッタ一年ノオ留守番モデキヌヨウデハ、重臣ノ甲斐ガアリマセヌ(本書より)

と答えるようでは、政治家の発言としては問題でしょう。北条政子という人は、母親としてではなく政治家としての冷徹さが勝っていたのかもしれません。

 昨今、二世議員をどうするかとの議論がいろいろ出ていますが、問題は本人ではなく周辺にあるのでは? 私個人としては、職業選択の自由が保障されている以上”政治家になるな”という議論には賛成しかねますが、かといって政治家の資質が遺伝するとも思っていません。”息子、娘だから”といって無条件に世襲を受け入れるほうが問題ですし、それを公約で縛らざるを得ないという実態こそがもっと問題だと思います。

 結局、公暁に殺害されるわけですが、その場所が鶴岡八幡宮の大銀杏。本殿に上がる石段の横にあります。たまたま今年の2月に訪れた時にとった写真ですが、ぜんぜんそんなこと知りませんでした。源実朝が殺されたのは1月なので、こんな大木ではないにしても季節的にはほぼこんな感じだったんでしょうか。

 余談ですが、太宰治という人、自殺未遂、心中未遂、薬物中毒と無頼派の作家として有名ですが、意外にも青森県下有数の大地主の息子で、政治家を輩出している名家の出身です。本人も東京帝国大学(現東京大学)文学部に入学しているので、できが悪かったわけではないんでしょうが、人間的にはいろいろあったんでしょうね。

 私が読んだのは図書館で借りた”ちくま文庫”に収録されたもの。たまには、昭和初期の名作に触れるのもいいかも。ただ、読まれるのであれば新字体、現代かなづかい版のほうをお勧めします。これより前に旧漢字版を読みかけましたが、挫折してちくま版を借り直しました。

 まあ、なんだかんだ、偉そうに書いていますが、この言葉を知ったのは実は”キャプテンハーロック(*5)”の最終回だったりして・・・


《脚注》
(*1)歌人としても知られ
   世の中は  常にもがもな  渚漕ぐ  あまの小舟の  綱手かなしも(新勅撰集)
  小倉百人一首より
(*2)覚えてますか?
 私はほとんど忘れてました。
(*3)外見的には明るさの絶頂期
 この時点で、政治の実権は執権である北条家に移っていました。ある意味丸投げ状態です。
(*4)祖母上
 源実朝の母、北条政子のこと。
(*5)キャプテン・ハーロック
  松本零士のマンガ、及び登場する宇宙海賊。自由に生きる男のかっこよさを体現しています。ここで言っているのはTVアニメ版(チーフディレクター りんたろう)の最終回のこと。

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