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アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ(地価融解/わく植え)

 ども、投資する金なぞ持っていないたいちろ~です。
 仕事がら、金融関係の本は良く読みますが(*1)、今回は”地価融解”という本のご紹介です。住宅ローン返済の参考にはなりませんが、新聞等でサブプライム問題に関心のある方はしばしお付き合いのほどを。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
ワク植えの例。左はラズベリー、右はみょうがです。




【本】地価融解(太田康夫 日本経済新聞出版社)
 副題は”不動産ファイナンスの光と影”。1980年代のバブル前夜から現在のサブプライム問題に至る不動産にまつわるお金の話がわかりやすく解説されています。
【家庭菜園】わく植え
 ミントやラズベリー、みょうがなど、地下茎を広げる繁殖力の強いものは露地植えにするとどんどん広がるので、仕切り板や穴のあいたバケツ等で地中を囲います。これを”わく植え”と言います。


 唐突ですが、家庭菜園の手法として”わく植え”というのがあります。普通、菜園にできる面積というのは決まっているので、ひとつの植物があまり際限なく広がっていくのは困りもの。特に地下茎で広がるものは芽が出るまでわからないので、わく植えなどで”範囲を限定=広がりを遮断”というコントロールをする必要があります。

 お金に関しても同じで、”儲かれば何でもあり”と言うわけではなく、リスクを合わせてコントロールする必要があります。バブルがなぜ起こったかというと、当時の日本経済は構造的に銀行にリスクが集中するという問題を抱えていました(*3)。
 で、銀行から不動産融資へのリスクを遮断する手法として使われたのが”証券化”。簡単に言うと、資産から上がる収入を金利に見たてて、小口に別けた”証券”にして売ること。不動産の場合、家賃などの収入などを裏づけとして証券化で行ったものが”REIT(リート 不動産投資信託)”です。買う側から見ると、高い利回りがあるし、売る側から見ると、リスクを自分で抱えるわけではないので安心できるわけです。ただし、”ちゃんと運用されている限りは”という前提条件が付きます。

 サププライム問題の諸悪の根源のような言われ方をしていますが、手法自体には経済合理性があるので間違ってはいないと思います。では何がいけないかというと運用面で”なにが混ざっているかわからない”状態のものを売ったり買ったりし始めたこと。
 サブプライムのように回収が怪しい層の債権を組み込んだり、そんなものが入っているかどうかもわからないのに、格付けが高いからといって売買したこと。毒入り餃子事件と比較するのわかりますが、ごくごく一部の製品に毒が入っているだけなのに、全部の製品が一斉に売れなくなります。
 
 さらに、CDS(*4)のようにリスクがさらに移転させるなど、はっきり言ってどこにどれだけのリスクがあるかわからなくなっていることが、問題を深刻化させています。
 金融機関にとって一番問題なのは、信用が毀損すること。豊川信用金庫事件(*5)のように何気ない女子高生の冗談が取り付け騒ぎに発展するように、何の問題もなくても取り付け騒ぎに発展する例もあります。
 ましてや、本当に問題が起こっていても損失がどれぐらいあるかわからない状態というのは、つまり疑心暗鬼を拡大させていきます。バブルの時に、発表のたびに不良資産額が拡大していって、だれも発表された金額を信じなくなったようなものです。
 
 あまつさえ、本来は銀行からのリスクを遮断するために証券化された商品を銀行が買っていたりと、わけのわからない状態も発生しているようです。

 投資信託の窓口販売で一番重視されているのは、”コンプライアンスチェック(法令遵守)”。ぶっちゃけ言うと、”理解できない人に投信を売ってはいけない”ということ。銀行ではコンプライアンスチェックシートというのがあって、"内容をちゃんと理解しました”という書類にサインしないと投資信託を買うことはできません(*6)。金融機関は”運用のプロ”ということで、内容を理解しているという扱いをされていますが、現実を見るとプロの目をもってしても、なかなか難しいようです。

 この本を読んで思ったのは、外から見てうまくいっている時にすでに滅びの遺伝子が組み込まれているということ。表題の”アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ”は太宰治の”右大臣実朝(*7)”から。源実朝が平家の物語を聞いての一言です。

 株や投信で損をされている方にはなんの役にも立ちませんが、最後にささやかな応援ということで全文を・・・

 アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。
 人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。



《脚注》
(*1)仕事がら、金融関係の本は良く読みますが
 一応、銀行、信用金庫向けシステムの拡販なんぞをやってます。以前、投信窓販(*2)の支援システムも扱っていましたが、自分で投信を買った事ありません(お金ないから)。
(*2)投信窓販
 1998年から銀行窓口で投資信託の販売が解禁されました。顧客にとっては定期預金等に比べて高い利回り(うまくいけばですが)、銀行にとっては手数料収入とリスク分離の観点から拡大していきましたが、一般の銀行商品と違って元本保証はしていないので、損をすることもあります。
(*3)構造的に銀行にリスクが集中~
 ノンバンクや住専を通した迂回融資を含め、不動産業者への資金の出し手は銀行に限られていました。
(*4)CDS
 クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap) の略。AさんはBさんから保証料を貰う代わりに、Bさんがお金を貸しているCさんからお金を返してもらえなかった場合にBさんの損失を補償するというもの。何もまければAさんは丸儲け、Bさんはリスクを回避できますが、Cさんかお金を返せなくなると、Aさんはとんでもないお金を負担することになります。
(*5)豊川信用金庫事件
 1973年に豊川信用金庫に就職が決まった女子高校生に友人が冗談で「信用金庫は危ないよ(強盗に襲われてあぶない)」とからかったことから、取り付け騒ぎが発生した、銀行員にとっては悪夢のような事件。デマがパニックに発展する過程が解明された珍しい事例としても有名。(詳細はWikipediaをご参照
(*6)"内容をちゃんと理解しました”という書類に~
 以前、奥様が投信を買いたいというので、銀行に付き合ったことがあります。どう見ても理解していると思えないのにサインしようとしたので、さすがに止めて私がサインしました。
(*7)右大臣実朝
 鎌倉幕府の第三代征夷大将軍”源実朝”をモデルにした太宰治の小説。

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