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いつのまにかすり変えられている恐怖(マネー動乱/タンポポ)

【本】マネー動乱(田村 賢司 日本経済新聞出版社)
 日経ビジネスの記者によるアメリカ現代金融史。ケインズの時代からサブプライム問題に至る、金融国家アメリカの栄光と挫折の物語。
【花】タンポポ
 英語の”dandelion(ダンデライオン)” はフランス語で「ライオンの歯」の意味です。ユーミンの歌にありましたよね。花言葉は”軽率”、”真心の愛”、”思わせぶり”なと。

Tanpopo
写真はたいちろ~さんの撮影
近所の駐車場に咲いていたタンポポです




 先日、アメリカの大手自動車メーカ、クライスラーが破綻しました(*1)。まさか、ビッグスリー(*2)の一角にして、リー・アイアコッカ(*3)が再建し、自動車ショー歌(*4)でも歌われた名門企業がこうもあっさり倒産するとは・・・

 今回のニュースで強く印象に残ったのは、ヘッジファンドなど一部債権者が、法的整理に異議を唱えたことが最終的な破綻の決定的な要因となったこと。政府、銀行、労働組合(従業員)が合意しても、ファンドがNOならNOということ。ものを作るという国のありようが金融国家に変わったとき、ルールもいつの間にか変わっていたんでしょうね
 お国柄とはいえ、”Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)”なんていうロジックが通用しない冷徹な世界に、いつのまにかなっています。

 話は飛びますが、同じころに載ったニュースに”タンポポが伝える環境破壊”というのがありました。これは、”道端のタンポポが日本在来種が姿を消し、ヨーロッパ原産の外来種が勢力を拡大している”といった内容です。これがなぜ環境破壊かというと、タンポポの外来種は花粉に関係なく単独で種子を作れるが、日本在来種は花粉を介さないと種子が作れない、つまり花粉を運んでくれる虫がいないと繁殖できないそうです。結果、環境が破壊されて虫がいなくなると在来種がいなくなって、外来種が繁殖することになるそうです。

 何が言いたいかというと、見慣れた風景だと思っていても、いつの間にか違うものにすりかわっていることがありうるんですね
 確か、昔のSF小説でも”すりかわり”をテーマとしたのがありましたが(*5)、確固たる日常や、常識と思っていたものがいつのまにか違うものになっていて、ある日突然、キバをむくってのは、ホラー以外の何者でもありません

 今回”マネー動乱”という本を読みましたが、現代のアメリカ金融というか、サブプライムで噴出したアメリカという国の変わりようがよく分かります。元々は豊かな資源に恵まれ工業/農業立国であった国が、ドルの世界戦略の中で金融立国になっていくさまはドラマティックであるとともに、”裏でそんなことやっていたのか”と思わざるをえません。

 証券化やCDS(*6)といった金融工学に関する話も載っています。科学技術が用いるものの心によって神にも悪魔にもなるといいますが、金融工学も同じです。

 そういえば、この本の表紙はバベルの塔のようですが、これははたして神の怒りと言いたいのか、人知を超えたものを目指した人間のおごりと故の失敗と言いたいのか・・・

 金融の今を知るには良い本かと思います。


《脚注》
(*1)クライスラーが破綻しました
 2009年4月30日に、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)適用をニューヨークの破産裁判所に申請(Yahoo!ニュースより)。
(*2)ビッグスリー
 アメリカの3大自動車メーカー、ゼネラルモーターズ、フォードモーター、クライスラーのこと。
(*3)リー・アイアコッカ
 フォードの元社長。後にクライスラーの元会長として再建を果たしたことで、1980年代前半には「アメリカ産業界の英雄」と呼ばれました。今で言うならカルロス・ゴーン(ルノーの会長兼、日産自動車のCEO)のようなお方。
(*4)自動車ショー歌
 1964年に、マイトガイ小林旭が歌った歌謡曲。いけてる映像とコミックソングな音楽のギャップが二度おいしい曲です。
(*5)昔のSF小説でも~
 読んでいませんが、ジャック・フィニイの ”盗まれた街(原題 The Body Snatchers)”だったと思います。そういえばブラック・ジャックの”侵略者”も、このテーマだったかと。
(*6)証券化やCDS
 証券化は、資産のキャッシュフロー(簡単に言うと収入)を裏づけにして、有価証券を発行する手法。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ Credit default swap) は、債権を直接移転することなく信用リスクのみを移転できる取引のこと。銀行が融資するのと違って、リスクを自ら有することなく他人(投資家)に移転することが可能です。リスク分散というと聞こえはいいですが、リスクを世間に広く拡散させているとも言えます。

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