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忘れたい過去(スカイ・クロラ/まりちゃんズ/梅)

【DVD】スカイ・クロラ(VAP)
  平和を実感するために“ショーとしての戦争”が行われる時代。「大人」にならない“キルドレ”とよばれるパイロットたちの物語。監督は押井 守(*1)、原作は推理小説家の森 博嗣、司令官の声優は女優の菊地凛子と豪華メンバー。
【CD】まりちゃんズ
 1974年に彗星のように登場し、そのままどっかいっちゃったフォークグループ。この時期にピンポイントで深夜放送にハマった人でないと知らないでしょうが、出す曲がかたっぱしから放送禁止歌になるという、異色のバンドです。
【花】
 花言葉は、”高潔”、”潔白”、”忠義”など。花見といえばサクラですが、奈良、平安時代では梅を指すことの方が多かったようです。

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写真は、たいちろ~さん撮影。鎌倉東慶寺にて



 そろそろ、春めいてきました。梅が咲き、桜の開花宣言なども出始めています。

  東風(こち)吹かばにほひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ

 無実の罪で大宰府に配流された菅原道真(*2)の有名な和歌です。
 ”主人がいなくても、春を忘れないで”と歌ったこの和歌にちなんで、今回のお題は”忘れる”です。

 先日、”スカイ・クロラ”を見ました。
 パイロットたちは、”キルドレ”と呼ばれる”戦士しない限り死なない人間”。人工的に作られた人間。飛行機の部品に近い語られ方をしています。

 パイロットの一人”三ツ矢 碧(みどり)”のセリフ
  同じことを繰り返す、現在と過去の記憶をどんな風にしてつないでいるのかを
  想像だけど、たぶん、とても忘れっぽくなって、
  夢を見ているような、ぼんやりした感情が精神を守っているはず
    (中略)
  自分が経験したことだっていう確信がない、手ごたえがぜんぜんないの
    (中略)
  思い出せない、思い出せない、考えても、考えても、
  子供のときのことが決まったシーン意外、何も思い出せないの


 自分というアイデンティティは、記憶と不可分なもの。”真夜中の戦士(*4)”での記憶のない戦士、”アルジャーノンに花束を(*5)”での失われていく知性への不安など、このテーマを扱った作品には名作が多いのは、”自分とは何者だ”という自己存在への根源的な問いかけに、記憶が深くかかわっているからでしょうか?

 菅原道真の”人に忘れられる不安”、三ツ矢 碧の”過去を忘れてしまっている不安”のように”忘れる”とは”不安”を掻き立てずにはいられないもののようです。

 ところが、一方、”忘れてしまいたい過去”があるのも事実。自分の過去なら酒を飲むに限りますが(*6)、人の記憶となるとそうもいかないもの。
 
 スカイ・クロラのエンドロールに”藤巻直哉”の名前があったのに気づかれた方はどれだけいらっしゃるでしょうか? 博報堂DYメディアパートナーズ(*7)の社員ですが、もうひとつの顔は”藤岡藤巻”という歌手。大橋のぞみの後ろで『崖の上のポニョ』を歌っているおっさん二人組の片割れです。

 一見、人のよさそうなおっさんですが、この人には伝説のフォークグループ”まりちゃんズ”のメンバという、とんでもない過去が。
 ”ブスにはブスの生き方がある(*8)”、”尾崎家の祖母(ばばあ)”といった、題名を見ただけでヤバそうですが、実際、曲を聴くともっとヤバいです。調子こいて忘年会で歌おうもんなら、一発で会社の人権擁護委員会に訴えられます(*9)。TV出演時にもほとんど話題にされませんが、まあ、言えんわな~。

 ”スカイ・クロラ”は飛行機好きにはお勧め。ただ、押井 守が作ると、青空もなぜか冬の津軽海峡の空に見えるんですよね。
 ”まりちゃんズ”は、まあ、シャレのわからない人は聞かないほうが良いかと。


《脚注》
(*1)押井 守
 名前だけでお客の呼べる数少ない監督。代表作は、”攻殻機動隊”、”機動警察パトレイバー”、”うる星やつら”(アニメ)、”紅い眼鏡”(実写)など。
 認識、自己に対する哲学的なまでの長台詞が特徴。
 1984年に公開された”うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー”は同年の”風の谷のナウシカ(宮崎駿監督)”よりも高い評価を、私はしています。
(*2)菅原道真
 平安時代の学者、政治家。天満宮は菅原道真を祀った”学問の神様”として有名ですが、元々は祟り封じのために作られたもの。まあ、”カーネル・サンダースの呪い(*3)”を解くために、人形を甲子園球場に飾る動きがあるぐらいですから、今も昔もやることは変わりません。
(*3)カーネル・サンダースの呪い
 1985年に阪神タイガースが優勝したおり、興奮したファンが優勝の立役者”ランディ・バース”に似ていたケンタッキー・フライドチキンの”カーネル・サンダース人形”を道頓堀川に投げ込むという事件がありました。
 このあと、タイガースは長期にわたり低迷を続けたことから、”カーネル・サンダースの呪い”という都市伝説が定着。関西ではけっこう有名な話ですが、大阪出身の今年入社の新人は”知りまへん。なんせ、1歳のときの話ですから”とのこと。時の流れを感じます。
 2009年3月10日に25年ぶりに発見され、甲子園球場内の店舗にて公開する構想や2010年完成予定の甲子園歴史館に展示する構想があるそうです。
(*4)真夜中の戦士(Midnighi Soldier)
 永井豪の初期SF短編の名作。記憶のない異形の戦士たちが、いきなり戦いを強いられるという物語。「シリーズ昭和の名作マンガ」として朝日新聞出版より復刻。
(*5)アルジャーノンに花束を(Flowers for Algernom)
 ダニエル・キイスによるSF小説。知的障害の為、幼児並の知能しか持たないが心の優しい青年チャーリーは、手術により天才的な頭脳を持つにいたる。しかし、この手術には致命的な欠陥があり・・・
 SFでは”アルジャーノン・テーマ”と呼ばれ、1作品のみでジャンルを形成するという稀有な作品。名作です。
(*6)自分の過去なら酒を飲むに限りますが
 忘れてしまいたいことや、どうしようもない寂しさに
 包まれた時に男は、酒を飲むのでしょう
  河島英五 ”酒と泪と男と女”より
(*7)博報堂DYメディアパートナーズ
 博報堂DYホールディングスの100%子会社。3つの広告会社(博報堂、大広、読売広告社)と連携してメディア・コンテンツビジネスを担う中核企業です。
(*8)ブスにはブスの生き方がある
 YouTubeで検索すると2本あるんですが、もう一本はムゴすぎるので、当たり障りのない(あくまで画像的にですが)、アイドルマスターのほうにしました。
(*9)一発で会社の人権擁護委員会に訴えられます
 実際に、女性団体にバッシングされ放送禁止になっていますが、当たり前です。一応、前向きなメッセージも入っているんすけどね。


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コメント

まりちゃんズ・触れてはいけない危険な世界です。持ち歌のうち、いったい何曲が放送可能であろうか?ポニョが公開されたとき、藤岡藤巻・・?大橋のぞみではなくてあと尾崎でしょ?すぐにまりちゃんズだと気づきましたよ。数年前に某FM番組内で赤坂泰彦によって復活させられたまりちゃんズ。その時のCDはもちろんのこと、デビュー当時のシングルレコードもあります。そういえば尾崎さんちのばぁちゃん、ご存命でしょうか?

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