矢沢永吉、この人は意外と経営者気質かもしんない(成りあがり/横須賀)

 ども、ロッケンロールより四畳半フォーク(*1)のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社でおぢさん二人がコンサートがど~のこ~のという話をしておりました。
ももクロですか?(*2)”と聞くと”矢沢永吉!”との答え。それはそれで想定外な答えだったンですが。で、この人が”面白いですよ”といって貸してくれたのがこの本。
 ということで、今回ご紹介するのは矢沢永吉の自伝”成りあがり”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。JR横須賀駅です。

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【本】成りあがり(矢沢永吉、角川文庫)
 広島からアルバイトで貯めた5万円をもって上京した矢沢永吉がスーパースターになるまでのことを語った自伝。借してもらった文庫版は昭和55年(1980年)発行。いつからのファンやねん! ちなみに本書が書かれた時点で(小学館版は1978年発刊)矢沢永吉は28歳、もう40年も前なんですなぁ
 ちなみに、サブタイトルは”How to be BIG”であります
【旅行】横須賀駅
 ”ここはヨコスカ~♪(*3)”とか”港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ~~♪(*4)”とかの歌を聴いて横須賀に行かれる方、間違ってJR横須賀線に乗ってはいけません。JR横須賀駅前はなんもおまへん。駅を出て左側は海上自衛隊横須賀地方総監部、右側はヴェルニー公園が広がっています。歌のイメージの繁華街や、矢沢が”米軍キャンプがあるって聞いたんですけど”といっている現在日アメリカ海軍横須賀基地は京浜急行電鉄本線の横須賀中央駅が最寄り駅です(まあ、歩けんほど離れているわけではないですが)


 ほとんどロックは聴かなかったので”矢沢永吉”だ”キャロル”だと言われてもあんましよく知らないんですな。まあ、ロックのスーパースターとか、ツッパッってるかっけえあんちゃんとか、上昇志向の強い人とか(なんたって”成りあがり”ですから)、最近は渋い中年とかのイメージしかなくて(あくまで個人の感想です)
 で、今回本書を読んでみた感想ですが意外と経営者気質の人なんだな~~と。言われたほうも意外に思われるかもしれませんが、ちょっと比較なんぞを
(各経営者については手元に読んだ本がないので、ググりながら書いています)

〔孫正義〕
 矢沢永吉は高校の時からスターになることを周りに宣言してます。初恋のやぶれた最後の手紙のエピソードで

  どんなことがあってもビッグにならなきゃいけないって思ったんだ
  どんなことがあってもスーパースター

と書いてますが、その後もけっこうまわりに”スーパースターに、俺は成る!”といった発言をしています。いわゆる”宣言”ですね。まあ、周りが本気にするかどうかは別ですが(まあ、本気にはされていなかったようですが)

 この”宣言”で思い出すのが”孫正義”。この人は今でこそ日本で有数の実業家ですが”日本ソフトバンク”を起業したのは1981年のこと。創業期に当時働いていた2名の社員に対して

  ソフトバンクを10年後、20年後には
  売上高を1兆円、2兆円と数える規模にしたい
(*5)

と話したところ、1週間後には2人とも辞めてしまったとか。孫自身は”ビジョンは皆で共有しないといけない”といってますが、まあ、普通に考えりゃ創業したての社長が途方もない夢物語を語りだしゃ”そうですね”とは思わんわなぁ
 ”宣言”は実行して、実現してこそ。実行せずに、実現しなけりゃ単なる”法螺”です。

〔ビル・ゲイツ〕
 広島を出て、東京を目指した矢沢永吉。ところがなぜかヨコハマで途中下車。それからこれまたなぜかヨコスカへ。で、いろいろあってバンドを結成したもののこれがまた本人が”ゴミ”と言い切るレベル。にも関わらずヨコスカでクラブに売り込みに。その売り文句が

  ぼくたち横浜じゃかなりの線でキメまくってるバンドなんですけど
  横須賀でもやろうじゃないかってことで・・・
  オーディション受けさせてくれませんか

本人が”もうハッタリしかない”と言い切っているんだから、ハッタリなんでしょう

 この”ハッタリ”で思い出すのが”ビル・ゲイツ”。この人は今でこそ”マイクロソフト帝国”を築いた世界で有数の起業家ですが、”マイクロソフト”が成長するきっかけのひとつがAltair8800(*6)用のBASICインタプリタの開発。MITSに電話してまだ何もできていないソフトをさももうすぐ完成するように言って売りこんじゃう。まあ、実際にちゃんと納品しているから、結果的にはウソではなかったですが
  ”ハッタリ”はその時点では真実ではないにしても、それが成功のきっかけになれば結果オーライです。

〔柳井正〕
矢沢永吉は”ザ・ベース”、”イーセット”、”ヤマト”、”キャロル”、そして”ソロ 矢沢永吉”と自分のバンドを作り~の解散し~のしています。本書によると、さすがに解散する時はあれこれ悩んではいますが、解散すると決まればとっとと次の手を打っている。”終身雇用”とは縁のなさそうな業界とはいえ、才能のない人間やついてこれない人間は切る、借金してでも以前との関係を切るなど、キャロル解散時のいきさつなんぞ感動モンですね。
 ”人心刷新”新しいことをやる、だけど自分にも厳しい

  解散しても変わらないなら解散する必要はない
  元キャロルで矢沢を売るな

なんぞ、解ってはいてもなかなかできるもんじゃないですぜ

 ”人心刷新”で思い出すのが”柳井正”。この人は今でこそ日本で有数のお金持ちですが、もともとは父親の経営してた地方の商事会社の繊維・洋服部門を任された人。赤字は出ていないが儲かりもしてない状況で改革をすすめようとしたら幹部が続々と辞めちゃったと。その後も自分が指名した後任社長を更迭して自分が返り咲くき組織ごと変えちゃうとか、役員陣を総入れ替えし、外部から集めた30代人間を役員に据えるとか。
 オーナー一族とは言え”ここまでやるか?!”ってぐらいドラスティック。でもここまでやるからこそ、ほとんど一代で日本で有数の企業に育て上げられたんでしょうな。人心刷新が成長の糧になるなら、それもまたアリです

 本書の冒頭に

  銭は正義だ。こう思ってしか生きてこれなかった
  本当は銭が正義だなんてウソなんだ。それは良く判ってる
  でも、そう思わなければ生きてこれなかった自分に腹が立つ

とありますが、これは幼少期に貧乏だったこと、青年期にも貧乏だったことから銭の怖さなんかを肌で感じてたからでしょうな。だから貧乏でも楽器関係には投資もするし、キャロルで当てて儲かりだしてもちゃんと銭を貯めているチョ~シこかないんですな。
 こういった銭勘定ができるってことは立派な経営者資質なんじゃないかなぁと

 この手の話は類似例を持ってくればいかようにでもかけるので話半分だと思ってください。まあ、”ツッパッってるかっけえあんちゃん”と思っていた人の意外な側面に感心したということで(あくまで個人の感想です)

 本書は現在でもamazonで入手可能。矢沢ファンならずとも若い人はぜひどうぞ

《脚注》
(*1)四畳半フォーク
 四畳半の部屋に住んでるような貧しいが純情な恋人同士をテーマにしたフォークソング。かぐや姫の神田川なんかが代表。今の若い人から見ればビンボ臭い以外の何物でもないんでしょうがねぇ
(*2)ももクロですか?
 実は前の上司が”ももいろクローバーZ”の大ファンだったもので・・・
 部下の女子社員をつれてカラオケでももクロ踊っておりました(ケミカルライト付き)。ひとつ間違えればセクハラ・パワハラになりかねん行為ですが、女性陣もノリノりだったのは、まあこの人に人望があったからこそです、はい。
(*3)ここはヨコスカ~♪
 山口百恵の”横須賀ストーリー”から。作詞 阿木燿子、作曲 宇崎竜童
(*4)港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ~~♪
 ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの”港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ”から。こちらも作詞 阿木燿子、作曲 宇崎竜童。調べて以外だったのはいかにもヨコスカなイメージの宇崎竜童は京都生まれで中学までは代々木上原育ち、明治大学法学部卒業というインテリな人。性格も至って真面目で品行方正とのこと(wikipediaより)。矢沢永吉と比較してみるのも一興かと
(*5)ソフトバンクを10年後、20年後には
 ソフトバンクhp”孫 正義 グループ代表挨拶 2018年”より
(*6)Altair8800
 1974年にアメリカのMITS社が開発・販売した最初期の個人用コンピュータ

取り残された人々の偉大なる跳躍、がんばれリアルなつのロケット団!(オービタル・クラウド/進め!なつのロケット団/ロケットエンジン)

 ども、ロケット大好きなおぢさん、たいちろ~です。
 6月30日に宇宙ベンチャー”インターステラテクノロジズ(IST)”が開発した小型ロケット”MOMO”2号機が打ち上げ直後に落下、炎上するという記事がありました。ホリエモンこと堀江貴文が出資しているということで話題になってますが、これロケット好きならリアル”進め!なつのロケット団”って言ったほうがいいかな?
 個人的にはお金持ちのホリエモンですが、国家の威信をかけて(いた?)開発してるロケットに比べれば、お金ないプロジェクトになるんでしょうねぇ
 ということで、今回ご紹介するのはそんなお金のない国&人々の宇宙開発のお話、”進め!なつのロケット団”と”オービタル・クラウド”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。
日本科学未来館(*1)に展示してあった”LE-7Aエンジン

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【本】進め!なつのロケット団(あさりよしとお、白泉社)
 小学生たちが集まってロケットを作るというお話。やってることは小学生離れしているマジなロケット開発です。著者はサイエンスマンガの第一人者”あさりよしとお”。ホリエモン参加の経緯はあとがきマンガ”なつのロケット団 誕生秘話”をどうぞ
【本】オービタル・クラウド(藤井太洋 ハヤカワ文JA)
 2020年、流れ星の発生を予測するWebサイト”メテオ・ニュース”を運営する木村和海は、イランが打ち上げたロケットブースターの2段目”サフィール3”が、大気圏内に落下することなく、逆に高度を上げていることに気づく。シェアオフィス仲間である天才的ITエンジニア沼田明利の協力を得て、”サフィール3”のデータを解析する和海は、世界を揺るがすスペーステロ計画に巻き込まれて・・(amazon.comより)
【道具】ロケットエンジン
 シロウトが語るには恐縮ですが、宇宙で機体を自力で推進するには(*2)”比推力”てのが問題になるそうで、これは”推進剤の質量に対する推力の大きさ”のこと。一般的に使われている”化学ロケット”てのは”作用・反作用”で飛ぶんだそうで、推進剤(質量)を加速に後ろへ噴射することで前に進むというもの。原理的にはペットボトルに水を入れて空気圧で噴射する”ペットボトルロケット”と同じです。何が問題かつーと、重いものを持ち上げようとすると推進剤も大量に必要で、ロケットが大型化するんだそうで。
 これに対し”イオンエンジン”ってのは推進剤をあまり使わないかわりにパワーが低いのでのようなすごく長い時間動かしつづけないといけないんだとか


 写真の”LE-7Aエンジン”ってのは展示パネルによるとH-IIAロケットの一段目メインエンジンで”2段階燃焼サイクル方式”を採用しているんだとか。すいません、書いててよくわかっていません。ただ、見るからにお金と手間暇かかってそうなことだけはわかります
 ”MOMO”はここまで大きくないのでもっとコンパクトでしょうが(*3)、

  外注に出さなきゃいけない物以外は自分で作る!
  実験機材は可能な限り私物の持ち込み
  給料無しの完全持ち出し手弁当!!
  ホームセンターと秋葉原がわれらの補給ライン
  井戸端宇宙開発 商売抜きだい(泣)

まあ、さすがに今は会社組織でやっているのでここまではないでしょうが、民間企業でかつクラウドファンディングで資金集めしているぐらいだから(*4)、そんなに潤沢に資金があるとも思えないし。でも夢があっていいじゃないですか! 

  然るべき手段を講じればそれは叶う
  夢のままにはしていないから

 本書の中である少年が発した言葉ですが、いいですね~~ あきらめずに続けて欲しいものです

 もう1冊の本”オービタル・クラウド”ですがこっちはもっと壮大。なんたって、主犯の男のスローガンが

  Great leap for the rest of the world
  取り残された国々の偉大なる跳躍

 

経済大国が独占的に行っている宇宙開発を、遅れている国々や人たちに解放するためにテロをしかけるというもの。これを実行するために某国のトップを動かしてスペーステロを実行するってんだから。ここまでビックプロジェクト化して、巨額な資金を投下してのハイリスクハイリターンビジネス化すると、貧乏国家や中小の企業ではきついんでしょう。目的はどうあれテロは許しがたいですが、技術や利権が一部の人に独占されるリスクが許容しがたいという現実は確かにねェ・・・

 本書は最近読んだ中ではかなり面白かったです。今まで読まなかったのは不明の致すところです。特にこの主犯の男ってのが魅力的。最初に読んだ時はそう思わなかったんですが、ブログ書くのにじっくり見てみると、テロリストというより最近めっきり見なくなったマッドサイエンティスト系なんですね。昔の同僚いわく

  あいつは、何でも屋だ。諜報にも使えるハッキング技術
  ITにも、工学にも明るかった
  俺も知らなかったが、ビジネスのセンスもあったらしい
  その能力をいつも人のために使って走り回っていたよ
  ”大跳躍(Great leap)”みたいなプロジェクトに頭を突っ込んでは
  励まして、宣伝してた・・・

 だから、主犯の意思を継ごうとした人にこう告げます

  あんたじゃxxの代わりにはならんよ

 こういったOne and Onlyな万能科学者タイプってなかなかリアリティなさそうですが、それをストーリーの中でピシっとはめるところは藤井太洋の並々ならぬ手腕でしょうか。この作者の作品は初めて読みましたが、ほかのも読んでみましょう!

《脚注》
(*1)日本科学未来館
 最新の科学技術の紹介する科学館。聞くからに堅そうな”独立行政法人科学技術振興機構”というとこが運営してますが、企画展などかなり一般受けしそうな内容も。私が行ったのは”サンダーバード展”だったし、今(2018年7月現在)は”名探偵コナン 科学捜査展”なんてのやっています。お時間あればぜひどうぞ!
(*2)自力で推進するには
 自力で推進しないものとしては太陽風(プラズマ)を利用する”太陽風ヨット”、ロケットにレーザーを当てて進める”レーザー推進”なんてのもあります。
 前者はアーサー・C・クラークの”太陽からの風”(ハヤカワ文庫)、後者は堀晃の”バビロニア・ウェーブ”(創元SF文庫)なんての読みましたが面白かったです
(*3)”MOMO”はここまで大きくないので
 調べてみると性能比較はこんな感じです
H-IIA202型 重量 289トン、低軌道(高度300km)まで10トン
H-IIA204型 重量 445トン、低軌道(高度300km)まで15トン
MOMO2号機  重量 1.0トン、最高到達高度120km ペイロード20kg
(*4)クラウドファンディングで資金集めしているぐらいだから
 インターステラテクノロジズのhpによると924名の人から総額2,850万円ほど集めたとか。

原作を読んでからDVDを見るのに向いた作品かも(アウトロー/ライフル銃)

 ども、”読んでから見るか、見てから読むか(*1)”に悩むおぢさん、たいちろ~です。
 後先はともかく、映画化された小説の原作ってのはわりと読むほうなんですが、困るのが小説の第一作が映画の第一作とは限らないこと。たとえば最近第3作が公開された”ススキノ探偵シリーズ(*2)”。映画化第1作”探偵はBARにいる”は原作第2作の”バーにかかってきた電話”、映画化第2作の”探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点”の原作は第5作”探偵はひとりぼっち”、映画化第3作”探偵はBARにいる3”はオリジナルストーリー。ああ、ややこしい。
 ところが映画第1作にして原作は第5作(未邦訳をいれると8作目)という困ったちゃんが!
 ということで、今回ご紹介するのは放浪するハードボイルド”ジャック・リーチャーシリーズ”から”アウトロー”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影
横須賀の海軍基地で開催されたフレンドシップ・デー(*3)(2012年)でのライフル銃の展示。場所はあの”ミサイル駆逐艦 フィッツジェラルド”の艦上です。
銃器詳しくないんで種類までわかりませんが、どなたかご存知?

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【本】アウトロー(リー・チャイルド、講談社)
【DVD】アウトロー
 (原作 リー・チャイルド、監督 クリストファー・マッカリー、主演 トム・クルーズ、パラマウント)
 ダウンタウンで発生したライフル狙撃による無差別殺人事件。容疑者の元アメリカ陸軍のスナイパー”ジェイムズ・バー”は6時間後に逮捕された。彼は黙秘したうえこういった”リーチャーを呼んでくれ
 元米軍憲兵隊捜査官で、現在は放浪の旅を続けるリーチャーはある過去の因縁からバーの元を訪れる。狙撃の証拠がそろっていて有罪確実と思われた事件だが、弁護を引き受けた地方検事の娘であるヘレン・ロディンとリーチャーは事件の裏にある真相に近づく・・・
 DVD見てから真面目に原作第1作から読み始めました。結構長かったよ~~
【道具】ライフル銃
 ライフル銃(小銃)とは兵士が両手で保持し照準して発射する火器のこと。(wikipediaより)。銃に疎い日本人なんで”銃身”が長いとみんなライフルってイメージでしょうか。
 細かく言うと狙撃専用なのが”狙撃銃(スナイパーライフル)”戦車相手にぶっ放す”対戦車ライフル”全自動射撃能力を持っているのが”突撃銃(アサルトライフル)”などがあるそうです。
 日本でもっとも有名なライフルといえBSはゴルゴ13愛用の”アーマライトM16”でしょうか。これは”狙撃用へとカスタマイズされたアサルトライフル”という設定。まあ、腕がよければ長期距離射撃でも当たるということで・・


 映画を見て原作を読む理由って人さまざまですが、私の場合はまあ”両方楽しむ”ってとこでしょうか。原作者の映画監督へのスタンスの違い(脚本も含めてガチで関与する人から映画監督丸投げまで)もありますが、比較的原作に忠実な作品であっても映画化するとけっこう違いがあるもんで

 ひとつには映像表現と文章表現の違い。”アウトロー”の場合でも映画ではけっこう長時間でカーアクションやガンとナイフのバトルシーンやってますが、原作ではそんなのほとんどなし。確かにこの手のシーンって文章表現するの難しいんだろうなぁ。

 もうひとつはページ数にあまり制限のない小説に対して、映画は2時間程度に収めないといけないといけないというきつい縛りがあって、原作に比べるとかなり圧縮しないといけないから。だから原作にある要素をはなりはしょっちゃったりするんですな。”アウトロー”の場合でもリーチャーの側には弁護士ヘレンのほかにジェイムズ・バーの妹だのニュースキャスターだの調査員だのチームが出てきますが映画ではいっさいなし。映画見てから時間たってたんで、”あれ、こんな人出てきたっけ???” まあ、映画でこんなに人がでてたら確かに時間足りなくなるんだろ~な~
 まあ、人は一人の役に集約しちゃうって手もありますが、これが重要な伏線をさらっと流されちゃったりすると・・・

 

リーチャーという人は”物的証拠”よりも”状況証拠”を重視して推理するタイプ。なんたって、”バーにしては射撃の腕がうますぎる”だの”普通のスナイパーだとこんなところを射撃ポイントにしない”だのが推理の根拠ですから。ヘレンが困ってしまうのもあたりまえです。で、そんな推理手法の話を映像化するのってけっこう難しいのかも。”物的証拠”ってのはその”モノ”ずばりで映像化しやすいでしょうが、”状況証拠”ってのはセリフで説明しないといけないので映像を流してみているとわかりにくいのかも。実際初めてDVDを見た時はストーリーがすんなり頭に入んなかったんですが、原作を読んだ後再度DVDを見てみると、けっこうストンと頭に入ってくるんですな。そういう意味では原作を読んでからDVDを見るのに向いた作品かも

 原作、DVDの違いはあってもお気に入りのキャラってのもいます。本作の場合は射的場のオーナーの”キャッシュ”。なんたってリーチャーを気に入ったという理由だけでドンパチに参加するわ、狙撃の名手に”ナイフ1本で戦え!”とのたまうわ。ノ~テンキな上にムチャぶりのおっさん。DVDでは”ロバート・デュヴァル(*4)”がいい味出しています。

 ”ジャック・リーチャーシリーズ”はシリーズ内で前後の関係があまり強くないので途中から読んでも大丈夫みたい。原作、DVDとも面白いのでぜひご一読のほどを

《脚注》
(*1)読んでから見るか、見てから読むか
 メディアミックスの雄”角川映画”の第二作”人間の証明(原作 森村誠一、主演 松田優作、1977年公開)のキャッチコピー。本と映画をセットにして売るというビジネスモデルを大々的に広げたのが当時角川書店社長だった角川春樹です。
(*2)ススキノ探偵シリーズ(東直己、早川書房)
 ススキノのバー”ケラー・オオハタ”を事務所代わりにしている探偵兼便利屋の”俺”を主人公としたハードボイルドシリーズ。初登場時点では20代ですが、シリーズ後半では立派な中年男に・・・ けっこう面白いです
(*3)フレンドシップ・デー
 ”よこすか開国祭”に合わせて8月第一土曜日に開催される横須賀米軍基地が一部開放されるイベント。軍艦に乗せてくれるわ、アメリカ~ンな出店がいっぱいあるわと非日常的な空間。お勧めのイベントです。
(*4)ロバート・デュヴァル
 寡聞にして知らなかったんですが、”地獄の黙示録”のキルゴア中佐役でゴールデングローブ賞を受賞しアカデミー賞にノミネート、”ゴットファーザ”でもアカデミー賞にノミネート、他にも数々の映画賞を受賞している名優だとか。こんど”地獄の黙示録”も見てみよっと

やあ! 便利さを無制限に追求するとどんなに悪魔的な結果を見るかわかってきたかな?(スティール・キス/ブルーハイビスカス)

 ども、そろそろボケ防止に英語でもやってみようかな~なおぢさん、たいちろ~です。
 よく使う英語の形容詞にしては、英語と日本語でビミョ~にニュアンスが違うってのがままあります。代表的なのが一時期流行った”クール(cool)”。なんたって、ガムといったら”クールミントガム”(*1)の世代としては”クール=冷たい”ですが、昨今は”イケてる”、”カッコいい”のほうが主流でしょうか。
 同様なのが”スマート(smart)”。”痩せている”という使い方は誤訳だそうで人に使うと”頭が切れる、高知能、粋”、機械だと”高性能”の意味。”スマートフォン”を薄い=痩せているからだと思っていたおぢさんとしては自分のスマートでなさを恥じ入るばかりです(実際に太ってますが・・・)
  ということで、今回ご紹介するのはそんなスマートなテクノロジーを犯罪に使うというお話”スティール・キス”であります。
 ネタバレすれすれで書いてますので、まだ本書を読んでない方は読んでからのほうがお勧めです


写真はamazonで売っている”ブルーハイビスカス”です

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【本】スティール・キス(ジェフリー・ディヴァー、文藝春秋)
 連続殺人犯”未詳40号”を追う刑事”アメリア”の目前で、通行人を巻き込んだエスカレーターの事故が発生、その男性は死亡、殺人犯も逃走してしまった。警察の顧問を引退した科学捜査のスペシャリスト”リンカーン・ライム”の協力を得られないまま捜査は進展する。その事故について民事訴訟のために調査を依頼されたライム。まったく関係のないと思われていたアメリアの捜査とライムの事件だが実はある関係でつながっていた・・・
 名作”リンカーン・ライムシリーズ”の第12作。帯のアオリは”身近な道具が牙を剥き、あなたを殺す
【花】ブルーハイビスカス
 本書の中で証拠物件として青いハイビスカスが出てきます。普通、ハイビスカスは赤い印象があって青いものがあるのは知りませんでしたが、実はこれは別の種類のもの。ブルーハイビスカスはハイビスカス属ではなくアリオギネ属だそうです。
 花がハイビスカスとよく似ているからこの名前がついたようで、誤用とまではいいませんが・・・


 さて、最近はやりの”スマートXXX”をいくつか

〔スマートカー〕
 今だと”AI技術を使った自動運転車技術”って感じでしょうか。自動車メーカーを始め名だたるITベンダーが巨額の投資をしてる新聞記事を読まれたことがあるかと。実際には高度道路交通システム(ITS)(*2)などと連携してるので単体の技術ではなさそう。安全性の向上、ドラーバー不足への対応、運転負荷軽減、省エネなとを狙っています。

〔スマートグリッド/スマートメーター〕
 スマートメーター(電力をデジタルで計測し、通信機能を持たせた次世代電力量計)を使ってエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理するのがスマートグリッド。電力ってのはただ単に作って供給すればいいってシロモノではないそうで電力網内での需給バランスの最適化調整する必要があるんだとか。
 そういえば、私んちも前の家ではこれをつけに工事の人がきてたなぁ

〔スマート家電〕

 賢い家電の総称(説明になってないなぁ)。エアコンを遠隔操作でオンにすることで帰宅する頃には快適な室温になってるというおひとり様向けのものから、冷蔵庫内の食材を見てレシピ検索ができるという奥さま向け仕様までさまざま。
 お話相手になってくれる”スマートスピーカー”なんつーのも流行ってますなぁ。早晩スピーカーを美少女うフィギュアに組み込んで”スピ香は俺の嫁!”なんってのも出てくんだろうな~~

 それぞれのデバイスがスマート化してネットワークを介して情報交換や相互に制御する仕組みがこっちもはやりの”モノのインターネット(IoT、Internet of Things)”ってとこでしょうか。
 まあ、いいことずくめのようですが、光あるところに影がある、ってことでこのダークサイドがハッキングなどによる犯罪に利用されるリスクがあること。実際に車載システムをハッキングする実証実験?は成功していますし、スマートグリッドのセキュリティ問題はすでに指摘されているところ。
 まあ、簡単にできる話ではないんでしょうが、この手のセキュリティ対策ってのはいたちごっこが常ですんで、いかに継続的に対策が打てるかが重要かと。

 で”スティール・キス”ですが、なにが凄いかと言うと2016年の発刊(原書)時点でこのあたりの事情をかなりのリアリティをもって書いてるんですな。10年前だったら”推理小説”というより”SF”のジャンルに入れられそうなネタですよ、これ。現実がフィクションの後ろから全力で追いかけてきて、丸頭ハンマーで後頭部をドツキきまわしているような・・・


  やあ! 便利さを無制限に追求するとどんなに悪魔的な結果を見るか
  わかってきたかな?

 これは、未詳40号の犯行声明の一節。”スマートXXX”が便利さだけを追求しているってわけではないんですが、その裏に潜むリスクへの対応についてアメリアたちが再発防止にセキュリティの強化をメッセージしたりといろいろやってるのが現代的というか。
 推理小説がこういうテーマで語られるようになったんですねぇ
 ”リンカーン・ライムシリーズ”はいずれ劣らぬ名作ですが、開始からもう20年になるんだとか(*3)。この20年のテクノロジーの進化はすごいもんがありますが、それを取り入れて名作を書き続けるんだから、ディヴァーってやっぱりすごい作家なんだな!

《脚注》
(*1)ガムといったら”クールミント”の世代としては
 ブルーのパッケージにペンギンのイラストが特徴のガム。LOTTEのhpによると誕生は1960年で、南極観測隊用ガムとしてビタミンCを配合したものを贈呈したのはきっかけだとか。知らなんだな~
(*2)高度道路交通システム(ITS、Intelligent Transport Systems)、
 ナビゲーションシステム、ETC、安全運転支援(AHS、DSSS等)など交通の輸送効率や快適性の向上に寄与する一連のシステム群を指す総称
(*3)開始からもう20年になるんだとか
 シリーズ第一作の”ボーン・コレクター(ジェフリー・ディヴァー、文春文庫)”の発刊は1997です。

質問:量子コンピューターで神様を作れるでしょうか?(神様のパラドックス/神様風ロボット)

 ども、昭和のSFファンのおぢさん、たいちろ~です。
 一昔前なら”気分はもうSF”だったテクノロジーがかなりリアルになってきたものってけっこうあります。特にコンピューターの世界では顕著で、AI(人工知能)なんかがそう。さすがにフリーでなんでも会話するってのはまだでも、コールセンターなんかでは実用化フェーズに入りつつあるし、チャットボット(*1)みたいなんだったらすでに遊べるレベル
 でも、まさかこれは当分ないだろうと思ってたのが”量子コンピューター”。よもや会社のビジネスの会議、しかもけっこう偉い人の出席してる会議で”量子コンピューターが”とか”巡回セールスマン問題が(*2)”とか出てくるとは思わなんだな~~
 ということで、今回ご紹介するのはそんな量子コンピュータを使って神様と世界を創造しようというSFのお話”神様のパラドックス”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
国際ロボット展2017で展示されていた”神様風ロボット”です

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【本】神様のパラドックス(機本伸司、ハルキ文庫)
 量子コンピュータのセールスに行き詰っていた小佐薙は母校の五月祭で占い研究会のブースで大学1年生の井沢直美と出会う。あまりにもヘタクソな直美の占いにあきれる小佐薙だったが、彼女のもらした”お宅の会社のコンピュータで占いはできないんですか?”の一言から、彼女を巻き込んだ”量子コンピュータを使って創造神と世界を生み出す”というプロジェクトが始まるが・・・
【道具】神様風ロボット
 正確には”仏様風ロボット”と言いましょうか。マッスルという会社が出品していた黒子ロボットです。昔は”人を創るといった神と同じ行為をやってはいけない”というというキリスト教の影響があって欧米では人型ロボットがあまりないってな話がありましたが、神様仏様っぽいロボットを作っちゃうってのは日本人的なメンタリティの賜物なんでしょうかねぇ


 さて、本書に登場する量子コンピューターを使った神様(解析神)と解析世界を作るプロジェクト、何をさせるかというと”占い”なんですな。量子コンピューター内のシミュレートされた”世界”にお願いや悩みをぶち込むでことでその答え=”未来の可能性”を計算するというもの。そのために量子コンピュータの超絶的な計算能力を利用しようという・・・
 まあ、技術的に可能かどうかはわかりませんが、記載されている量子コンピュータのウンチクはけっこう楽しめます
 してこのプロジェクトを構成するのが以下の3つのモジュール

 量子コンピューター”久遠”:世界シミュレーターと解析神の”無意識”を担当
             テストでは百~千京回/秒の計算量の数万倍の性能を発揮
             巨大全翼機(*3)”天矛”に搭載
 スーパーコンピューター:プログラミングや、量子コンピュータの出した結果の
             解析/検算を担当
 人工知能”フライディ”:本体とマンマシンインタフェースを担当する”M”で構成
             Mは上半身は人間、下半身は4本足(ケンタウルスか?)
             直美相手にボケをかますわ、恋煩いになるわと結構なスグレモノ

 本書では”M”が人間からは神様のアイコンとしてお話するんですが、直美いわく”何かヤギみたい”な格好。実際に商用化するんだったら、神様か仏様っぽい形にしかねんな~~(*4)
 なんで量子コンピューターが全翼機に載ってるかというと、量子コンピューターが計算するためには無重力状態が必要で、このために弾丸軌道を飛行することになるから。まあ、巨大なデータセンタのごとき飛行機(*5)が上がったきり降りたりするワケで、こういったガジェットも大ボラっぽくて好きですな~

 お話は量子コンピューター製の神様がアイデンティティに悩んだりとか、怪しげな団体に狙われたりとかあるんですが、それは本書を読んでのお楽しみということで。

 で、今回面白いというかヤバイというかのトピックが量子コンピュータと暗号化技術の話。現在よく使われている”RSA暗号”といのはありまして、素因数分解問題つまり、3つの素数A,B,CがA=B×Cの関係を満たす時、2つがわかっていれば残りの1つは簡単に計算できるが、AからB、Cを計算するのは非常に難しいという特徴を使ったもの。Aの桁数が大きくなるとスーパーコンピュータを使っても時間がかかりすぎるため実質的にセキュリティを確保できるということです。技術的にはいろいろな方式がありますが、基本的な暗号化の考え方って”計算時間が膨大にかかるから、実質的に破られない”といってるだけで、じゃあスーパーコンピューターを遥かに凌駕する馬鹿っ早い”量子コンピューター”ならどうなんだというと破ることができるかもしれないと(まあ、そんなに簡単な話ではないんでしょうけど)。本書の中でも量子コンピューターが相手の暗号を解読して相手のコンピューターに侵入するってシーンが出てきます。

 てなことを踏まえて、本書の中では量子コンピューターが核兵器さながらの戦略兵器的な扱いで”量子コンピューター不可侵条約”なんてのが締結されていて、所有には国際ライセンスが必要目的外の用途での使用は禁止されているという設定。現実社会ではそんなんまだなさそうですが(知らんだけかもしれませんが)、科学技術が社会システムに先行するなんてありがちなこと。将来的にはこんな条約ができるかもしれんな~~と思った次第であります。

 ”神様のパラドックス”は量子コンピューターの可能性を扱ったSFとしては秀逸な本。”神様のパズル(*6)”のスピンオフですがこれだけ読んでも面白いです。ご一度のほどを。

《脚注》
(*1)チャットボット
 自動的に”チャット(会話)”する”ロボット”のこと。日本マイクロソフトが開発した女子高生チャットボット”りんな”のニュースを読んだことありますが、なかなか笑える内容。LINEでのユーザー数は約630万人(2017年11月現在)を超えたてるそうです。好きやな~~~ 公式HPはこちらから
(*2)巡回セールスマン問題
 セールスマンが複数の都市を1回ずつ最短距離で巡回する場合のルートを求める問題。都市数が増えると計算量が急速に増大するためコンピュータの計算能力をもってしても回答困難な問題の代表例、らしいです。量子コンピュータの能力ならとけるかもしれないという文脈で語られています。
(*3)巨大全翼機
 ”全翼機”というのは胴体部や尾翼がなく主翼のみで機体が構成された飛行機のこと。あえて言うならブーメラン型の飛行機でしょうか。
(*4)神様か仏様っぽい形にしかねんな~~
 本書では人間が”イコライザー”として仲介するとか、CG美少女にするとかやってますが、まあ、巫女さん文化の日本人なら神様風ロボットでなくてもOKかも
(*5)巨大なデータセンタのごとき飛行機
 本書でのスペックは全長75m、翼幅130mというもの。形状は違いますが、ジャンボジェット機”ボーイング747-8”は全長76.4m、翼幅68.5mです。
(*6)神様のパズル(機本伸司、ハルキ文庫)
 留年寸前の綿貫基一が教授から命じられたのは不登校の天才女子学生”穂瑞沙羅華”をゼミに参加させること。二人はゼミの中で出た”宇宙を作ることはできるのか?”を立証することになるが・・ 第三回小松左京賞受賞のSFの傑作。こちらもどうぞ

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