文学少女たちよ、永遠であれ!(青年のための読書クラブ/ブーゲンビリア)

 ども、おぢさんのための読書クラブ部長、たいちろ~です。(ウソです)
 今回で、ちょうどブログ100本目のネタになります。まあ、始めて7ケ月ですんで、3日に1本ぐらいです。多いんだか少ないんだかわかりませんが・・・
 ということで、100本目記念(というわけではないですが)、今回のご紹介は桜庭一樹の”青年のための読書クラブ”であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影
近所の園芸店のブーゲンビリア。
まだ花は咲いていません




【本】青年のための読書クラブ(桜庭一樹 新潮社)
 お嬢さん学校”聖マリアナ学園”の変わり者集団”読書クラブ”のメンバを主人公とした連作集。浮世離れしていそうで社会の縮図たる学園内に起こる決して”正史”に残らない”黒歴史(*1)”をつづった物語です。
【花】ブーゲンビリア
 オシロイバナ科に属する熱帯性の低木。花びらに見えるところは葉(包葉)で、真ん中の小さい部分が花。花言葉は”情熱、あなたしか見えない”など。ご年配の方には小柳ルミ子の”星の砂(*2)”といったほうがとおりがよろしいかと。


 偶然今週読んだ本で、別に狙ったわけでないんですが、私のブログの趣旨ととても合っています(*3)。
 5本の連作集ですが、哲学的福音南瓜書、苺の香水、ブーゲンビリアの花などのガジェットがいっぱい出てくるし、主人公たちの所属する読書倶楽部にしてからが、学園の雑木林の裏にある崩れかけた赤煉瓦ビルの中だし。
 それぞれの話の底本が、”シラノ・ド・ベルジュラック”、”マクベス”、”緋文字”、”紅はこべ”といった古典作品(*4)。主人公の一人”烏丸紅子”も烏(からす)=黒と紅=赤で、スタンダールの”赤と黒”っぽいっし。

文学少女シリーズ(*5)”なんかもそうですが、やはり読書する美少女というのは、古典的名作なんかも読んでいて欲しいものです。別にマンガを読んじゃいけないってことではなく、幅の広い読書は幅の広い人格と趣味を養うものだとおぢさんは思っているわけです。
 もっとも、同じ文学美少女でも、ツルゲーネフの”初恋”の本の中に投げナイフを入れているなんて物騒な人もいましたが・・・(*6)

 私の本の選び方というのは”本に載っている本を数珠繋ぎに読んでいく"ほうなので、"青年のための読書クラブ"のような本は古典に接するきっかけにとてもいいです。というか、こういったきっかけでもないかぎり、なかなか古典を読む気にならなかったりして。
 元々、週刊誌をほとんど読まない人なので、書評とかブックレビューなんてのをほとんど見ません。こんなブログを書いているわりには、人の紹介する本の情報というのはあんまり気にしない方です。でも、今回ご紹介している桜庭一樹だと”書店はタイムマシーン(*7)”のようなブックレビューを集めた本なんかは読みますけど。ただ、傾向があっているかどうかはその時の気分しだいです。

 本書最後にある、桜庭一樹から文学少女たちへのメッセージより
  
  乙女よ(そして青年たちよ!)、永遠であれ。
  世がどれだけ変わろうと、どぶ鼠の如く、走り続けよ。
  砂塵となって消えるその日まで。
  雄々しく、悲しく、助けあって生きなさい。


 文学少女というと、物静かに本を読んでいるというイメージがありますが(*8)、この小説に登場する少女たちか、ここ一番ではけっこうアクティブ。学園のアイドル”王子”をプロデュースする演出するアザミさんとか、巨大な乳房の迫力で生徒会を追い返すきよ子さんとか、怪盗”ブーゲンビリアの君”の永遠(とわ)さんとか。
 文学少女たちはしなやかに、かつしたたかに学園生活を送っています。

 現在、文学少女の貴女にも、かつて文学少女であった貴女にもオススメしたい1冊です。


《脚注》
(*1)黒歴史
 ”無かったことにしたい事、されている事”を表すスラング。例としては崖の上のポニョ(スタジオジブリ)の主題歌を歌う”藤岡藤巻”のまりちゃんズ時代なんてのがあります。
(*2)星の砂
 1977年に発売された小柳ルミ子のシングル。作詞は”サンデーモーニング(TBS)の関口宏、作曲は”ヒデとロザンナ”の出門英とけっこうな組み合わせです。知らなかった・・・
(*3)私のブログの趣旨ととても合っています
 ”花と本のブログ”です、いちおう。まあ、オタクっぽいネタが多いのはご愛嬌ということで。
(*4)”シラノ・ド・ベルジュラック”~
 それぞれ著者は、エドモン・ロスタン、ウィリアム・シェイクスピア、ナサニエル・ホーソーン、バロネス・オルツィ。”マクベス”は昔読みました。”シラノ”と、”紅はこべ”は今回を機に図書館で予約中。
(*5)文学少女シリーズ
 野村美月による推理小説系ライトノベル。ファミ通文庫より発売中。古典文学をモチーフにしており、この本のおかげで、人間失格(太宰治)や、銀河鉄道の夜(宮沢賢治)を読み返すことになりました。
(*6)ツルゲーネフの”初恋”の中に~
 ”愛と誠(原作 梶原一騎、作画 ながやす巧)”に登場する美少女にして影の大番長(死語)”高原由紀”のこと。愛読書がツルゲーネフの”初恋”。でも、このマンガのおかげで”初恋”も読みましたね。
(*7)書店はタイムマシーン(桜庭一樹 東京創元社)
 副題は”桜庭一樹読書日記”。稀代の本読みである桜庭一樹の読書歴&直木賞受賞ごろの日常生活をつづったエッセイです。
 この本に載っていた” ポポイ (倉橋 由美子)” は次に読む予定。
(*8)物静かに本を読んでいるというイメージがありますが
 ”涼宮ハルヒの憂鬱”に登場する無口キャラ、長門有希さんとか。でも、この人もここ一番では万能の人なんですよね。

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腐女子彼女 in 1979(ぼくらの気持/大田区産業会館)

 ども、ずぅえ~ったい腐男子(*1)ではないたいちろ~です。
 栗本薫さんがお亡くなりになったこともあり、久々に”ぼくらシリーズ(*2)”を読み返しています。で、さて、今回ご紹介するの2冊目の”ぼくらの気持”であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影
大田区産業会館(現大田南地域行政センター)です。





【本】ぼくらの気持(栗本薫 講談社)
 主人公、栗本薫の友人のヤスヒコが巻き込まれた少女マンガ家殺人事件を解決する探偵小説。
 少女マンガ家”花咲麻紀”が自宅で殺される。その容疑者であるヤスヒコは元ロックバンド”ポーの一族”のメンバで友人の薫と信に助けを求める。その後、ヤスヒコのアリバイを証明できるマンガ同人作家の杏奴麻利(アンヌマリー)が殺されて・・・
【旅行】大田区産業会館
 東京都大田区の産業の環境基盤の整備と活性化のための施設。現在その機能は”大田区産業プラザ”に移転されて、元々の大田区産業会館は改装され”大田南地域行政センター”になっています。


 この作品、推理小説としても面白いんですが、それ以上に興味深いのがこの作品の設定である1979年の少女マンガ界、マンガファンの状況
 当時はオタクも腐女子もいない時代で(*2)、どちらかというとマイナーな存在でした。
 で、同人作家の杏奴麻利が殺される場所が、コミックマーケット(*3)の会場。作中では”区民会館”としか書いてませんが、時代と付き合わせると”大田区産業会館”のことだと思われます。
 でも、このころ既にコミケってあったんですね~
 
  彼(薫=♂)はロックバンドやってるんですけど(信=♂)
   ⇒じゃあ、もちろんあんた達恋人どうしなんでしょ(杏奴=♀)


  こっちが『ソドム(*4)』の同士よ。(中略)
  こっちから紫義童、丸木戸佐渡、それに、紫緒奈津女(*5)。


  髪はオスカル風(*6)に黄色く染め、その上にピンクのおリボンがヒラヒラと・・・

  五段ぐらいにヒダをとったフランス人形もかくやというレースのスカートは・・・

  すでにいっぺん中に入っている奴は、例外なしに腕いっぱいに
  収穫の同人誌を抱えているので・・・


 ま、こういった方々は今ではりっぱな貴腐人(*7)になられておられるのでせう。

 けっこう、オタクっぽいことを書きましたが、言いたかったのは”今も昔もあんあんしかわんないな~”と言うこと。
 最近、この当時の青春推理小説で”ぼくらの時代”とか”アルキメデスは手を汚さない”とかを読みましたが、みんな”近頃の若いモンは”なんですね。
 この作品の時代設定は1979年ですので、このころ大学生ぐらいだった方は今頃お子さんが同じぐらいの年になっているお母さんも多いはず。まあ、目くじら立てずに暖かく見守ってやってもいいんではないかと。

 ”ぼくらの気持”は、推理小説としても楽しめますが、当時の少女マンガとかアニメに詳しい方はされに楽しめます。また、今の若いオタクや腐女子の方も温故知新で読まれてもよいかと思いますよ(*8)。


《脚注》
(*1)腐男子
 ボーイズラブ(BL)・やおい作品を好む男性のこと。元々BL好きの女性が”腐女子”でそのもじり。
(*2)オタクも腐女子もいない時代で~
 諸説ありますが、オタクという言葉が使われだしたのは1983年以降のようです。腐女子ははっきりわかりませんが、用語として一般化したのはたぶん今世紀に入ってからではないかと。
 ちなみに、私は行き先掲示板(電子化されています)で、行き先の大田区民会館を”オタク民会館”と誤変換して笑われました。
(*3)コミックマーケット
 世界最大の同人誌即売会。略称”コミケ”。調べてみると第1回は意外と古く1975年12月21日とのこと。当時の参加者は700名、参加サークル32。それが今では参加者は55万人、参加サークル3万5千のビックイベントです。
 Wikipediaによると1979年の開催は大田区産業会館。
 概要については、”東京大学大学院情報学環 コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム(2007年6月)”(PDF)をどうぞ。
(*4)ソドム
 サディズムという言葉の元になった作家マルキ・ド・サドの”ソドム百二十日”からだと思われますが読んでいません。河出文庫にて入手可能。
 ちなみに、杏奴さんの出している同人グループは”ソドムの群”です。
(*5)こっちから紫義童~
 この手の名前につく”紫”ですが、紫には”気品の高く神秘的な色”という意味のほかに、男=青と女=赤を混ぜた”中性的な色=紫”という使い方もあるようです。
 ”忍者飛翔(和田慎二)”という作品に、男でもあり女でもある忍者の”紫(ゆかり)”というのが登場しました。
(*6)オスカル風
 池田理代子著の漫画『ベルサイユのばら』の主人公。男装の麗人にして、マリー・アントワネットの護衛を務める近衛連隊長。
 宝塚歌劇団の公演もあって、1970年代に一大ブームを巻き起こしました。
(*7)貴腐人
 ご年配の腐女子のこと。”怖いもの知らずの腐女子も恐れる存在”だそうです。
(*8)温故知新で読まれてもよいかと思いますよ
 こうやって綺麗にまとめて自分を正当化しようとするところに、おぢさん世代オタクの邪悪な意図が見え隠れします・・・

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冷やし中華の終わらない夏(風雲児たち/シソ・ネギ)

 ども、自炊派単身赴任者たいちろ~です。
 今回のお題は”冷やし中華vsそうめん、夏に食べたいのはどっち?”ですが、栄養バランスを考えると冷やし中華なんでしょうが、作るのがめんどいので(*1)、そうめん派です。
 そのかわり、天ぷらでタンパク質と脂肪分を、薬味でビタミンを補給するようにしてます。


_0057 写真はたいちろ~さんの撮影
寮でそだてている薬味(シソ・ネギ)
写真には写っていませんがみょうがも植えてます



【本】風雲児たち(みなもと太郎 リイド社)
 元々幕末の日本を描くのが目的で関が原の戦いから書き始め、幕末に行くまで300ページを超える単行本で20巻かかったという歴史マンガ。現在はやっと幕末編を連載中。 みなもと太郎は”歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して”ということで、2004年に手塚治虫文化賞を受賞。
【花】シソ・ネギ
 ともにおなじみの日本のハーブ(薬味)。けっこう繁殖力が強くて、ネギは根っこの部分を切って植えるだけで育ちます。シソは1年草ですがこぼれ種で芽を出します。写真でシソとネギがくっついているのは、シソが勝手に芽を出したから。


 ところで、表題の”冷やし中華の終わらない夏”ですが、かねがね不思議に思っていることに冷やし中華は”始めました”はあっても、”終わりました”って出ないんですね。まあ、出したところで一銭の得にならないのもわかりますが、いつ終わるんでしょう?
 ということで、今回のお話は”戦いの終わり=撤退戦”であります。

 漢字で”殿(との)”と書いて”しんがり”とも読みます。これは撤退する部隊の中で最後尾の箇所を担当する部隊のことですが、味方の崩壊を防ぎつつ、敵にあたるという最も危険な任務なのだそうです。通常、勝ち戦であれば論功恩賞、つまり手柄に応じてご褒美があたえられる=プラス方向にベクトルが働くわけですが、撤退戦ではいかにマイナスを小さくするかが重要なわけです。
 私自身、商品企画、拡販というのをやっていますが、いろいろな理由でやめちゃったものもいくつか見ています。ぶっちゃけ、販売中止といっても、以後のロードマップを提示しないといけないとか、利益がでるのではなく損実を少なくするかの説明とか、ちゃんとできてもあまり褒めてもらえる仕事でもないとか、手間がかかるにしてはモチベーションの上がるものでないのは確か。いつのまにか止められる冷やし中華がうらやましい

 で、撤退戦として有名なエピソードとしては、関が原における薩摩藩主、島津 義弘(しまづ よしひろ)による歴史上類を見ないという”正面突破の撤退戦”。しかも徳川家康の本陣近くを通過するというおまけ付きです。いわば、関が原の合戦における最後のクライマックスなんですが、このエピソードを知ったのは、今回ご紹介するみなもと太郎による”風雲児たち”でした。

 この退却戦は「島津の退き口」と呼ばれたそうですが、その戦法は”捨て奸(すてがまり)と言われる、何人かずつが留まって死ぬまで敵の足止めをし、それが全滅するとまた新しい足止め隊を残す”という壮絶なものです(Wikipediaより引用)。
 よく小説などで、”撤退戦を行う敵には一部に退路を残し、完全包囲をしてはいけない。敵が死に物狂いで戦うから。窮鼠猫を噛むことになる危険がある”なんてのが出ていますが、追撃側の徳川軍もそれなりの被害を出しています。

 この戦いが全国にその名を轟かせ、大将の島津 義弘自身もかろうじて敵中突破に成功し薩摩藩まで逃れたこともあって、”関が原後”の外交折衝に役立つことになります。このへんの政治的なエピソードもちゃんと”風雲児たち”に書かれているんですね。
 マンガというと絵になる戦いばかりと思われるかもしれませんが、むしろ歴史を決めるのは戦いの結果としての”政治”であって、それがなければ歴史モノと言えないと思っています。そういう点も含めて”風雲児たち”は立派な歴史マンガになっています。

 ”風雲児たち”は江戸時代編で20巻、幕末編で14巻(2009年7月に15巻が発売予定)と大河マンガの趣です。また、巻末に脚注ならぬ”ギャク注”というのもあって、現代の社会状況もフォローできます。
 基本的には”ギャグマンガ”の系譜なんですが、純粋にマンガとしての面白さでいえば、石ノ森章太郎による”マンガ 日本の歴史(*2)”よりも上だと思っています。
 暦女ブームの昨今、もっと注目されてもいい作品ですので、ぜひご一読のほどを。


 ふと気がついたんですが、日本の歴史モノってあんまり読んでないんですね。最近だと新選組血風録(*3)ぐらいかな~。だいたいおぢさん世代というのは歴史の薀蓄たれるもんですが、NHKの大河ドラマも見ないし・・・(*4)
 むしろ、中国史の小説の方をよく読んでます(*5)。


《脚注》
(*1)作るのがめんどいので
 やはり、キュウリ、錦糸卵、ハム、トマトは入れたいものですが、ひとり分でこれだけそろえるのはやはり面倒。というか、量を買うと安くなるんですが賞味期限との戦いになるのでけっこう割高になります。
 どなたか食べに来てくださるならごちそうしますので、コメントください。神奈川県東部に在住です。
(*2)マンガ 日本の歴史
 弥生時代から第二次世界大戦後までの日本の歴史をつづった正統派学習マンガ。中央公論社の文庫版にて入手可能。
(*3)新選組血風録
 司馬 遼太郎による連作短編集。角川文庫他。なんでこれ読む気になったんだっけ?
 亡くなった父親は司馬 遼太郎が好きでよく読んでたんですけどね・・・
(*4)NHKの大河ドラマも見ないし・・・
 早起きしてブログ書いていますので、日曜日はサザエさん終わったら寝てます。
(*5)中国史の小説の方をよく読んでます
 これは田中芳樹の影響。銀河英雄伝説やタイタニアで有名なSF作家ですが、中国史の小説も多数出しています。

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荒野に女子あり、十九にして心すでに朽ちたり、たから白銀色に染めちゃった(ファミリーポートレイト/姫林檎)

 ども、最近白髪(しらが)の増えたたいちろ~です。
 さて、今回ご紹介するのは桜庭一樹の”ファミリーポートレイト”です。いや~やっと読めました。元来図書館派の私なので、半年待ちですよ!
 話題作がリアルタイムで読めないのはつらいですが、がんばっていきまっしょい!


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写真はたいちろ~さんの撮影
近所の園芸店にあった姫林檎です
まだ青いですがこの大きさでも、ちゃんと実がなってます




【本】ファミリーポートレイト(桜庭一樹 講談社)
 ママのマコと娘のコマコ。第一部は二人の逃避行、第二部は大都会という荒野を流離うコマコの物語。文壇バーでお話を創るコマコ、文学賞を受賞するコマコがなんとなく桜庭一樹と二重写しになります。
【花】姫林檎(ひめりんご)
 別名”犬林檎”。見たことはありませんが白い花が咲くそうです。調べてみると実は元々鑑賞用で”最近は食べられるものもある”とのこと。花言葉は”名声、誘惑”。


 物語は5歳のコマコが母親のマコとコーエー(公営住宅)から逃げ出して、いろんな場所に移り住むところから始まります。城砦のような町の病院の診察室、若い女性死んだ時、女性の代わりに初夜を迎える儀式をする港町、養豚場の町など。
 母親と死に別れて、実父に引き取られて女子高生になったコマコは姫林檎のような同じ学校の女子生徒とレズビアンの関係になったりします。

 コマコは見分けがつかない同じようなといった意味で女子高生の恋人のことを”姫林檎”といっていますが、姫林檎は小さい姿ながら、ちゃんと成熟していて、しかも観賞用の品種といったところはイマドキの女子高生とよく似ているのかも
 だから、女子校生をつまみ食いしちゃいけないんですってば!(*1)。

 卒業したあと文壇バーでアルバイトをしますが、その時の髪の毛が”面白いから”という理由で白銀色にそめたりしています。表題の”十九にして心すでに朽ちたり”のオリジナルは中国中唐期の漢詩人李賀(りが)の詩”陳商に贈る”より。

  長安有男兒   長安に男児有り
  二十心已朽   二十にして心已(すで)に朽ちたり
   (中略)
  何必須白首   何ぞ必ずしも白首(=しらがあたま)を須(ま)たん

 解説は”枕草子-まくらのそうし”のホームページに詳しく載っていますが(*2)、母親を亡くして虚無的になっているコマコとこの詩がなんとなく重なったので、この詩を表題にしました。

 この後、失踪したり、文学賞をとったり、結婚したりしていますが、物語はコマコが母親のマコから自立する物語であるとも言えます。

 印象的だったのセリフですが

  作家とはある種の、自覚的な多重人格者のことだ。
   (中略)
  生きる痛みが、物語を必要とする人間・・・
  つまりは作家と読者を生むのだ。

 つまりブログを書いている自分というのは

  読者としての自分
  ブロガーとしてブログを書く自分
  オタクな文章を書く自分
  古典文学に耽溺する自分

 の重合体なのかもしれません。

 結論:ブロガーとは救われない人種である・・・


 ”ファミリーポートレイト”は最近脂ののっている桜庭一樹の最新作(*3)。読んで損のない一冊です。


《脚注》
(*1)女子校生をつまみ食いしちゃいけないんですってば!
 もちろん、私はそんなお行儀の悪いことはしてません。なんせ、娘が高校生なもので。
(*2)解説は”枕草子-まくらのそうし”~
 この詩をインターネットで調べると、やたらと”アストロ球団”が出てくるんですね。そりゃ掲載されてたのは知ってましたけど・・・
 ”アストロ球団”は、原作 遠崎史朗、作画 中島徳博による空前絶後の格闘技系プロ野球漫画。1972年に週刊少年ジャンプに掲載(私が中学の頃ですよ!)
こちらの引用は
  花の都に男子あり 二十にしてはや心朽ちたり 
  すでにして道ふさがる 何ぞ白髪を待たん
(*3)最近脂ののっている桜庭一樹の最新作
 別に桜庭一樹さんが太ったという意味ではありません。念のため。

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男性とってに女性は、大人にとって子供は永遠の謎である(アルキメデスは手を汚さない/ハンゲショウ)

 ども、血塗られた人生を歩むたいちろ~です。
 今回のお題は”女の人の車内メイクってどう思う?”ですが、なんか、舞台裏を見せられているようで(*1)、あまり好きではないですね。DVDでも”メイキング・オブ・XX”という特典映像がありますが、本編が面白くてこそのメイクングであって、本編なしでいきなりメイキング映像だけ見せられてもな~という感じです。
 まあ、女性からすると”電車の中の見ず知らずのおぢさんに本編を見せる義理はない!”と言われそうですが。
 でも、同じ遅刻しそうで時間がないシチュエーションながら、”パンをかじりながら走る少女”ほどロマンを感じないのはなぜでしょうね?


Hangeshou

写真は”青木繁伸さんのHP”より。
ハンゲショウです。



【本】アルキメデスは手を汚さない(小峰元 講談社)
 1973年、第19回江戸川乱歩賞受賞作。テーマは”近頃の若いモンは!”
 中絶失敗による女子高校生の死亡、弁当による薬物中毒事件、姉の愛人の失踪、その裏に見え隠れする高校生の影・・・
 青春推理小説のさきがけとなった作品です。
【花】ハンゲショウ(半化粧、半夏生)
 ドクダミ科の多年性植物。名前の”半化粧”の由来は葉の一部を残して白く変化する様子から。古くはカタシログサ(片白草)とも呼ばれていたそうです。


 時間がないとはいえ、まったくスッピンというわけでもないでしょうから”半化粧”状態かな?ということで、今回の花はハンゲショウ(半化粧)です。実物を見たことはないですが、写真を見で見ている限り、確かに半分お化粧をしている花魁を連想させますね。
 さて、今回の本は古名の”カタシログサ”⇒”シラクサ(*2)”からの連想でシラクサ生まれのアルキメデスを扱った”アルキメデスは手を汚さない”です(*3)。

 1973年と35年以上前の推理小説ですが、この本を読み返すきっかけになったのが、前回書いた”ぼくらの時代”から。確か、この2冊とも読んだのが高校、大学ぐらいだったので、ほぼ主人公と同じ世代でした。

 で、テーマが同じ”世代間のギャップ”。
 ”ぼくらの時代”の著者、栗本薫は1953年生まれで江戸川乱歩賞の受賞者としては最年少(当時)、”アルキメデスは手を汚さない”の小峰元は1921年生まれで受賞当時は50歳過ぎ(*4)という違いはありますが、テーマは

  栗本薫(若者代表):大人には若いものの気持ちはわからない
  小峰元(大人代表):最近の若者は何を考えているかわからない

と、ほとんど同じ読書感です。

 でも、これって今でもまったく同じ構図なんですよね~
 今回の”女の人の車内メイクってどう思う?”にしてからが、大人vs若者になりそううだし。いかに人間のやっていることに進歩がないかがわかります。
 ウソだと思うなら、多少の風俗的な違いを無視して(*5)”アルキメデスは手を汚さない”を読んで見られるとわかります。現在書かれたといわれてもまったく違和感ありません。

  アルキメデスが発明した殺人機械は、大勢のローマ兵を殺した
  彼は殺人機械を発明しただけで、実際に操作したのはシラクサの兵士たちだ
  だから、アルキメデスの手は汚れていないといえるだろうか
(*6)

 もうひとつの本書のテーマですが、これも現在でも通じる警句。モノであれ、組織であれ、何かを作り出す大人としてかみしめておきたい一言です。

 ”アルキメデスは手を汚さない”は現在でも通用する青春小説の傑作だと思います。小峰元の作品は本書を除いて絶版状態だそうですが、もったいないですね。お読みになりたい方は図書館でお探しください。

《脚注》
(*1)舞台裏を見せられているようで
 ”サードガール(西村しのぶ)”でポーチから落とした口紅にてれる美女というシーンてのがあります。ボーイフレンドが
 ”うっかり舞台裏をのぞいてしまったのかな
とモノローグしていますが、これぐらいの奥ゆかしさがあるほうが好きであります。
(*2)シラクサ(Siracusa)
 イタリア共和国のシチリア島東岸に位置する都市。自然哲学者のアルキメデスはシラクサの出身。行った事はないですが、世界遺産である”パンターリカの岩壁墓地遺跡”があったりとよさそうなところです。
(*3)”カタシログサ”⇒”シラクサ”からの連想で~
 かなり強引な展開ですが、元々”アルキメデスは手を汚さない”の紹介用に調べていてシラクサからシロクサに行き着きました。そのあとコマネタのお題に引っかかったんですが、こんなケースは実は珍しいです。
(*4)小峰元は1921年生まれで受賞当時は50歳過ぎ
 青春推理小説を何作も書かれていますので、読んでいた当時はもっと若い人だと思っていました。
(*5)多少の風俗的な違いを無視して
 たとえば、JRが”国鉄(日本国有鉄道)”になっていたり。ちなみに国鉄が民営化してJRとなったのは1987年。今年(2009年)に入社する新入社員が生まれたあたりの年なんですね・・・
(*6)アルキメデスが発明した殺人機械は、大勢のローマ兵を殺した~
 紀元前4世紀初頭、シラクサの僭主ディオニュシオスはカルタゴに対して戦争を仕掛け、シチリア島全域を支配することに成功。シラクサ出身であるアルキメデスの発明品の中には、古代ローマによるシラクサの包囲に対抗するための軍事兵器もあった。シラクサは3年間持ちこたえたが、紀元前212年陥落。この戦争中に、アルキメデスは殺された。(Wikipediaより抜粋)。
 すいません、世界史苦手なんです。

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