オタクの本質と探偵って意外にあってそう、でも文章にするのって難しいんじゃないかい?(体育館の殺人/水族館の殺人/”ちはやふる”のラッピング電車)

 ども、ミステリーはマニアってほどじゃないですし、アニメもヲタクってほどじゃないおぢさん、たいちろ~です。
 さて、アニヲタってどんなイメージをお持ちでしょうか?

  コミュ障、ただしスイッチが入るととっても饒舌
  小太りまたはヤセ型にメガネ
  部屋の中にはマンガとDVDとフィギュアの山。壁にはアニメのポスターが・・
  ファッションセンス皆無。Tシャツは萌え絵のプリント
  背にはナップサック、手にはアニメの紙袋
  自分のジャンルには熱心だけど、それ以外には無関心
  意外と頭が良かったりする(趣味の範囲では超人的な記憶力とか観察力とか)

あくまで個人の感想であり、個人差があります(笑)(*1)

 ステレオタイプな人物像ですいません。まあ、これだけ見るとなかなかに残念な人っぽいですが、これで意外と向いてるかもしれんお仕事が。
 ということで、今回ご紹介するのはそんなアニヲタが名探偵役を務めるミステリー”体育館の殺人”と”水族館の殺人”であります


写真はたいちろ~さんの撮影。京阪電車の”ちはやふるのラッピング電車”です
(浜大津駅付近 2013年11月)

157094

【本】体育館の殺人(青崎有吾、創元推理文庫)
 風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部の部長が刺殺された。現場は実質的に密室状態であり、”仙堂警部”と部下の”袴田優作”現場にいた女子卓球部の部長の犯行だと考える。部長の無罪を証明すべく卓球部員の”袴田柚乃(はかまだゆの)”は部長の嫌疑を晴らすため全科目満点をとった”裏染天馬(うらぞめ・てんま)”に解決を依頼する。しかし彼は百人一首研究会の部室を私物化して住み着くアニメオタクの駄目人間だった・・・
【本】水族館の殺人(青崎有吾、創元推理文庫)
 風ヶ丘高校新聞部の向坂香織達は夏休みのを利用して丸美水族館の取材に出掛ける。取材中に巨大水槽の前でサメが飼育員と思われる男性に食らいついているシーンに遭遇。容疑者である11人にはそれぞれアリバイがあった。困り果てた仙堂警部は”体育館の殺人”を解決に導いた”裏染天馬”に事件の解決を依頼するが・・・
【乗り物】”ちはやふる”のラッピング電車
 裏染天馬が住み着いている”百人一首研究会”ということでチョイスしてみました(本書には出てきません、すいません)。百人一首って人気なさそうなんで部室を不法占拠できたっぽいですが”ちはやふる”(*2)がブレイクした今ではどうなんでしょうね? 
 聖地巡礼のおかげでしょうか、電車とアニメ/マンガって意外と相性がよいのか、最近この手のラッピング電車増えましたよね~~

 さて、探偵役の”裏染天馬”ですが、部室に住み着いて漫画やDVDをしこたまため込み、授業には真面目に出ないという引きこもりアニメオタクの駄目人間。基本的にはめんどくさがりで、やる気なし。でも頭脳は優秀で、自分の推理には饒舌やる気をだせば凄い人。

  ちょっと興味が出たんだよ。俺は興味のあることには全力で取り組む

 こういうのって、名探偵向きなんじゃないかな。事件をえり好みするとか、ムラっ気があるのって、名探偵の魅力の一つだし・・・
 推理方法は、”細かいことに異常にこだわる”。普通ならスルーしそうな枝葉末節、ちょっとした矛盾に徹底的にツッコ入れるスタイル。”刑事コロンボ(*3)”に似てるかな~ って思っちゃいました。

 ことほどさように、オタクの本質と探偵って意外にあってそうなんですが、問題が一つ。”オタク”のディープさ文章で表現するってけっこう難しそうなんですな。これがマンガやアニメみたいなビジュアルだと、コレクションの山だとか萌え絵だとか、ださいファッションセンスだとかわかりやすそうなんですが、これを文字にしちゃうとなんだか薄っぺらな感じになりそう。だからオタク的なアイコンって、しかもあまりパンピーが知らなさそうな作品が元ネタになってるとかが必要になるんじゃないかと。さらにこれがどのあたりの時代の作品かなんて絡んでくるとさらに読む側にとって難しくなんじゃないかと

 本作品での裏染天馬の発言から

  ・ユノね。二〇一号室の住人かヤンデレヒロインみたいな名前だな
  ・一刻も早く今週の『絶望先生』を読んであびるちゃんの包帯属性を愛でてから~
  ・逃げちゃダメだ、か。確かにこりゃ、名ゼリフだな
  ・ハカイダーかよ。色は何色だよ。黒か、銀か
  ・おま・・・ お前、馬鹿野郎! ダンクーガをよくも! 買ったばかりなのに!
  ・おかげでこの部屋、灼熱地獄だよ・・・ 火の二日間だよ、畜生・・・
  ・テレ朝でスマプリを見なきゃいかんからな

これ以外にもいっぱい出てくんですけど、半分もわかんなかったかな~~ しかたがないのでググりましたが(この辺も度し難いと自覚はあんですけどねぇ)
 ”体育館の殺人”は2012年、”水族館の殺人”は2013年の出版なので当時ならまだわかりやすいネタも、読書層が入れ替わりの早い中高生世代だったら5年もたてばわかんないネタもけっこうあったんじゃないかと・・・
 アニメや漫画、ドラマネタなんて劣化が早そうなんで、この手でキャラ設定するのって作家的には結構リスキーなんじゃなかなと思いつつ。

 ”体育館の殺人”ミステリーの新人文学賞である”鮎川哲也賞”を2012年に受賞。”本格モノ”ミステリーとしても高い評価を受けています。実際、面白かったし!
 でもよくオタク探偵で受賞したよな~~ 審査員の中でも日本アニメ界のレジェンド”辻真先”ならいざしらず(*5)、芦辺拓、北村薫がよくOKだしたよね~~~

 裏染天馬シリーズは現在4冊発刊されているんで、あと2冊。がんばって読みまっしょい!

《脚注》
(*1)”あくまで個人の感想であり、個人差があります”(笑)
 健康食品やダイエットのCM番組に必ず出てくるこのフレーズ。これは効果効能をを明示(あるいは暗示)して”薬事法”や”景品表示法”に抵触する恐れがあるため。
 ツッコミ所満載であっても、あえて笑ってスルーするのが大人のマナーというものです、はい
(*2)ちはやふる(末次由紀、BE LOVE KC)
 競技かるたに没頭する少女の青春を描いた漫画。2007年12月から連載中で、2011年にアニメ化、2016年に広瀬すず主演で映画化。すいません、見てません。
(*3)刑事コロンボ
 ロサンゼルス市警察殺人課の刑事”コロンボ”を主人公としたサスペンス・テレビ映画。主演はピーターフォーク風采の上がらないユーモラスなおっさんのコロンボが完全犯罪をたくらむ一流の犯人をじわじわ追い詰めていくストーリーが圧巻。
 倒叙物ミステリーの傑作です。お勧めです。
(*4)ユノね。二〇一号室の住人か~
 二〇一号室の住人:”ひだまりスケッチ”に登場する女子高校生”ゆの”
 ヤンデレヒロイン:”未来日記”に登場する”我妻由乃”。実はストーカー。
 あびるちゃん:”さよなら絶望先生”に登場する包帯まみれの”小節あびる”
 逃げちゃダメだ:”新世紀エヴァンゲリオン”の主人公”碇シンジ”のセリフ
 ハカイダー:”人造人間キカイダー”シリーズに登場する悪役ロボット
 ダンクーガ:”超獣機神ダンクーガ”に登場する合体/巨大ロボット
 火の二日間:”風の谷のナウシカ”で人類を滅亡の淵に追い込んだ”火の七日間”
 スマプリ:”スマイルプリキュア!”の略
多分、モトネタはこの辺りではないかと。私も全部見たわけじゃないですし、正解が書いてあるわけでもないので・・・
(*5)日本アニメ界のレジェンド”辻真先”ならいざしらず
 なんせ、”鉄腕アトム”の脚本を執筆してたという筋金入りの人。wikipediaに作品一覧が載ってますが、SF、ロボット、特撮、伝奇、ギャグ、スポコン、魔女っ子、少女モノなどなど。ジュブナイルやミステリーも多数。改めて凄い人だと感心しました

旅に終わりはない、Oh! Our trip would never end(深夜特急6/横浜港大さん橋 国際客船ターミナル)

 ども、最近旅といったら温泉かな~ななおぢさん、たいちろ~です。
 今の日本で”帰るべき場所”のない人ってのは少数派でしょうか。確かに”家を失くした人”ってのはいますが、それは”住所不定”というロマンもなんもない言い方で、”旅をしているのとはちょっと意味合いが違うかも。
 つまり、ほとんどの人にとって”旅”とは終りのあるものです
 ということで、今回ご紹介するのは1年を超えた貧乏旅行の終わり”深夜特急”の最終巻であります

写真はたいちろ~さんの撮影。横浜港大さん橋ビルです

250457
 
【本】深夜特急 第6巻(沢木耕太郎、新潮文庫)
 沢木耕太郎がインドのデリーから、イギリスのロンドンまでバスだけ使って旅行するという紀行小説。最終巻の第6巻では沢木ははたしてロンドンに到着して日本に到着の電報は打てたのか?
【旅行】横浜港大さん橋 国際客船ターミナル
 横浜港にある外航客船に対応する客船ターミナル。1964年に東京オリンピック開催に合わせて、外航客船に対応した客船ターミナルの新設など大改造、2002FIFAワールドカップサッカー大会に合わせて現在の”横浜港大さん橋国際客船ターミナル”をオープンしたとのこと(横浜市hpより抜粋)。

 ”深夜特急”は全6巻からなりますが、最終巻ではいよいよヨーロッパの中心へ。第五巻トルコあたりからずいぶん雰囲気も変わってきた印象。それはアジア大陸の貧しくもどこか熱っぽい後進国から、ヨーロッパの洗練されたクールな先進国へ来たこともあるかもしれませんが、大きくは”旅の終わり”に近づいてきたからでしょうか。

 沢木の旅というのはかなりいいかげんで、ゴールがロンドンと決まっている以外はフリーダム。ひとところにかなり滞在してたかと思うと、有名な観光地であってもおもいっきりすっとばしたり。でも、あまり”帰る”という選択肢はなかったような。それが、ゴールに近づくにつれて、帰ることを意識し始めたのかも。リスボンの港で見つけた英字新聞で見つけたケープタウン回りで横浜に帰る船の記事に心動いた様子。もし、ここでこの船に乗っていたら、横浜大さん橋に戻ってきたんでしょうか?
 でも、結局乗らずに前に進むことに

  確かにリスボンかわ船に乗って帰ることはできる
  リスボンでもロンドンでも大して変わらない。
  しかし、やはり、同じではないのだ。
  それに、私はこのリスボンが最後の地になることに納得していない
  ここではないのだ

 旅の終わりというか”終わる”ことに対する達成感と同時に寂寥感みたいなのがあるんでしょうかね。イランのヒッピーバスに乗っていた若者が長い旅から故郷に帰るバスを指さして別れ際に投げかけてきた言葉

  From Youth to Death!(青春発墓場行)

を書いていいるのって、こんなむちゃな旅は若いからこそできるからとか、旅が終わり日常という大人の世界へ戻ることへの認めがたいなにかがあるのかとか、いろいろ考えちゃいます。

 なんだかんだでロンドンにたどりついた沢木ですが、こんな感想を

  日本に帰ることはできる。だが帰ることに現実感がない
  喜びも湧いてこなければ寂しさがあるわけでもない
  妙に無感動なのだ

 きっとベクトルが反対の両方の感情が引っ張り合って無感動になるのかな~
それとも第三の感情があったなのかな~とか・・・
こんな気持ちの沢木がとった行動はなんだっかのか?
 そこは本書でお楽しみください

 本書を読み終わって、ふと思い出したのがこの曲

  旅に終わりはない
  Oh! Our trip would never end
  友と旅立とう
  The trip with all my friends
  There’s no end

   ”飛翔 NEVER END”(作詞 藤原月彦、作曲/歌 西松一博)

 1983年に公開された”クラッシャージョウ”(*1)という映画のエンディングテーマ。もう35年近く前なんですが、この本の雰囲気に合ってるのかふと聞きたくなっちゃって・・・あ
 (曲はこちらからどうぞ)

 本書は日常に飽き足らず旅に出ようかなと思ってる若者にはお勧めの本。1974年ごろの旅行なので現在とはずいぶん事情は違うでしょうし、ここまでダイナミックな旅がいいとは言いませんが、”旅”が一つの成長の糧、あるいは成長儀礼になるんじゃないかと思える本です。

《脚注》
(*1)”クラッシャージョウ”(原作 高千穂遙、バップ)
 恒星間飛行が可能となった宇宙時代、クラッシャーと呼ばれる惑星改造を始めとする宇宙の何でも屋”クラッシャー”という職業集団が登場した・・
 ジョーをリーダーとする”クラッシャージョウ”チームの活躍を描く日本のスペースオペラ。原作の小説は高千穂遙&イラスト 安彦良和(ハヤカワ文庫JA)。映画版は監督&キャラクターデザイン 安彦良和、メカデザイン 河森正治、原画 板野一郎、CVは主役の竹村拓、佐々木るんに加え、脇を固めるのが小林清志、小原乃梨子、納谷悟朗と結構豪華メンバーでした。

アニメ版と実写版”破裏拳ポリマー”の違いって、肉弾戦に対する美意識の違いかも(破裏拳ポリマー/蟹の甲殻)

 ども、子供のころは”あちょ~~”をやってたおぢさん、たいちろ~です。
 時は1974年、”カンフーブーム”に沸いておりました。もちろん火付け役となったのはブルース・リー主演の”燃えよドラゴン(*1)”であります。日本中の男の子はこぞって”あちょ~~”を叫びながらリーのまねっこを。中には手製のヌンチャク振り回すのもいました。
 そして同じ1974年、タツノコプロによって作成されたアニメが”破裏拳ポリマー(*2)”。カンフー・アクションばりの”破裏拳”を駆使し、高分子重化合物”ポリマー”でできたポリマースーツで”破裏拳ポリマー”に転身するヒーロー。いや~、けっこう当時は入れ込みましたね~~
 ということで、今回ご紹介するのは40数年の時を超え実写化された”破裏拳ポリマー”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。新千歳空港で売ってたカニです

0082


【DVD】破裏拳ポリマー(主演 溝端淳平、 監督 坂本浩一、KADOKAWA)
 激増の一途をたどり過激化する組織犯罪に対抗するため、警視庁と防衛省は単体での攻撃力、機動力を兼ね備えた特殊装甲スーツ”ポリマースーツ”を開発した。しかし軍隊をも破壊できる力を危険視した警視総監は、開発を中止し完成していたポリマースーツを封印した。
 数年後、ポリマースーツの開発が再開されるがテスト版ポリマースーツのうち3体が盗まれ、犯罪に利用される。彼らに対抗できるのは、封印されしオリジナル版ポリマースーツを使える破裏拳の唯一の継承者”鎧武士(溝端淳平)”だけだった・・・
【動物】蟹の甲殻
 ”ポリマー(重合体 polymer)”というのは複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のこと。接頭語”poly”は”たくさん”を意味します。身近なところではナイロン、ポリエチレンなどの合成樹脂。自然界ではカニ(甲殻類)の外骨格(殻)を形成する”チキン”で、これはN-アセチルグルコサミンの重合体。
 すいません、書いてる本人がよくわかっていません。


 で、観た感想ですが”なんか、思ってたのとちょっと違う?”。まあ、原作派のお約束のセリフなんで気にしていただかなくてもいいんですが、なんか当時と入れ込み度合いが違うな~と。厨房と60歳前のおぢさんが同じ入れ込みってのもなんなんですが、なんでかな~~

 主演の”溝端淳平”は思ってた以上にアクションしてるし、ストーリーは大人が見ても楽しめるし。まあ、アニメ版に比べて”車探偵長”みたいなギャグの要素が減ってるとか、どっか間抜けなとこのあるタツノコアニメの悪役に対して実写版は真面目すぎるとかいろいろ突っ込みどころはあるんですが・・・
 つらつら考えると、どうもこれは

  肉弾戦に対する美意識の違い

じゃないかと。
 アニメ版の”破裏拳ポリマー”がブルース・リーへのオマージュって感じなのに対して、実写版の”破裏拳ポリマー”は洗練された仮面ライダーや戦隊モノ、宇宙刑事シリーズ(*3)ってイメージかな、これが。アニメ版の”破裏拳ポリマー”って造形的には全身タイツみないた素材で”肉体”そのものをイメージさせる作りなのに対し、実写版のはまさに”プロテクター”。柔軟な素材に甲殻っぽいプロテクトパーツの組み合わせは”肉体感覚”が希薄になってるって感じ。確かにアニメ版の造形をそのまま実写化したらおそらくチープなもんになったのはわかりますが・・・(*4)
 逆説的かもしれませんが、肉体の露出度が高く”ポリマースーツ”としては最も脆弱性が高そうな”ポリマーアルテミス”が一番”肉弾戦”ってことではオリジナルの雰囲気に近いのかも。決しておっぱいの谷間見えてるとか、フトモト綺麗とか、二の腕が・・・ とかじゃないですから(笑)

 もうひとつあるとしたら、カンフーブームに沸いていた1974年という時代性でしょうか。当時の”燃えよドラゴン”というフォーマットが”裸の肉体の戦闘力”というのに信仰的ともいえる熱を与えていたんですが、今はそういうのないかな。そんな中で”カンフーアクション”を持ってくると、”肉体が強いのか、ポリマースーツが優秀なのか”がビミョ~な感じに。ましてや”ポリメットに学習機能を付けて、データをAIに記録させて、技を盗む”とか言われるとポリマースーツが優秀って側に寄っちゃいそうだしねぇ

 実写版”破裏拳ポリマー”はアクションは結構切れてるし、SFXも良くできていて作品としては面白いです。おぢさん世代のノスタルジーなんか気にせず、若い人が素直に見りゃ面白いでしょうね。おぢさん世代だって上記のようなひねくれた観方しなけりゃ楽しめると思いますよ

《脚注》
(*1)燃えよドラゴン(監督 ロバート・クローズ、主演 ブルース・リー、ワーナー)
 1973年12月に公開、世界中で大ヒットしてカンフーブームを巻き起こした記念碑的映画。国際情報局から犯罪組織の疑いがあるハンの島の内偵を依頼され、これを単身壊滅させるというスッキリなストーリーなんですが、ここで繰り広げられるカンフーアクションが圧倒的に魅力的超人的な強さとオリエンタルな精神性を兼ね備えたブルース・リーがたまらんかったです
(*2)破裏拳ポリマー
 1974~75年にNETテレビ(現・テレビ朝日)で放映されたアニメ。
 ワシンキョウ市に三流ヘボ探偵”車錠(CV 青野武)”を探偵長とする車探偵事務所があった。メンバーは探偵長に新米助手の”鎧武士(CV 曽我部 和恭)”、探偵事務所があるビルのオーナーで美少女の”南波テル(CV 落合美穂)”、車の飼い犬”男爵(CV 立壁和也)”。車探偵事務所は”鬼河原長官(CV 雨森雅司)”率いる国際警視庁を出し抜いて事件解決を図ろうとする。
 そして鎧武士は実は破裏拳の使い手で、ポリメットを使って6つの形態に転身する”破裏拳ポリマー”としてひそかに犯罪者たちと戦うのだった・・
 今気がついたんですが、南波テルの中の人を除いて全員物故されてるんですね。時代が流れているワケだ・・・
(*3)宇宙刑事シリーズ
 1982年~85年に東映が制作した特撮テレビドラマ”宇宙刑事ギャバン”、”宇宙刑事シャリバン”、”宇宙刑事シャイダー”の総称。赤いコンバットスーツだから”宇宙刑事シャリバン”かな?!
(*4)おそらくチープなもんになったのはわかりますが
 その好例が”バットマン”。私が子供のころ見てたのは1966年のTVシリーズですが、このころのバットマンはほとんど全身タイツ状態。現在映画に登場する腹筋割れてるプロテクターから見ると隔世の感があります
 ”GOISBLOG” でその変遷がわかるのあったのでご参考にしてください

生首に関する、とあるミステリーでの考察について(数奇にして模型/生首)

 神奈川県座間市の某殺人事件に触発されてってわけではないんですが、先日読んだ、森博嗣の”数奇にして模型(森博嗣、講談社文庫)”というミステリーに、首の切断に関する考察めいた話が出ています。あらすじをいうと

  模型交換会の会場で首が切断されて持ち去られたモデル女性の死体が発見される
  殺された部屋は密室で、中には大学院生”寺林高司”が昏倒して倒れていた
  時を同じくしてM工業大学の密室では女子大生の死体が発見された
  この事件の容疑者として”寺林高司”の名前が挙がる
  不可能犯罪に見えるこの事件にN大学助教授”犀川創平”と女子大生”西之園萌絵”が挑む・・

といった内容。
 本書の中でキーになっている一つが”何故、首が切断されて持ち去られたのか”という謎。本書の中での考察

〔被害者の身元を分からなくするため〕
 ミステリーの常道ですが、本書の中では否定的。指紋やDNA鑑定があたりまえの昨今。そんなに時間稼ぎにはなんないんではないかと。座間市の某殺人事件でも事件発覚から10日そこそこで警察が特定したと発表してるんで確かに効果は限定的かも。裏付け捜査もやってるはずなので、実際はもっと早くから分かっていたんでしょうし

〔子供と同じ〕
 ”首が欲しかったんでしょう”、”ただ単に首を切り離したかっただけ”という意見。前者については”興味はありますし、やってみたいと思うこともありますね”、後者については”子供が人形の首を引きちぎるのと同じなんじゃないの? 残虐な行為にそもそも理由なんてないと思うな”とも。わからん理屈でもないですが、警察はこれでは納得してくれんでしょうな

〔殺したいほど憎いから〕
 殺したいほど憎いなら顔だって嫌いなはず、そんな人の首を欲しがる感情が生まれるか? ということで、これは否定。理系らしい犀川創平の考察

〔好きでしかたがないから〕
 私は好きだけど、相手からは嫌われている。嫌われることは許せない。殺してしまえば嫌われることもない。抜け殻になった人形としての相手を自分のものとして所有したい、という心理。犀川創平の疑問は”そのあと、どうするのだろう?” そもそも相手が歳をとってしまう前に現状維持で保存したいのなら、ドライフラワーみたいなものだと。
 これに比較的近いのは、オスカー・ワイルドの”サロメ”でしょうか。王女”サロメ”は踊りの礼として王に自分の愛を拒絶した”預言者ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)”の首を所望し、その生首に口づけするという物語です。

  写真はビアズリーによる”サロメ”のイラスト
  おそらく世界で最も有名な”生首”の絵ではないかと

Photo

〔首を切る行為が必要だった〕
 視点を変えて、首が必要だったのではなく”首を切る”という行為のほうに意味かある場合。さらに”首を持ち去る行為”の理由が必要だとも。

 本書の考察以外にも

・殺害の証拠にするもの
 いわゆる”首実検”。戦国時代などで、部下が敵方の首級の身元を大将が判定し論功行賞を決定するために行われたもの。体ごと持って帰るのがたいへだから首だけ。写真も冷蔵車もない時代ですし

・杯の材料
 いわゆる”髑髏杯”。織田信長が、浅井久政らの髑髏に漆を塗って作成したものが有名。はっきり言って悪趣味だと思います。

などでしょうか・・・

 さて、本書での犯人の動機はというと・・・
 それは本書を読んでいただくということで

 別に某事件の犯人の動機がどうしたこうした言うつもりはないんですが、たまたま某事件と本書を読んだのがあまりにもタイミングが合ってたんで書いてみました。ビブリオマニアの業とでもいいましょうか。申し訳ない。

 文末になりますが、被害にあわれた方のご冥福を謹んで祈りします

P.S.
 本書のもう一つのテーマは”型(かた)”と”形(かたち)”。模型は”型”で人形は”形”。

  それも我々の型にはめようとすると理解できない事象だった
  自分で作った”形”でも次の瞬間には壊そうとしている

 ということで、今回はいつもの型と形を変えて書いてみました。どうでしょう

自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと(ナイフを失われた思い出の中に/鶴岡八幡宮)

 ども、心に闇を持つおぢさん、たいちろ~です。
 2016年、17年と平成犯罪史に残るような大事件が立て続けに発生しています。2016年7月には神奈川県相模原市の知的障害者施設で発生した大量殺人事件。19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせたのは戦後では最も犠牲者の多い事件でした。
 2017年は先日神奈川県座間市で発生した連続殺人・死体遺棄事件。男女9人の遺体が見つかったこの事件も連続殺人としては過去最多。前者は知的障害者を後者は自殺願望のある人を対象とするという陰鬱な事件です
 で、ちょっと気になったのが初期の報道におけるイメージの違い。相模原市の大量殺人の容疑者って、当初から”障害者の抹殺”なんていうとんでもない主張をする人物ということが報道されていて、犯行=容疑者像(*1)もなんとなく納得感みたいな空気があったんですが、後者はあんまりこれがなかったようで。たまたま今読んでる本でこの報道で感じたような話がありまして。
 ということで、今回ご紹介するのは犯罪にまつわる記者の目の話”ナイフを失われた思い出の中に”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。鎌倉の鶴岡八幡宮です

1090030


【本】ナイフを失われた思い出の中に(米澤穂信、東京創元社)
 ”ヨヴァノヴィッチ”は妹の友人で今はフリーの”記者”である”大刀洗万智”の元を訪れてきた。彼女は浜倉市で発生した16歳の少年”松山良和”が姪で3歳の少女”松山花凛”を刺殺した事件を取材中で、彼もその取材に同行することになる。目撃者があり逮捕された犯人は犯行を認める手記を残している。一見簡単に見える事件だったが、その真相は・・・
 ”さよなら妖精(*2)”に登場する大刀洗万智を主人公とした短編推理小説集。
 ”真実の10メートル手前(米澤穂信、東京創元社)”に収録
【旅行】鶴岡八幡宮
 本書で事件が発生したのが浜倉市。モデルになっているのは記載の内容から鎌倉市と思われます。松山良和が逮捕されたのが”浜倉八幡宮”で万智はヨヴァノヴィッチに”神殿”と説明しています。神社の建物なので”神殿”っていうのは間違いじゃないんでしょうが、日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・(*3)


 座間市の死体遺棄事件の初期での報道の違和感ってのは”容疑者を知る人”へのインタビューの答えが”普通にあいさつする普通の子”、”おとなしくていい子”といった”善良な普通の知人”だったこと。このような常軌を逸した事件の容疑者が”普通の人”でSNSを使いこなす今ドキの若者だったってことに驚きを感じたのは私だけじゃないと思うんですがどうでしょう?
 宮﨑勤の事件(*4)なんかが代表的な例なんでしょうが、”やっぱりこんな人間がこんな犯罪をするんだ”的な微妙な納得感、露悪的に言うと安心感ってのが社会にあったんじゃないかと。まあ、善良だと思っていた隣人が実は凶悪犯だと思うより、”あいつはヤバそう”と思って防衛に出たほうが精神的に安定できるってのはわからんでもないですが、それはそれで危険なこと。偏見と憎悪がかえって社会的な不安を招いている例は歴史に数多くあります。まあ、現代もそうですが・・・

 で、本書ですが大刀洗万智がこの事件を追いかける理由ってのが、容疑者である松山良和の本棚が社会にさらされ、それが大量でも特別異常なもでなかったにも関わらず、趣味と犯罪が結び付けられて、多くの人嗜虐的な幼児性愛者と信じてしまって、それが殺人の動機の根幹根幹であると考えられていること、それをマスコミがそのように伝えたこと。 事態は松山良和の手記が無加工のまま流されたことによって事態はさらに深刻に。

 大刀洗万智がヨヴァノヴィッチに”記者の仕事は人間の器官の延長か?”という問答をするんですが、ヨヴァノヴィッチが”目、でしょう”という回答に対して大刀洗万智はこんな反論をしています

  目とは、人が見たいと思っているものを見るための器官なのです
  錯覚にまみれ、そこにあるものを映さない。
  それは決して、目という器官の物理的限界によるものではありません
  見たくないものをカットし、見たいように見るからこそ
  そうしたことが起きるのです

だから真実を明らかにするのは”目”の仕事ではないと。だから記者は”目”ではないと。だから、”目”の言い分としてではなく記者は事実は加工されるべきだと。

 念のためいっときますが、だから偏向報道やフェイクニュースがいいと言ってるわけではないですし(そんなのはもってのほかです!)、そもそも偏見を持つなということ自体人間が多かれ少なかれヒューリスティクス(*5)な思考方法をとる以上、まったく排除するのは困難でしょう、たぶん。

 重要なのは、自分の持っているイメージのと”違和感”があること、あるいはないことに関して自覚的である必要があるんじゃないかと。この事件の真犯人が容疑者だっかたどうかという話ではなく、気をつけないと99人の断罪と1人の冤罪を生み出しかねないな~という自戒をこめて書いてみました。

 先日、朝日新聞の記事で”「理想の貧困」に苦しむリアル当事者”って話が出てましたが、これは自分のイメージにある”理想の貧困”と当事者の状況が合っていないと”お前は貧困じゃない”と批判する”貧困たたき”になっちゃうと。もともとは善意からなのかもしれませんが・・・ うっかりすると自分もこの手の話をやっちゃいかねないので、ちょっと怖くもあります。

 本書は”さよなら妖精”の続編ですが、これだけ読んでも大丈夫。
 ご一読のほどを

《脚注》
(*1)容疑者像
 ”容疑者”は犯罪を犯した容疑があるとして捜査対象になっていてまだ公訴が提起されていない者、法律用語では”被疑者”。起訴された後は”被告人”。
(*2)さよなら妖精(米澤穂信、創元推理文庫)
 1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる(amazon.comより)
(*3)日本人がイメージするのとビミョ~にずれてる感が・・・
 私の場合だと”神殿”ってパルテノン神殿あたりをイメージしちゃうんですが・・・
 一般的に神体を安置する社殿は”本殿”、”本堂”あたりでしょうか。鶴岡八幡宮のhpだと本殿を日本語では”本宮(上宮)”、英語だと”Main Shrine(主となる聖なる場所や建物)”になっています。
(*4)宮﨑勤の事件
 1988年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。犯人の宮﨑勤がおたく・ロリコン・ホラーマニアと報道されたことで”オタクバッシング”の元となりました
(*5)ヒューリスティクス
 必ず正しい答えはだせないにしても、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法のこと。答えの正しさは保証しないかわりに、答えを出す時間が少なくできます。行動経済学なんかの本を読むとよく出てきます。

«この世界は精巧で美しすぎるんだ。何を撮ったって正解にきまっている(東京シャッターガール/手塚治虫記念館)

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ