ア・ア・ア デジタル・ゴールド お金と思~う今年の人よ~♪(デジタル・ゴールド/通貨)

 ども、Fintech(フィンテック)にちょっとだけからんでるおぢさん、たいちろ~です。
 Fintech(FinTech)つーのは金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語”IT技術を使った新たな金融サービス”という意味。ところがこれがまた分かりにくいんですな。融資や資産形成のアドバイスをAIでやるだとか、スマホを使った決済や家計簿管理だとか、まあお金の処理に絡んだITだと何でもありの様相。群雄割拠というか玉石混交というか・・・ この中でも分かりやすそうで、実はよく分かんないのが”仮想通貨”というシロモノ。ちょっち真面目に勉強してみましょうということで、この本を読んでみました。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな仮想通貨の歴史を扱った本”デジタル・ゴールド”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。松山城天守閣に展示されていた”藩札”です

6022511


【本】デジタル・ゴールド(ナサニエル・ポッパー、 日本経済新聞出版社)
 ”ビットコイン”と呼ばれる仮想通貨。その始まりは謎の人物”サトシ・ナカモト”がネットにアップした論文だった。2009年、この論文を元に発行された”ビットコイン”は2016年12月には時価総額140億ドルを超える・・・
 サブタイトルは”ビットコイン、その知られざる物語
【道具】通貨
 流通貨幣の略称で、国家などによって価値を保証された、決済のための価値交換媒体(wikipediaより)。この”保証”と”媒体”ってのがミソで、昔の金貨ならいざしらず、現在の”紙幣=媒体”そのものの物理的価値なんか無いに等しく、じゃあなんでこれがありがたがられるかというと日本銀行(日本政府)が価値を保証してくれてっから。
 価値を保証してくれれば別に国家(中央銀行)でなくてもいい訳で、実際に明治の廃藩置県以前は”藩札”ってのがありました。この中には代官所や旗本領が発行する紙幣ってのもあったそうで、こうなるとポイントカードのノリに近いんでしょうか?(*1)


 さて、本書ですが著者がニューヨーク・タイムスの記者ということもあって非常にリアル、ってか生々しい話(原書の副題に”Inside Story”ぐらい)。なにかって~と、技術の発展と思想的側面に支えられた初期の開発者たちが夢見た世界の発展と挫折、後半に登場する資本家たちの利益追求の姿勢がきわめて対照的なんですな。元々”ビットコイン”が開発された思想的基盤ってのはリバタリアン(自由至上主義者)により国家や金融機関などの権力から通貨を解放し、ネットワーク上で自由に使える通貨を手に入れる”ってあたりに合ったんですが、現実は国家や資本主義とは無縁ではいられなかったと。気になったトピックをいくつか

〔発行主体を持たない”ビットコイン”の価値〕
 ”ビットコイン”が生まれた背景には”国家に通貨の発行を任せていると、価値が安定しない”という思想があります。これは初期のメンバにはハイパーインフレの国にいた人がいたり、アメリカ国内でもリーマンショック(経済危機)を目の当たりにしてたりなどがあったから。国家(政策)に振り回されなけりゃこんなことにならないだろうというのがそもそもの発想です。
 ”ビットコイン”そのものは”マイニング”と呼ばれるコンピューターをブンまわして計算される一連の文字列として表記され、これが有限の個数(そういう仕様)なので問題はないと初期の開発者は考えてました。実際は有限の資産に対する獲得競争があって1BTC(ビッコトコイン)あたりの価値は膨らんでますがインフレよりはまし?

〔金遣いの履歴を見られない権利〕
 一般論で言うと、現金ってのは誰がどこで何を買ったかはわかりません(*2)。でもカード決済や銀行経由の送金だとこれが一目瞭然。まあ、リコメンデーションあたりだと罪はないんでしょうが(*3)、考えようによっては不気味でもあります。ビッコトコインでは”ブロックチェーン(*4)”という技術を使って匿名性を確保する仕組みになっています。
 ただ、ヤバイもんに手を出すとはいろいろ問題がありそうで、実際ビットコイン普及の原動力になったののひとつは不法薬物のネット販売の決済利用ってのがあり、これが政府に目をつけられた原因に。マネーロンダリングやテロ組織への送金など匿名であるがゆえに政府がピリピリしている状況です。

〔手数料が高いんじゃね?!〕
 ”ビットコイン”が生まれた背景のもう一つに”送金手数料”や”カード手数料”が高いし、処理に時間がかかるってのがあります。これは”銀行”や”カード会社”といったハブ機能を持つ寡占的・規制的な存在があり、その背景には集権的で高コストなシステムが存在するからだと。”ビットコイン”はこのようなハブが存在しなくても成立するので手数料が安くできると。
 ですが、実際には本来は不要であるはずの交換所(ビットコインを預けたり払い戻しをするネット上の企業)が立ち上がって、マウントゴックス(*5)のように、ここが破綻すると払い戻しができなくなるという事態が発生します。

〔銀行 vs IT企業〕

 銀行というのは典型的な規制企業なので、どっちかとゆ~と新しいコトをやるのが苦手な業界ではないかと思われます。昨今はそうも言ってられないのでFintechに積極的に取り組んでる銀行も増えてきていますが。これは彼の国も同じだったようで。JPモルガン・チェース(アメリカの銀行持株会社)とIT企業とを対比した本書の記載。

  JPモルガンが新規事業に参入する際にもっとも重視するのは
  どれだけ儲かるかではなく、規制当局がどう思うかに変わっていった

   (中略)
  金融危機に巻きこまれなかったシリコンバレーの姿勢は180度違った
  アップル、グーグル、フェイスブックなどの成功に意を強くしたIT業界は、
  世界を変える自らの能力への自信を深めていた

   (中略)
  むしろほかの業界と比べて、既存のプレーヤーが規制を破ることを極端に恐れている金融は、
  変革の機会にあふれていると思われた

 はてさて、次世代の覇者はどっちなんでしょうかね?

 さて、本書を読んだ最大の理由が”ところで、ビットコインって何に使えるんだっけ?”なんですが、読んでもよく分かりませんでした。確かに、送金なんかの手数料は安くできそうだし、資産蓄積には使えそうなんで役には立つってのはわかるんですが、今ンとここれでモノが買えるとこがそんなにあるわけじゃなし、呑み代の支払いで受け取ってもらえるとこもあんましありそうでなし、誰かがその価値を担保してくれるわけでなし。
 お金で物が買えるってのはその通貨に何か価値があると考える”共同幻想”の賜物だと考えれば、今のお金だってビットコインだって大した違いがないっちゃないのかもしれませんが・・・


  ア・ア・ア デジタル・ゴールド お金と思~う今年の人よ~♪
  円と違う ドルと違う 元と違う ユーロと違~う♪
  ごめんね 今のお金と又比べている~~♪
(*6)

まっ、これを書いている12月30日の日経新聞に国内最大のビットコイン取引所”bitFlyer”が日経新聞に3面ぶち抜き+1/3広告×3という大広告を出してたんで実体経済にも認知されつつあるようなので、もうちっとでいろいろ使えるようになるんでしょうかね。期待して新年を迎えてみましょう

《脚注》
(*1)ポイントカードのノリに近いんでしょうか?
 カードのポイントは値引きや景品との交換に使えるので通貨っぽいと言えます。じゃあ、この価値を保証する企業が倒産するとどうなるかつ~と会計処理上”引当金”を積んでいれば無価値になることはない(はず)です。逆に言うとこれを積んでいなければ無価値になることも・・・
(*2)誰がどこで何を買ったかはわかりません
 推理小説なんかだと、銀行強盗で奪ったお金は番号が控えられているので使うと足が付くなんてのがありますので、全く分かんないわけではないんでしょうが。
(*3)リコメンデーションあたりだと罪はないんでしょうが
 リコメンデーション(推奨)の例としてはAmazonの”おすすめの商品”がこれ。ただし、アイドルの写真集なんかを立て続けに見てると”おすすめ商品”にそれっぽいのがいっぱい表示されちゃうのはちょっと困りモンかも。
(*4)ブロックチェーン
 インターネット上の複数のコンピュータで取引情報を共有し正しい記録を鎖(チェーン)のようにつないで蓄積する仕組み。日本語では”公開分散元帳”と訳されます。
 技術的な詳しい内容はでんでん理解してませんが、まあ物理学を理解してなくても自転車には乗れるようなもんだと思えば気にはなりませんが・・・
(*5)マウントゴックス
 2013年には世界のビットコイン取引量の70%を占めた交換所。ハッキングによりビットコインを喪失し、支払い不能になり2014年に破産。
(*6)ア・ア・ア デジタル・ゴールド~
 昭和の名曲”イミテイション・ゴールド”作詞:阿木燿子、作曲:宇崎竜童、歌:山口百恵)です。すいません、悪ノリしました。こんな曲です

潜水艦は”沈む”ではなくて”潜る”。ではオスプレイは”墜落”なのか”不時着”なのか?(クジラの彼/オスプレイ)

 ども、ブログを書くのに”言葉”を大切にするおぢさん、たいちろ~です。
 2016年12月13日に沖縄の海岸近くにオスプレイが落っこちました。何かと話題になる機体ではありますが、今回の報道で気になったのが同じ事象について登場する人やマスコミによって言葉の使い方がまったく違うんですな。沖縄県や一部のマスコミは”墜落”という言葉を使い、アメリカの司令官や日本政府、他のマスコミは”不時着”という言葉を使い。朝日新聞の天声人語(2016年12月15日)では、アメリカ軍と日本政府が”不時着”という言葉を使うのは”正常性バイアス(*1)”ではないかとう論調で書いてたんですが、ある本を思い出してそ~なんか~とちょっと気になりまして。
 ということで、今回ご紹介するのはOLと自衛官のレンアイを描いた有川浩の”クジラの彼”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
2015年の横田基地日米友好祭(*2)で展示されていたオスプレイ(MV-22)です

M229204043


【本】クジラの彼(有川浩、角川文庫)
 平凡なOL”中峰聡子”が人数合わせで参加した合コンで潜水艦乗りの自衛官”冬原春臣”と出会う。彼女の何気ない一言で意気投合した二人。行方がわからない、いつ帰ってくるかもわからない、メールも電話もほとんどつながらないというハードル高い春臣の職場環境の中、二人のレンアイの行方は??
 名作”海の底(*3)”のスピンオフ、自衛隊系ベタ甘ラブコメです。
【乗り物】オスプレイ(V-22)
 アメリカのベル・ヘリコプター社とボーイング・ロータークラフト・システムズが共同で開発した垂直/水平飛行が可能な垂直離着陸機。可変式のティルトローターが特徴。カテゴリーとしては”輸送機”になります。
 アメリカ海兵隊所属だと”MV-22”アメリカ空軍所属だと”CV-22”と別の組織による運用。事故率が高いと言われているのは”CV-22”の方。任務が違うので一概には言えませんが、これとて他機種に比べてことさら高い訳ではないとの意見もあります(wikipediaより)。細かい話のようですが、このへんもごっちゃにすると話がかみ合わなくなるので・・・


 さて、上記の潜水艦の話題での中峰聡子と冬原春臣の会話から。

  春臣 :潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。
       潜水艦が『潜る』って言う人と『沈む』って言う人。
       素人さんは半々ぐらいの確率で『沈む』って言いがちなんだけど、
       君は違うんだなって
  聡子  :え、だって クジラが沈むとか言わないじゃない
  春臣  :・・・そこで更にクジラが出てくるか

        (中略)
  春臣  :潜水艦はね、沈むって言わないの。必ず浮上するから。
       潜水艦乗りの生理として沈むって言われるのは我慢ならないんだよね。
       潜水艦が沈むのは撃沈されたときだけだから
  自衛官:・・・しつこいようですが、潜水艦は『潜る』です

 外見的には”潜水艦が海上から水中に進んでいく”という事象でありながら、立場が違うと似たような言葉でもまったく違うニュアンスになるってことです。

 てなことを踏まえて、今回のオスプレイの事故をつらつらと。報道されている内容を最大公約数でみると

 ・12月13日に、アメリカ海兵隊の新型輸送機オスプレイ(MV22)が
  沖縄県名護市沖に着水、大破
 ・市街地への直接的な被害はなし。パイロット等は無事脱出

あたり。この事象に対して、沖縄としては

  海上に”墜落”して大破している。そんな危ない飛行機を我々の上空で飛ばすな!

だし、アメリカ軍としては

  あれだけ機体が損傷していても県民や搭乗者に被害を出さなかったで”不時着”
  オスプレイやパイロットが優秀さの証明で、表彰ものだ!

というとこでしょうか。
 飛行機が操作不能あるいは困難な状況の中で目的以外の場所に着地することを指すことまでは同じでも、”墜落”は最悪の事態を引き起こしたってニュアンスがあるのに対し、”不時着”となると最悪の事態を回避できたってニュアンスで使われる言葉じゃないかと。ですんで、御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは”墜落事故”と呼ばれるし(*4)、一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は”ハドソン川の奇跡”と称賛されることになります(*5)。両機長とも最悪の事態を避けるべく最大限の努力を行ったことは想像に難くないですが、結果によって使われる”言葉”が違ってしまうのは仕方がないとはいえ、残念なことでもあります。

 今回の事故に関して言えば、発言する人の立場も違うし、事象へ評価姿勢も違うので使われる言葉が異なるのはわかりますが、言葉の使い方をちゃんと踏まえとかないと重要なモノが見えてこないんじゃないかとちょっと不安になります。マスコミですら半月近くたった今でも、”墜落”を使っているとこと”不時着”を使っているとこが混在。議論がかみ合あっていないのがわかります。

 ことわっておきますが、私は”墜落”か”不時着”のどっちの言葉が適切かとか言うつもりはないし、アメリカや沖縄のどっちかに与するモンでもありません。事故を起こすことは避けなければならないし、事故に対する原因究明と再発防止が重要な課題だと思っとります(だから炎上などさせないように!) ただ、”言葉”がなんとなく軽く使われているんじゃないかな~という昨今の状況をちびっと気にしているだけであります。

《脚注》
(*1)正常性バイアス
 事故や災害が起こったとき「きっと大したことじゃない」と自らに都合よく解釈し、事の深刻さを見誤ることをいう。同時多発テロの時、高層ビルから「ここは大丈夫」。「すぐに収まる」という思い込みで避難しなかった人がいたのもこの心理によるもの(本紙より抜粋)
(*2)横田基地日米友好祭
 毎年9月に横田基地でアメリカ空軍/航空自衛隊により開催される基地開放のイベント。マニア垂涎の航空機の展示や飛行訓練の様子を見ることに加え、都心からのアクセスも良いことからけっこうな人出。福生市観光協会のhp(2016年度)はこちら
(*3)海の底(有川浩、角川文庫)
 横須賀米軍基地が巨大な甲殻類に襲撃された。次々と人が襲われていく中、海上自衛隊潜水艦”きりしお”の夏木三尉、冬原三尉は逃げ遅れた少年少女とともに潜水艦に避難する。一方、神奈川県警の明石警部と警察庁烏丸参事官は状況を打開するためある秘策を実行する・・・
 有川浩の”自衛隊三部作”の”海”オチオシの名作です!
(*4)御巣鷹の尾根に突っ込んだジャンボジェットは~
 1985年8月12日に羽田発伊丹行きのボーイング747が御巣鷹の高天原山の尾尾根(通称御巣鷹の尾根)に墜落した事故。乗員乗客524名中520名が死亡するという惨事となりました。
(*5)一人の死傷者も出さずにハドソン川に不時着したエアバスA320は~
 2009年1月15日にニューヨーク発シアトル行きのUSエアウェイズのエアバスA320がエンジントラブルによりハドソン川に不時着水した事故。
 2016年にクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で”ハドソン川の奇跡”として映画化。この映画もまだ観ていないなぁ。

”理系あるある”の名探偵と犯人、似た者同士なんでしょうか?(すべてがFになる/UNIX)

 ども、人生すべてがFinishしそうなおぢさん、たいちろ~です。
 先日、森博嗣の”作家の収支(*1)”という本を読みました。まあ、それは普通なんですが、問題はこの人の小説をまったく読んだことながなったんですな。けっこうなベストセラー作家で300冊近い小説を出しているにもかかわらずです。これは本読みとしては猛省せねばならん! ということでさっそく代表作を。
 ということで、今回ご紹介するのは森博嗣のデビュー作にして代表作”すべてがFになる”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
カリフォルニア大学バークレー校
(UCB University of California,Berkeley)のセイザータワー(Sather Tower)です。

本書には関係ないんですが、行ったことあるので自慢したくて載せました。すいません

2004_08210059


【本】すべてがFになる(森博嗣、幻冬舎新書)
 孤島にある研究所の密室で天才工学博士”真賀田四季”が死体となって発見された。偶然、居合わせた建築学科の助教授”犀川創平”と彼の生徒である建築学科1年生”西之園萌絵”はその謎を解こうとするが・・・
 1996年に出版、第一回メフィスト賞(*2)を受賞した理系ミステリーの名作です
【コンピューター】UNIX
 本書にコンピューターのOSとして”レッド マジック(red magic)”というUNIX系のオリジナルバージョンが出てきます。このUNIX系のバージョンのひとつが上記のUCBで開発された”BSD(Berkeley Software Distribution)”。多数のノーベル賞受賞者を輩出し、孫正義をはじめとするハイテク系企業の起業者も多い名門大学とタメはることをやってんですから真賀田四季ってのはやっぱ天才なんでしょうな。
 ちなみにUNIXライクなLinuxというOSのディストリビューションに”レッド ハット(Red Hat)”ってのが実在します。(提供するレッドハット社の起業は1993年)

 さて、本書の建てつけは”密室の謎とき””孤島モノ”といわれるジャンルになります。交通や通信が途絶し、出ることも入ることもできない孤島や閉ざされた館の中で次々起る殺人事件・・・ ってとこですが、従来の孤島モノと違うのが、古びた洋館じゃなくて孤島にある最新のコンピューターで制御されたハイテク研究所が舞台だって所です。密室を証明?するのに画像データや操作ログを確認するだの、メール発信ができない原因を調べるのにプログラムをチェックするだの、普通の推理物とはかなり違うアプローチ。それ以外にもロボットに殺人ができるって話題は出てくるわ、自然言語解析によるコントロールを実用化してるだとかテクノロジーの話題が満載。さすがに1996年の出版なのでIT系のガジェットは一昔前のものもありますが、そんなに古いって感じじゃないです。

 本書は”理系ミステリー”と称されているそうですが、こういうテクノロジー系の話題が多いからかって~と、読んだ感じはちょっと違うかな。確かに本書は探偵役にワトソン役が建築学、殺された真賀田四季を始め研究所の人はコンピュータ関係者、本書では唯一文系の記者”儀同世津子”もパズル好きと理系資質、登場人物がほとんどすべて”理系”の人です。じゃあ理系を集めると理系ミステリーになるかというとそんなことはないわけで、キャラクターが”理系あるある”っぽい造詣だってことのほうが大きいからでしょうか。
 推理小説の”推理”ってのは”ことわり(理)を推し量る”ですんで、名探偵の多くは与えられた状況に対して分析的で推論を組み立てる、つまり”理系的なアプローチ”をやっています(やっていない人もいますが(*3))。ですんで、名探偵が理系的であることには感心しないんですが、本書に出てくる人達の感情や行動パターンがあまりにもあまりにも”理系あるある”っぽいんで。
 偏見に満ちた”理系あるある”がこんな感じ

〔殺人事件ごときでは動揺しない〕
 さすがに死体を見つけたすぐは動揺をみせていますが、すぐに日常モードに移行。だって、手足を切りとられたウェディングドレスを着た死体ですぜ、これ。普通だったら冷静か行動なんかできないんじゃないかと

〔殺人犯がいるはずなのに、あんまし心配していない〕
 ”孤島モノ”の最大のドキドキポイントは、今いる人の中に殺人犯がいるってこと。”次は自分が殺されるかもしれない”という不安や、”犯人はあいつかもしれない”つ~疑心暗鬼がいやがうえでもストーリーを盛り上げるモンですが、そんな様子は皆無。文系だったら、もっとオロオロしそうですが・・・

〔コンピューターを全面的に信じていない〕
 密室トリックを調べるのにやってるのが”プログラム改竄”や”バグ探し”。さすがに最近は”コンピューターは間違えない”と思う人は少ないでしょうが、このアプローチは理系ならではかも。

〔ホワイダニットよりハウダニット〕
 推理小説ってのはおおまかに”フーダニット(Whodunit 犯人は誰か)”、”ホワイダニット(Whydunit 犯行の動機は何か)”、”ハウダニット(Howdunit どのように犯行を行ったか)”に分類されます。で、本書の特徴は完全に”ハウダニット”偏重。”ホワイダニット”が完全に希薄なんですな。まあ、やり方がわかれば誰が、なぜが解き明かされるんでしょうが、”なぜ(何のために)”という話はほとんどなし。てか、謎ときが終わった後でも”なんでそんなことの為に殺人まで犯して!?”と感じちゃうレベルです。まあ、”ホワイダニット”がないから、自分が殺されるって危機感が薄いのかもしれません。

〔存在場所がどんどんバーチャル〕
 本書の冒頭でディスプレイを介した面談てのが出てきます。だいたい面談って目の前に人間がいるモンだと思いますが、これだと相手の人がどこにいるかは問わない状態。後半になると謎とき場面で、ゴーグル型ディスプレイを使ったヴァーチャル・リアリティってのが出てきます。まあ、技術自体は1990年代前半には存在していたし(*4)、登場人物がぜんぜん違和感なく使っているのはいいんですが、問題はシステムがネットワークに接続されるとアリバイを含めたリアルな所在場所の感覚が希薄になるんですな。しかも、それに違和感を感じてなさそう。このへんのネットワーク当たり前感覚は理系的かも。
 ”名探偵、皆を集めてさてと言い”という川柳がありますが、すでにリアルで集まる必要すらないわけで。集まった人の前で”犯人はお前だ!”ってカタルシスすらないんだから・・・ 

 犯人による、犀川助教授の評価

  貴方の回転の遅さは、貴方の中にいる人格の独立性に起因しているし
  判断力の弱さは、その人格の勢力が均衡しているからです
  でも、その独立性が優れた客観力を作った。
  勢力の均衡が指向性の方向に対する鋭敏さを生むのです

 まあ、名探偵をこんな風に分析した犯人ってそういないんじゃないかな。しかも、犀川助教授は”分析していただいて光栄です”と肯定モード。犯人とどこが違うのかという質問に対し”よく似たアーキテクチャーのCPUですけれど・・・”と返すとこなんか似た者同士なんでしょうなぁ

 本書はS&Mシリーズとしてまだまだ続くようですので、がんばって読んでみましょい!


《脚注》
(*1)作家の収支(森博嗣、幻冬舎新書)
 ベストセラ作家と呼ばれながらこれといった大ヒット作もないマイナな作家(本人申告)な”森博嗣”による、自身の収入(印税+もろもろ)と支出(経費)に関する考察。
 詳しくはこちらからどうぞ
(*2)メフィスト賞
 講談社による”面白ければ何でもあり”の文学新人賞(wikipediaより)
 本書以外にも西尾維新(クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い)、辻村深月(冷たい校舎の時は止まる)、新堂冬樹(血塗られた神話)なんてのが受賞。このへんもまだ読んでないな~~
(*3)やっていない人もいますが
 最近読んだのだと、京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”に登場する私立探偵”榎木津礼二郎”なんかがこれ。人の記憶を見る能力を持っているため、推理もなんもないというトンデモ迷探偵です。
(*4)技術自体は1990年代前半には存在していたし
 ただし、リアルに近づけようとするとけっこうな処理能力が必要(最近ではゲーム機でもやってますが、最近のゲーム機の能力ってすごいんですぜ!)。本書の中で背景を雲にすることで計算量を節約しているという記載がありますが、当時のコンピュータの性能を考慮しててほほえましいです、はい。

”小説家で食っていけるか?”どうかを考えるには参考になる本です(作家の収支/ダンボー)

 ども、密かにベストセラー作家になることを夢見るおぢさん、たいちろ~です。まっ、妄想ですけど。
 ”ブロガー”を強引に”表現者”だと言いきってしまえば、”小説家”だの”エッセイスト”なんぞになって見たいと思うこともあろうかと。まあ、小説を書くだけだったらがんばりゃできんこたなさそうだし、発表するだけだったら、自分のホームページに掲載すりゃ”発表”したと言いきれるし。ここまではOKなんですが、”××家”と名乗る以上食えないまでも、収入になってなきゃ恥ずかしいかと。このハードルってけっこう高そうなんですな。そもそも作家ってどれくらい稼いでるんだっけ? ってことすらよくわかりません。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな作家の収支報告に関するお話”作家の収支”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。

2015国際ロボット展(*1)”で見かけた”ロボダンボー”です。

Pc055675


【本】作家の収支(森博嗣、幻冬舎新書)
 ベストセラ作家と呼ばれながらこれといった大ヒット作もないマイナな作家(本人申告)な”森博嗣”による、自身の収入(印税+もろもろ)と支出(経費)に関する考察
 ちなみに、19年間に出版した本は278冊、総部数約1400万冊、稼いだ総額は約15億円だそうです。
【道具】ダンボー
 あずまきよひこの漫画”よつばと!(*2)”登場するロボットというかダンボール製の着ぐるみ。よつばの友達の恵那とみうらが作成。写真の”ロボダンボー”はダンボーをホントにロボットにして動かしちゃうというお茶目なスグレモノ。作製している”ヴィストン”のhpによると11個のサーボモータによりうなずく、首をふる、首をかしげるなどの動きが可能とのこ
と。

 先に謝っときます。実は森博嗣の本読むのこれが初めてで、代表作の”すべてがFになる(*3)”すら読んでおらず、森雅裕(*4)とごっちゃにする始末。心入れ替えて今度読みます。

 森博嗣という人は本人はベストセラ作家ではないと言ってますが、実際には2010年の”Amazon10周年記念 人気商品ランキング”の和書部門20名に選出され、Amazon仕様の”ダンボー”(*5)を贈呈された作家ですんで、まあ、日本でも有数の作家のひとりと言えます(すいません、私はまだ読んでないけど)。

 さて、本代もとい本題に戻って作家の収入の話。本書によると、大まか収入は”印税”、”原稿料(雑誌への掲載、ブログ等)”、”講演料”、”著作権料(漫画、映画、ノベルティ他での使用許諾)”、”対談料”など、どの収入が多いかは人それぞれだそうです。原稿料は1枚4,000~6,000円ぐらいだそうで、ベストセラー作家とそれ以外の人の差が1.5倍程度しかないってのは大きいと見るか小さいと見るか・・・

 よく名前の出る”印税”ですが、これは本の値段に対する作家の取り分。ですんで

 印税 =(本の単価 × 売れた冊数) × 印税率

つ~計算になります。印税の率は出版物の形態により異なっていて

 ・単行本   :10%(雑誌などに発表された場合)
 ・文庫/ノベルズ:10%(最初から文庫だと12%)
 ・ライトノベル:8%(イラストレーター 2%)←噂です
 ・書き下ろし :12%
 ・電子書籍  :15~30%(定価の15%、最終価格の30%)

 面白いのが、どの作家や売れ行きに関わらず印税率は一定で、印税は印刷された部数に対して支払われるんだとか(電子書籍は実売数に対して支払われる)。
 この式でいうと、とにかく”本が売れなきゃお金にならない”、逆に言うと”本が売れれば「不労所得」” まあ、本書でも”不謹慎な言い方”とことわっていますが、作家は追加の労働なしで、出版社は輪転機を回せば商品ができる(限界コストが低い)ので、美味しい商売になると。     松田奈緒子の漫画”重版出来!(*6)”で増刷が決まると大喜びしてますが、作品が世に中に受け入れられたってのもありますが、実利的な部分も大きいんでしょうね。

 ここまで書いててふと思ったんですが、本の形ってこれからどうなってくんでしょう? 一般的には、”単行本→ノベルズ→文庫”の順に出版されて、お値段も”単行本>ノベルズ>文庫”になってます。販売部数もほぼほぼこの順番みたい。でも電子書籍化が進んでいる昨今、本の形にこだわる必要があるんでしょうか?
 ”ライトノベル”というジャンルはマーケットが中高生中心(まあ、大きいお友達もいますが)ってこともあるのか、ほとんど文庫版で出版されているみたいですが、これって”単行本”で出版する(電子書籍版なら単行本の価格で販売する)のってどうなんでしょう?
 最近読んだ初野晴の”惑星カロン(*6)”って本があるんですが、これは”ハルチカシリーズ”っていう青春ミステリーの1冊。これを”ライトノベル”ジャンルとするかどうかはありますが、高校生が主人公のミステリーで、実際読んでみた感じはラノベっぽいし、深夜アニメ化やマンガ化で萌え絵系にもなっているんで、まあ中高生がメインターゲットだとは思います。この本の表紙の変遷ってのがユニークで

 単行本:女子高生の写真が表紙など
 文庫本:表紙イラスト 丹地陽子
 文庫本:表紙イラスト 山中ヒコ(現在はこのバージョンに戻ってます)
 文庫本:表紙イラスト アニメ版(P.A.WORKS制作のアニメバージョン)

実物が”その日、その時のはまり事”のhpに載ってたんで見比べると、出版社側が”文芸→ジュブナイル→一般小説→ライトノベル→一般小説”として売ろうとしてる意図がなんとなく透けて見えそうな・・・
 でもね~、中高生に売りたいんだったら初手から低価格の文庫と電子書籍で出してくれたっていいんじゃないかね~ とか思っちゃいます。まあ、おぢさんも読んでるけど。
 1冊ごとの収入を増やすか、価格を下げて売れる数を増やして収入を伸ばすかは出版社と作家の戦略なんでしょうが、読み手の側から見ると単価を下げてもらった方が助かるんですけどねぇ

 さて、小説家になりたいと思う人にとって最大の問題は”小説家で食っていけるか?”かどうかでしょう。他に収入があって別に印税だけで生活することができればいいんでしょうけど、”プロ”と名乗りたいならそれなりの収入を小説家として確保したいもの。そのへんの話を含め、本書は役立ちそうです。
 この業界に興味のある方は、ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)2015国際ロボット展
 2015年に東京ビックサイトで開催されたロボットショー。446社が参加し、人型ロボットから、最新の産業工作機械などいろんなジャンルのロボットが展示・デモされていてけっこう楽しめました。次回は2017年11月に開催されるそうです。hpはこちら
(*2)よつばと!(あずまきよひこ、電撃コミックス)
 5歳の女の子”よつば”と”とーちゃん”が織りなす日常を描いた漫画。トラマチックな何かがおこる訳でもなく、爆笑するようなネタがある訳でもないにもかかわらず、面白んダよな~~。読むとなんだか幸せな気分になる本です。
(*3)すべてがFになる(森博嗣、講談社文庫)
 犀川助教授とお嬢様学生萌絵によるミステリィ。森博嗣のデビュー作にして最大のヒット作。今、読んでます。総出版部数 約78万部、印税合計6,000万円(本人申告 電子書籍除く)
(*4)森雅裕
 ”モーツァルトは子守唄を歌わない”で江戸川乱歩賞を受賞した推理小説家。クラシックをテーマにした作品なのに講談社文庫版の表紙が”パタリロ”の魔夜峰央というアンバランスさで、こっちも読もうと思ってたのにまだだな~ (講談社文庫版はすでに絶版。ワニの本版で読むことはできるみたいです)
(*5)Amazon仕様の”ダンボー”
 ダンボーの頭が”Amazon”の箱になっているフィギュア。本書には写真が掲載されています。”Amazon”=ダンボール箱でお荷物届くイメージなんで、けっこう素敵なアイデアだと思います!
(*6)重版出来!(松田奈緒子、ビッグコミックス)
 新人女性漫画編集者”黒沢心”を主人公にしたお仕事系コミック。黒木華の主演でテレビドラマ化。ちなみに”じゅうばんでき”ではなく”じゅうはんしゅったい”と読みます
(*7)惑星カロン(初野晴角、角川書店)
 清水南高吹奏楽部に所属する上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)はふとしたきっかけで中学3年生のフルート奏者”倉田あゆみ”と知り合う。彼女はコンクールで”惑星カロン”の演奏許可をもらう為に新藤誠一のブログにアクセスする。誠一は演奏許可のお礼にある事件の謎を解いて欲しいと依頼する。この謎ときに協力することになったハルタとチカだが・・・
 ハルタとチカを主人公とする青春ミステリー”<ハルチカ>シリーズ”第五巻に収録

植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。毒薬もできます(スキン・コレクター/有毒植物/キョウチクトウ)

 ども、温泉に入れなくなるので刺青はしないおぢさん、たいちろ~です。
 タトゥーをしている外国の人が温泉に入れる入れないでもめてるニュースが時々流れます。入場規制の張り紙に”暴力団ならびに関係者、刺青の方”と暴力団=刺青みたいに扱ってますが、なんでそこまで神経質になりますかねぇ。外国の人にとってはファッションの一種にすぎないんじゃないかと。そもそも、私が子供の頃って銭湯に行けばだいたい一人や二人、背中にりっぱなもんもん背負ったお兄さんやおっちゃんがいたもんですが(*1)。さすがにじ~っと見ることはなかったですが、”すんげ~かっこいい”みたいなのと、”でも、彫ったらすんごい痛そう”みたいなのとないまぜになった感じだったでしょうか。まあ、個人が彫るなら”痛い”かどうかで済む話ですが、これを使っての殺人事件となると話は別
  ということで、今回ご紹介するのは殺人の手段として被害者にタトゥーを彫るというシリアルキラーのお話”スキン・コレクター”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
近所で見かけたキョウチクトウ。てか、小学校の校庭だったんですけど・・

0347


【本】スキン・コレクター(ジェフリー・ディーヴァー、文藝春秋)
 科学捜査官”リンカーン・ライム”と刑事”アメリア・サックス”の元に、天才的犯罪者”ウォッチメイカー”が死亡したとの報が届けられた。一方、腹部に毒薬で刺青された女性の死体が発見される。残された証拠物件の中にかつてライムが関わった連続殺人事件に関する書籍の切れ端が発見される。そして第二の殺人事件が発生した・・
【花】有毒植物
 全体あるいは一部に毒を持つ植物。毒草。致死性のある毒性の強いのものから、かぶれや、痙攣、嘔吐を引き起こす程度の弱いものまで様々。一律有害というわけではなく、ちゃんと処理すれば食べれるもの(銀杏、ジャガイモ等)から、量によっては薬になる(チョウセンアサガオ)、蚊取り線香の原料になる(除虫菊)など役に立つものも。
 ”有毒植物”自体はそんなに珍しいということもなく”スズラン”、”ヒガンバナ(曼珠沙華)”、”福寿草”なんかもこの仲間。園芸店で”ジギタリス”が売っていた時にはちょっと驚きましたが。
【花】キョウチクトウ(夾竹桃)
 キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。葉が”竹”に、花が”桃”に似ているのでこの名前がついたとか。花、葉、果実などすべての部分に加え周辺土壌にも毒性があり、嘔吐、脱力、倦怠感などの中毒症状を起こすそうです。
(wikipediaより抜粋)


 本書の内容は微小な証拠物件を元にリンカーン・ライムとアメリア・サックス達のチームが”スキン・コレクター”というシリアクキラーを追い詰めていくというもの。相変わらず最後の最後までどんでん返しの連続というディーヴァーならではの推理小説。今回の犯人”スキン・コレクター”はというと、殺人現場で被害者の肌に謎の文字を、しかも毒薬で刺青するという人。単純に殺人だけなら銃やナイフで方が付くものを、わざわざ時間をかけてタトゥー(しかもかなりの出来栄え)をいれるなんてのは、推理小説史上、もっともめんどくさい殺し方の一つではないかと。

 で、今回のネタはそんなユニークな犯人を離れてちょっと毒薬の話を。なぜだかスキン・コレクターは植物から作った毒物がお好みなんですな。前半に登場するだけでも

〔シクトキシン〕
 ドクセリに含まれる。激しい吐き気、強直性の痙攣を引き起こす
〔悪魔の吐息〕
 エンジェルストランペットに含まれる。全身麻痺、記憶喪失を引き起こす
〔ストリキニーネ〕
 マチン科の樹木等から採取される。大きな苦痛を与える

などなど。他にもナス科の植物から採取されるニコチン、ホワイトホコシュから採取されるドールズ・アイズなど続々と(説明は本書での説明)。植物由来をありがたがるのって、化粧品や食べ物だけじゃないんですね。で、困ってしまうのはリンカーン・ライム。本書より抜粋すると

  工業プロセスで使用され、一般市場で流通している業務用の有害物質であれば
  まずメーカーを突き止め、そこから購入者を追跡することも可能だ
  製造者を識別するための化学標識が含まれていて、
  それが手がかりになって犯人の氏名が書かれた領収書が手に入れることもある。
  しかし、今回の犯人が凶器を自分の手で地中から掘り出したのだとすれば、
  それは期待できない
  地域を絞り込むのがせいいっぱいだろう

 つまり、自分で毒薬を製造するから証拠の追跡ができないと。確かに今の分析技術ってかなりのことができるようで、”和歌山毒物カレー事件(*2)”ではカレーに混入した亜ヒ酸の異同識別をするのに”SPring-8(*3)”つー大型放射光施設までひっぱりだしてやってたし。

 リンカーン・ライムのチームの凄いのは、ほとんど塵のような残留証拠物件をガスクロマトグラフィーやらなんやらで分析して、どこから来たかをデータベースなんかも駆使して解析して、その証拠が持っている意味や犯人の手口、さらには次の犯行を予測する(しかもかなりの確率で当たっている)とこ。そんな天才ライムにとっても”植物由来”ってけっこうやっかいっぽいんですね

 だからといって、一般人が毒物で殺人なんかやっちゃまず捕まるでしょうし(毒物でなくてもNGです)、下手に植物から成分抽出なんぞやった日にゃ、作っている人が真っ先に毒物にやられそうだし。この手の話は推理小説の中だけで楽しむのんが無難なんでしょうなぁ

《脚注》
(*1)立派なもんもん背負った~
 ”もんもん”というのは”くりからもんもん”の略で漢字で書くと”倶利迦羅紋紋”。不動明王の変化身”倶利伽羅竜王”を背中に彫った入れ墨から転じて”入れ墨”も指すようになったとか。(語源由来辞典より
(*2)和歌山毒物カレー事件
 1998年、和歌山県園部で行われた夏祭りで出されたカレーを食べた人が腹痛や吐き気などを訴え、4人が死亡した事件。主婦の林眞須美がカレーへの亜ヒ酸の混入による殺人及び殺人未遂の容疑で逮捕、2009年に死刑が確定(再審請求中)
(*3)SPring-8(スプリングエイト)
 兵庫県播磨科学公園都市内に位置する大型放射光施設140mの線形加速器に周長1.4Kmにおよぶ蓄積リングで8GeVの電子エネルギーを生み出すという施設。書いてる本人は理解できてませんが、すごい施設みたいです。詳しくは公式hpをご参照

«チャットボットで蘇った魂は、人を幸せにするのでせうか?(惑星カロン/ブラックジャック/ロボホン)

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ